【2】草原の中で-2
俺は草原を走り続けている。
しかし、この姿は結構走りずらい。
自分が今どんな姿なのかはわからないが、小さい生き物であるのは確かだろう。そして、異様にジャンプ力がある。走りには貢献してくれないけど。
草が顔に当たるのが痒いし、いきなり草から出てきた魔物(?)に衝突するから結構びっくりする。実際行く方向を決めてから3回ぐらい掠ってるし、ジャンプでギリギリ回避したのも含めるともっと多い。
あいつら硬いから少し痛いんだよ・・・。
たまにスライムとかいるからそれは助かるけど。
ぶつかっても攻撃されないのかって?
それ、俺も思ったんだけど、無関心なんだよね。理由はわからない。ゲームのモブみたいに無関心。
さっきから同じ方向をただ歩き続けていることといい、彼らはゲームで言う、中立モブのような立ち位置なのかもしれない。それか、俺が敵と認識されていないだけか。
そんなことをぼーっと考えていながらも、走っては生き物を避けることを繰り返している。随分と広い草原のようだ。夢の中にしては思うようにいかないものだな?これは悪夢の一種だったのかもしれない。
緑が嫌いになりかけたとき、ようやく前方の地面がまばらに見え始めた。急ブレーキをかけて止まる。見てみると焦茶色で硬く、とてもじゃないが植物が育ちそうではない。
触ってみても・・・・・・・いやまて、、
地面にタシッという擬態語がつきそうな様子で置かれたのは黒いもふもふ、つまり俺の手だ。
なんとなく予想していた通り黒い生き物であったが、俺がぶつかった奴らとは全然違って柔らかそうだ。何回かぶつかった時を思い出す。
だから少し痛いで済んだのかもな。
もし、俺がカブトムシみたいなやつだったら既にどこかしらかけてるな。
このもふもふに、脅威のジャンプ力、そして小さい体。
もしかして、俺はウサギか何かになったのか?
俺の中には可愛い存在になりたいという願望があったのか??夢に出てくるほどに???
「可愛くなりたいな〜♡」とほざくぶりっこポーズをした気色の悪い俺の姿が一瞬でも浮かんでしまい吐きそうになる。
ないないないないないないっっ!!!
もし、万が一、ほんのちょびっとだけあるとしても俺はそれを自覚する前に墓まで持っていくく予定なんだ!!俺が憧れるのは大学生のピアスバチバチ大学生だけだっ!!
・・・おっと、取り乱してしまった。俺はそんなことしている場合じゃない。この悪夢の草原を抜けるんだ。
気を取り直して動き出すと、体感で一時間程走った後、先ほど見えていた地面の面積がだんだんと大きくなり、草がまばらに生えるだけとなる。
ついには草原を飛び出した。
やった〜!!嬉しくてぴょんぴょんと飛び跳ねる。ここは木が鬱蒼と茂っていて、さっきみたいに洗脳されてるような黒い生き物がほとんどいない。代わりに木の上や地面の穴の下、森の奥の洞窟から魔物のような生き物の気配を感じる。
気配を感じる、というとかっこいいけど、本当はカサカサと落ち葉を動き回る音が聞こえるだけだ。
さっきみたいに堂々と姿を現さないことといい、奇妙な鳴き声が聞こえることといい、とてもじゃないが居座りたくない。
その時、後ろからホー、ホーと笛みたいな音が聞こえた。
・・・・・・背後にいる・・・。
心臓がどくどくと音を立て、嫌な汗が吹き出すような感覚がする。そいつの自分より少し大きくて覗き込むように地面の影が見える。細長い木の枝みたいな影。
この夢は本当に悪夢にジョブチェンジしたのか?




