バレンタイン小ネタ3 (蓮&フィーリーシャ)
時系列軽く無視ってます
「リィー。これあげる」
持っていたモノを押し付けると、その大きさにフィーリーシャは体を少し逸らして抱きかかえた。
「…これはなんだ?」
「テディベア!くまのぬいぐるみだよ」
私の胸に満たない身長のフィーリーシャが、特大テディベアを抱きかかえる姿はもの凄く可愛くて、しまりのない顔になるのを止められない。
ああ、可愛い。
「くま…なのか」
怪訝そうに、これが…くま?と眺めるフィーリーシャに、私の知るくまと違っただろうかと不安になった。
「お気に召さない?」
「いや、愛らしいくまなのだな」
ふむ。
花柄の布を使ったせいか?
確かに、花柄のくまは、この世界にでもいなさそうだ。
「そりゃぁぬいぐるみですからね」
「レーンが作ったのか?」
肌触りは気に入ったのか、嬉しそうに頬ずりする姿に抱きしめたくなった。
「うん。貰いものの服かっさばいて、作ってみた」
奇妙なほど、ピタリと、フィーリーシャが動きを止める。
恐る恐るといった様子で視線を向けられた。
「…レーン、それはもしや先日贈られたドレスのことか?」
「え?うん。そうだけど」
何で知ってるんだろうと頷けば、気落ちしたようにぬいぐるみに顔を埋めてしまった。
「……そうか」
ぎゅぅっとぬいぐるみを抱きしめ、肩を落とすフィーリーシャに、私は首を傾げるしかない。
「どったの?」
けれどフィーリーシャは答える気はないのか、にっこりと嬉しそうにぬいぐるみを抱いた。
「いや、何でもない。このくまは余が貰っていいのか?」
「うん。リィのために作ったから」
そう言うと、フィーリーシャはパッと顔を輝かせた。
「っ!そうか!ありがとうレーン!」
「いえいえ。喜んでもらえて何よりだよ」
ある意味一番手間だったのはそのテディベアだ。
上質の布は扱いが難しい。
縫おうとして布がつれることもしばしばあって、悪戦苦闘したのだ。
「レーン!レーンは何か欲しいものはあるか?」
嬉々として訊ねてくるフィーリーシャに、私は苦笑しながら首を横に振った。
「んー。特にはないかな」
私が欲しいのは、兄を目覚めさせることのできる王。
ただそれだけ。
フィーリーシャもすぐにそのことに気付いたのか、また肩を落とした。
「…そうか」
何かお礼がしたいのだがなと、消沈とした声に言わる。
「そんなに喜んでくれたなら、来月の14日に、何か頂戴?」
「来月…?」
「そう。来月」
元々これはバレンタインの贈り物だ。
やはりお返しはホワイトデーがいいと頷けば、フィーリーシャは不思議そうに眼を瞬いた。
「何かとは、何だ?」
「そこはリィが考えて。何でもいいよ」
「うむ…」
難しい顔で考え込むフィーリーシャに、ふとあることに思い至ってすぐさま条件を追加した。
「あ、何でもって言ったけど、小さいものね!お花とか、本とか、そういうの!」
神様なフィーリーシャだ。
何でもなどと軽はずみなことを言って、とんでもないものをお返しされてはいただけない。
「余が考えればいいのだな?」
わかっているのかいないのか、そんな返答にもうなるようになれと同意した。
「うん」
「わかった!では来月を楽しみにしておれ!」
「うん。楽しみにしてるね」
意気揚々と来月に思いを馳せるフィーリーシャを見ながら、どうかまともなものでありますようにと、私は願った。
ほのぼの。いいね、ほのぼの。
イメージは保母さんと園児的な。
因みに、ドレスはフィーリーシャがこっそり贈った物。