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【完結】ほんわか令嬢、優しくはない  作者: 秋色mai @コミカライズ企画進行中


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60/61

60. 結婚式とは一体



 結局、式は冬となってしまった。天候が不安だったが、その日は珍しく快晴で、積もった雪がキラキラと反射していた。


 教会のステンドグラスの光がゆらめく。フローラは奥方にエスコートされ、バージンロードの上で白いドレスがふわりと舞った。

 白いベールを被ったフローラはアーサーの手を取り、奥方は席へ戻ってゆく。


「アーサー・フロスト、フローラ。お二人は自らすすんで、この結婚を望んでいますか」


 年老いた神父が尋ねた。アーサーとフローラは顔を見合わせ、そして答える。


「「はい、望んでいます」」


「結婚生活を送るにあたり、互いに愛し合い、尊敬する決意を持っていますか」

「「はい、持っています」」


 フローラのいじめもまた、愛である。多分。いや、アーサーはある意味喜んでいるから、やはり愛なのだろう。


「あなた方は恵まれる子どもを、まことの幸せに導くように育てますか」

「「……はい、育てます」」


 子供という言葉を聞いて、アーサーはフローラに似た娘を思い浮かべて恐怖し、フローラは共に悪趣味を楽しむ図を考えた。おかげで少し返事が遅れた。


「それでは、冬の精霊王と春の女神、私たち一同の前で結婚の誓約を交わしてください」


「新郎アーサー・フロスト。 貴方はここにいるフローラを、悲しみ深い時も喜びに充ちた時も共に過ごし 愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」

「誓います」


「新婦フローラ。貴女もまたここにいるアーサーを、悲しみ深い時も 喜びに充ちた時も共に過ごし 愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」

「誓います」


「では、指輪を……」


 その瞬間、アーサーはプロポーズと勘違いして片膝を突き、フローラは間髪入れずに立たせた。そして客席に向かってニコリと笑った。旦那様が少々浮かれすぎているようで、といった具合だ。奥方は手で口元を隠し、前当主は頭を抱えた。ジョシュアは大笑いするのを必死に我慢した。


「どうぞ」

「っ!!!」


 あまりの恥ずかしさにカチンコチンになってしまったアーサーだったが、どうにかしてフローラの細い指に輪を通す。対してフローラは嫋やかに、ごく自然に、太くて大きすぎるアーサーの指に輪を通し返した。

 アーサーは、フローラのベールを上げる。フローラの美しい瞳に魅入られて、アーサーはまた固まった。

 そこでワッと歓声が上がり、ざわめき出す。まだベールを上げただけなのにどういうことなのかとフローラが考えていると客席から、


「うーん、苦いな」

「そうですね、とても苦いです」

「え、苦いってどういう……苦い!!苦い!!!」


 という言葉が聞こえてきた。そこでフローラは祭りについて調べていた時に見かけた、結婚式のある流れを思い出す。

 苦い時は、どういうものが欲しくなるのか。


「……赤くならないでくださいよ。あなたの領地の風習でしょう?」

「い、いや、そうなんだが……って知って、ちょ」


 フローラはアーサーのタイを引っ張り、無理やり口付けた。アーサーはみっともなくもわたわたと手を上げたり下げたりしたが、しばらくすると観念し、フローラの後頭部に手を添えた。


「さすがに甘すぎるだろ」

「……百二十、うん、二分経過しましたね!」

「あの、カウントしないでくれます? っ!」


 従者どもがワイワイ話しているが、フローラはキスの時に目を閉じない。チラリと視線を寄越し、黙らせた。アーサーは目を瞑っている上に無我夢中で何も気づいていない。


「……っ腰、抜かさないでくださいよ?」

「すまない、もう抜かしているかもしれない」


 やっと唇が離れ、アーサーは息を吸う。顔は真っ赤になっていて、鼻で呼吸もできない下手くそだとバレバレだ。なんなら少し涙ぐんでいる。

 ……フローラはふわりと柔らかい笑みを浮かべて、アーサーに尋ねる。


「この後は街を回るのでしたよね。その顔で自慢して、牽制されるのですか?」

「……勘弁してくれ」


 可哀想なアーサー。爆散よりタチが悪い。これでは公開処刑だ。

 ……やっぱり、フローラは優しくない。

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  ↓次に読むのがなければ是非! 普段はこういうグルメコメディを書いています
【コミカライズ進行中】魔王城の絶品社食、作っているのは生贄です!
― 新着の感想 ―
いたいけな娘のように真っ赤になるアーサーを堪能するフローラ、秀逸ですね!!その間ガン見してるとか、胆力ありすぎでは???ステキ。 ジョシュア笑ってる場合じゃないよ(笑)
奥方サマ、息子の失敗に大歓喜してません?w
アーサー様ご結婚おめでとうございます! おめでとう……?
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