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バレンタイン小ネタ2 (蓮&ヴォルド)

マーノン編同様、時系列無視ってる挙句に軽く本編に出てないネタばれ有りです



 突然部屋に訪れた蓮が、ずんずんと歩み寄ってきたかと思えば、机の上に可愛らしく包装された小さな箱が置かれた。

「ヴォルド、これあげる」

 えへへと照れたように笑う蓮は愛らしく、ヴォルドも小さく笑みを浮かべて箱を手にとる。

 ふわっと香ってきた甘い香りに、中身が何かを知った。

「…これは、レッタか?」

「うん。チョコレートはなかったから、似たので代用した」

「ちょこれーと?」

 時折蓮が口にする聞き慣れない言葉の類だろうかと、口の中で重複すれば、今日の日付が記されたカレンダーを指差して蓮が言った。

「今日2月14日でしょ?私のいたところじゃ、日ごろの感謝を示す日なのよ」

「ほぉ」

 つい先日も節分だと豆まきなるものをさせられたことを思い出したヴォルドは、蓮がイベント好きなのだと認識した。

 実際のところは、叔母である加奈子に付き合わされて習慣化してしまっただけなのだが、蓮としても嫌いではないのであながち間違いではない。

「まぁ、感謝より、愛をささやく日って感じだったけど」

 だから手作りが多いし、それも手作りだけどねとさらりと言われ、愛という言葉に思わず貰ったレッタをマジマジと見てしまった。

「…毒入りか?これは」

「なんでだよ」

 間髪いれずに不機嫌そうな声を返され、ヴォルドは嫌がらせではなさそうだと安堵した。

 ヴォルドからしてみれば、蓮がヴォルドに愛をささやくというのはどうにも想像できない。

 というより、これまでの行動を鑑みれば、今までの報復に毒を盛られていてもおかしくはないのだ。

「いや…」

 当の本人である蓮がその気はないのだから、蒸し返すことはしなけれども。

 言葉を濁したヴォルドに、少々納得いかなそうな顔をした蓮だが、さして尾を引くこともなく、説明を続ける。

「…本来は本とか花束とかだけど、私の国じゃチョコレートっていうお菓子が主流でね」

「それでレッタ…」

 チョコレートが如何なるものかは知らないが、多分レッタに近い菓子なのだろう。

「そういうこと。チョコは甘いけど、レッタは苦いから、ヴォルドにちょうどいいと思って」

「ありがとう。あとで頂こう」

 休憩の時に味あわせてもらおうと、礼を言えば、蓮が悪戯っ子の子供のように笑った。

「お返しは3月14日に3倍返しで」

「……日ごろの感謝だというのに見返りを求めるのか?」

 それは感謝とは違うんじゃないかと半目になれば、鉄則なのだと返される。

「バレンタインに貰ったら、ホワイトデーでお返しを。これ絶対!」

「ばれんたいん?」

「2月14日をバレンタインデー、3月14日をホワイトデーっていうの」

「…そうか」

 蓮のいた世界には、よくわからないイベントがあるものだと軽く呆れた。

「そう!だからお返し期待してるねー」

 お返し、といわれて、ヴォルドは押し黙った。

 蓮にお返しということは、何かプレゼントをということだ。

 蓮にプレゼント…。

「ヴォルド?」

 急に黙ってしまったヴォルドに、蓮が首を傾げる。

「いや、レーンは何がいいだろうかと考えたら、何も思いつかなくてな」

「1ヶ月あるんだし、ゆっくり考えればいいよ」

 それもそうかと頷いて、ヴォルドは蓮を見る。

「わかった。…では3月14日は戻ってくるのだな?」

 最近ヴィレンツァーレから、蓮がいなくなることも多い。

 お返しをということは、その日にはここにいるということかと問いかければ、苦笑いを返された。

「………あ、考えてなかった」

 ならいないかもしれないということかと、考えていたプレゼントの候補から真っ先にナマモノを消した。

「では菓子類はやめて日持ちするものにしておこう」

 取っておくことができない訳ではないが、一度出て行ったらいつ帰ってくるかもわからない蓮だ。

 食べ物の他になにかいいものがあっただろうかと、ヴォルドが考えていると、机に頬杖をつきながら、蓮が嬉しそうに頬を緩ませる。

「…服とか宝石って言わないあたり、私の好みを理解してるよね」

 好みを理解しているというより、散々他者からの贈り物に対して晩餐で愚痴られたからだ。

 元より、邂逅時でのフィーリーシャ神とのやり取りで、華美なモノは好まないだろうこともわかっていた。

 それ故に、ヴォルドから蓮に贈ったものといえば、ここでの滞在用にと服をこさえたくらいだ。

「それでもいいが、どうせ部屋に置き去りにされるのだろう?」

 挙句贈り甲斐のないことといったらないので、候補には上がりようがなかった。

「そりゃぁ、荷物になりますから」

「ならば贈ったところで無駄ではないか」

「……華美なものじゃなければ、1個くらいつけないでもないけど」

 一瞬、何を言われたのか理解できずに、蓮の顔に食い入るように視線を向ける。

 それに顔を真っ赤にして、合わさった視線を逸らされ、慌てた様に蓮は部屋を出て行った。

「じゃ!」

 走り去っていく蓮の足音を聞きながら、ヴォルドは熱くなった顔を右手で覆った。

「……………耳飾りでも贈るか」

 蓮はどんな顔をして受け取るのだろう。

 そんなことを思いながら、贈る耳飾りのデザインを考え始めるヴォルドだった。

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