ホワイトデー小ネタ1 (蓮&フィーリーシャ)
バレンタインの続き
「レーン!」
駆けよってくるフィーリーシャの姿に、何でこいつは走る時は裾に足とられないんだろうと思った。
歩こうとすると相変わらず裾に足とられてすっ転ぶくせに。
いや、それより…。
「…何してんの、リィ」
その手に持っている物はなんだとは聞けず、遠回しに聞いてみれば、無邪気な答え。
「ほわいとでーだ!」
ホワイトデー…。
ホワイトデーっていうと、うん。
「………まさかと思うけど、それがお返し?」
「何かおかしいだろうか」
「うん。…おかしい」
不思議そうに手にしている物を見つめるフィーリーシャに、きっぱりと断言した。
おかしいとか以前の問題なのだが。
というより、それを選んだのは嫌がらせか?
「そ、そうか…」
落ち込み始めたフィーリーシャをうざいと思いこそすれ、慰める気はさらさらなく、読んでいた本に視線を落としながら言った。
「だってそれ、ウェディングドレスだよね?私の世界の」
「ほわいとは白という意味なのだろう?」
「白繋がりかよ!」
まさかの発想に思わず突っ込んでしまった。
何か?
この世界でも白は挙式用のドレスだってか?
…あれ、この間黒って聞いた覚えが。
「レーンの世界では、白といえばウェディングドレスなのだと聞いた!」
………なるほど。
「…誰と結託したのかよくわかるよ。その話したのマーノンしかいねぇ」
白って言えば何思い浮かべる?なんて聞いてきたマーノンの魂胆がここにあったとは…。
白で加奈子さんのウェディングドレス思い浮かべちゃったのが運の尽きか。
「まさか違うのか?」
「いや、ある意味そうだけど。着ないよ?」
何がどうして私がスカート類を着用しなければならないんだ。
死ねばいいよ。
もうほんと、マジで。
「……ふぐっ。うぇっく」
「泣くな!」
本来ならば庇護欲をそそられるのだろうその泣き顔も、今は嘘くささしか感じられない。
「せ、せっかく用意したというのに」
「私にスカート類着させようなんざ、100万年早いんだよ!」
100万年経とうともスカートなんて絶対着ないけどね!
兄と加奈子さんに懇願されることがなければ、だけど。
そんな心の声が聞こえたのか、フィーリーシャがじと目で睨みつけてきた。
「何」
「レーンはいけずだ」
「だったら何だ」
今さらだろと顔を顰めれば、フィーリーシャは得意げな顔で持っていたドレスの下からあるものを取りだした。
「ではこれもいらぬな」
これ見よがしに見せられたそれに、慌てたのは私の方だ。
「…え?っちょ、それ!」
この世界に来た時に失くしてしまったと思っていた、兄が別れ際に作ってくれた押し花のしおりだ。
「捨ててしまおう」
「待て!」
何故それをフィーリーシャが持っているのかは知らないが、捨てられてなるものか。
兄がくれたものだというのに!
「…どうかしたのか?レーン」
くそっ、フィーリーシャがマーノンに見えるのは気のせいか?
気のせいなのか?
「………着ればそれくれる?」
屈服した気分で悔しいが、これであのしおりが戻ってくるなら安いものだ。
「あげてもよいぞ?」
清々しいまでの笑みをぶん殴りたいけど。
「その笑顔が気に食わないけど…背に腹は代えられない。誰だよリィに知恵つけたの」
…考えるまでもなくマーノンだな。
うん。
「ふふふふふっ。レーンのドレス姿…!」
気持ち悪い笑いでフィーリーシャは飛び跳ねていた。
もうホント、死んじゃえばいいのに。
リィの逆襲…?
こっそり贈ったドレスをテディベアにされたから、どうやって蓮にドレスを着せようか1ヶ月画策したんだよ、マーノンと一緒に