表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼穹の涙  作者: chro
7/37

第1章(6) こいつらがいれば、それができる

 六年前に終わった通称百年戦争は、昔からいくつもあった“蒼穹の涙”を巡る争いの中じゃ一番新しいやつだ。オレが生まれたのはその末期だったとはいえ、この戦争は誰が勝っていたわけでも、和平条約を結ぼうとしたわけでもないから、いつ終わるかなんて誰にもわからなかった。あるとき突然、町を壊滅させる地震や木が枯れる疫病、そして海が干上がりそうな日照りが立て続けに起こって、どの種族も戦争どころじゃなくなったっていうのが、終戦の理由だった。

 ともかく、そんな戦争でもそれぞれに大義や目的を振りかざしていて、オレも自分なりの正義で戦った。殺し合いに正義も理由もあるわけがないのに、若いころはそんなこともわからない、まぁ今のサンやリトルみたいに血の気が多かったわけだ。

 戦争に参加していた四年間、いろんな土地をまわって、数えきれない戦いをしてきた。そのときの上官は厳格な軍人で、誇り高くて責任感のあるところが、オレは好きだった。戦争が終わる直前にある理由で戦線を去って以来、当時の知り合いには誰とも会っていないから、彼がどうなったのかも知らない。


 ――そう、知らないままの方がよかった。こんなところで、こんな形で再会するくらいなら。


「久しぶりだな、フィル」


 ゾンネ少佐は笑うことも怒ることもなく、オレが知っている六年前もそうだった、いつもの厳しい表情で言った。

 入口で覆面黒服の一団を倒したオレ達は、誰もいないがらんとした一階から階段を降りて、地下にあるかつての収容施設跡に侵入した。二階建ての地上部よりも広いそこには、今も血の跡が生々しく残る部屋がいくつもあって、奥の方は扉に鍵がかかっていた。そして唯一明かりがついている管理フロアらしい部屋で、かつての上官と狐の獣人が待ち構えていた。


「ゾンネ少佐、なぜ……」


 訊きたいことが多すぎて、言葉にならなかった。なぜここにいるのか、ここで何をしているのか、どうして獣人と一緒にいるのか、誘拐の目的は何なのか……。

 でも、そのどれをも聞く前に、すでに答えはわかっていた。


「なぜ、また戦争を起こそうとしているんですか」


 それは疑問にさえなっていなかった。少佐はかすかに眉を動かして目を細めただけで、口を開こうとしない。逆にリトル達の方が戸惑った。


「フィリガー、あいつを知ってるのか?」

「あぁ、昔の……上官だ」

「戦争って、なんのことだ? こいつらは誘拐犯なんだろ?」

「誘拐した獣人を人間が拷問して、解放する。そうしたら人間にさらわれて傷つけられたという話が広まって、獣人の間で人間に対する憎しみが増える……」

「そして逆に人間も獣人に捕まったとなれば、もはや戦争が再開するのも時間の問題でしょうね」


 気品のあるキツネが、横から出てきて薄く笑った。年齢はわからないけど、細身の線と長いブロンドの髪は、人間の基準でいってもかなりの美人だろう。もっとも、湿っぽい地下室の曇った明かりの下じゃ、妖艶な笑みも背筋がゾッとする不気味さしかない。


「お前、その金色の髪はライオン一族の……?」


 サンが首をひねってつぶやいた。言われてみれば、ライオンのたてがみに似ている気もする。とがった耳と細い目は、確かにキツネのはずだけど……。


「キツネとライオンのハーフ、か」


 ボールドさんが言うと、彼女は笑みを消して唇をかんだ。


「裏の情報で聞いたことがある。現国王の従兄弟が若いころに遊びまわって、いろんな他獣種との間に子供を作ったとか……」

「そうよ。私はそのうちの一人」 狐の声が低くうなった。「でも(たわむ)れに生まれた私の存在を、世間に知られるわけにはいかない。他の子供はすべて消されたし、私もこれまで何度も暗殺されかけたわ」


 階級社会を守るための犠牲者か。ただでさえハーフへの風当たりは強いのに、頂点の王族が絡んでいるとなれば、表からも裏からも圧力がかかっただろうことは、簡単に想像できる。


「そこのあなたもハーフなんでしょう?」

「……」

「あなたなら、この理不尽な苦しみがわかるはず。外に行けば人間や水人に狙われるし、森にいれば忌み子と呼ばれ(ののし)られて、どこにも居場所はない。望んで生まれてきたわけでもないのに、存在することさえ許されない」


 視線を向けられたリトルは、じっと立ち尽くしているだけだった。たとえ戦争が終わって外部の敵がいなくなっても、内部ではいまだに強い差別や階級の束縛が残っている。話には聞いていても、本当の凄惨さは当事者にしかわからないだろう。


「自分の存在を認めてほしいという、ただそだけの願いさえ叶わない国なんか、消えるべきなのよ」

「だからといって、戦争を起こしていいはずがないだろう。どれだけの無関係な犠牲が出ると思っているんだ」

「利いた風なことを言わないで。ただそこにいるだけで災いだと言われる者の気持ちが、わかるはずがないわ」

「戦争なんかでよくなる現実などない」

「少なくとも、今の地獄より悪くなることはないわ」


 いくらボールドさんが説得しようとしても、彼女の耳には届かない。生まれたことさえ疎まれて、差別どころか命の危険にさえ晒されてきた辛酸を思うと、オレも賛成こそできないけど、安易に否定する言葉が見つからなかった。


「それに私たちはね、ただ壊すだけじゃないの。どんな種族の、どんな生まれでも上下のない、平穏な世界を創るのよ」

「そんなこと、簡単にできるわけが……」

「できる。“蒼穹の涙”があればな」


 今度はゾンネ少佐が答えた。ということは、少佐もそれが目的で手を組んだということなんだろう。

 戦争が終わったからといって、すべての者があきらめて忘れるくらいなら、何百年も前から争いが続くこともなかっただろう。それほどの魅力と絶対的な力が、“蒼穹の涙”にはある。たとえ歴史上に何度も出てきたものが全部にせもので、誰も本当の姿を見たことがない幻の伝説であったとしても。そんなものに頼らなければならないほど、この世界はどうしようもないんだろうか。


「お主らは大きな勘違いをしておる」


 いつもの尊大でのほほんとしたシオンとは別人みたいに、いきなり出てきた言葉はみんなが息を呑むほど威厳があった。


「“蒼穹の涙”はメタトロン神がこの世界にもたらした、唯一最後の希望なのだ。個人の欲望を叶えるような、都合のいい宝などではない」


 シオンは“蒼穹の涙”のことを何か知っているのか……? 疑問には思っても、それを訊くことは(はばか)られる威圧感のようなものが、この時のシオンにはあった。


「これは個人的な欲望などではない。差別や不条理に虐げられた者を救うため、それこそ理想の世界のためだ」


 あの厳格で冷静な少佐が視線を逸らして、どこか言い訳めいた響きに聞こえた。代わりにキツネが確信を込めて言った。


「戦争の混乱でそれを求める者が増えれば、“蒼穹の涙”の存在は必ず現れるわ。だからあなたも、私たちとともにこの国を変えましょう。今のままでいいわけがないと、あなたも思うでしょう?」

「俺は……」

「あなたや私には、そうするだけの力も権利もあるわ」


 キツネの優しい笑みと力強い言葉に、口を開きかけたリトルはこぶしを握りしめた。オレはこんな時に、声をかけることさえできなかった。

 過去の苦しみを見つめるのか、それとも新しい未来を作るのか。戦争だけは絶対に止めなければいけなくても、彼がどちらを選ぼうとも、その責任の半分はオレ達にだってある。彼らにしかわからない深い苦悩の選択に、オレ達が口を出せるだけの権利があるんだろうか……。


「ざけんなよ!」


 顔を上げかけたリトルを差し置いて、サンが怒鳴りながら前に出てきた。


「リトルはオレ達のダチなんだよ。勝手にこいつが被害者みたいな言い方しやがって。昔なんか関係ねぇ、今は独りなんかじゃ……いで!」

「サンのくせに生意気だ」


 ずっと目を伏せて動けずにいたリトルが、つばを飛ばしながら叫んでいたサンの後頭部を見事に張り倒した。いつかどこかで妖精もどきが吐いたような尊大なセリフで、不敵な笑みさえ浮かべて。


「あぁ、国がどうなろうと関係ねぇ。邪魔するヤツは上等だ! 俺はそんな宝なんかに頼らなくても、自分で変えてやる。こいつらがいれば、それができる」


 単純なだけに裏表のないサンの言葉で、リトルはいつもの自信たっぷりのケンカ屋羊に戻っていた。過去の苦しみと向き合いながら、でもそれに囚われることなく未来の可能性を拓く。コトが予言したとおり、リトルにはその強さと、手を差し伸べてくれる友達がいる。責任とか権利とか、そんな貧弱なしがらみに縛られるようなタマじゃなかったな。どうやらオレの杞憂だったみたいだ。


「……そう。あなたもしょせん、うわべだけの友情ごっこで満足しているのね」


 キツネが辛辣な挑発をしても、リトルは鼻で笑っただけだった。


「フィル、お前はどうなのだ」


 今度はゾンネ少佐が、オレに呼びかけてきた。


「大切な者をなくしたお前なら、この世の不条理がわかるだろう? もう一度わしについて、ともに世界のために戦おうではないか」

「お断りします。過去のために、今の大切な友まで失うわけにはいきませんから」


 迷いの消えた彼らに応えるために、オレも今こそ過去との決別をする時だった。

 あいつを失ったのはオレの責任だ。そこから逃げるつもりはない。でも、いつまでもそこで立ち止まっていても、何も変わらないんだ。オレが未来を歩かなければ、過去さえ意味がなくなるということを、ここにいる新しい『今』、変わり者の友達が教えてくれた。オレ達は、確かにかけがえのない同じ時間を生きたんだから。

 なぁ、そうだろう、エメリナ?


「そうか……それがお前の答えならば、もはや別々の道を歩むしかあるまい」


 少佐は、静かにかぶりを振った。どうして少佐と道を違えなければならないんだろうか。オレも無邪気に戦場を駆けまわっていたころとは違うけど、彼も何かが変わってしまった。あの威風堂々として活力に溢れていた、オレの憧れの上官の面影は、すでにここにはなかった。


「だが、わしらも道を譲るつもりはない。力ずくでも通らねばならんのだ!」


 剣を抜き放って突き付けた少佐の表情は、悲痛でさえあった。何がそんなに追いつめているんだ? あの公正で理知的な少佐なら、この誘拐事件の非道さも戦争を企てる愚かさも、わからないはずがないのに……。


「こっちだって、さっさとてめぇらをぶっ飛ばして、カームを助ける!」


 真っ先にリトルとサンが飛び出して、少佐の大剣とぶつかった。部隊の指揮官だったとはいえ、若いころは歴戦の戦士として知られた腕だ。覆面黒服たち(オレとは面識がないから、少佐の直接の部下じゃない最近の傭兵隊だろう)をあっさりやっつけた獣人二人が相手でも、巧みな動きでさばいていく。


「いいのか?」


 短刀を出しながらもすぐには加わらなかったボールドさんが、突っ立ったままのオレにささやいた。


「あぁ、オレ達も行かないとな」


 あの二人だけじゃ、ちょっとキツいだろう。卑怯だとは思うけど、四人がかりでいかないと、オレの尊敬した上官は倒せない。


「腕の問題じゃないだろう?」

「……」


 ボールドさんは、オレの迷いに気付いていた。自分たちだけでもやるから、無理なら出なくてもいい、と。


「ぐはっ……!」


 リトルが肩を斬られてよろめいたところへ、サンが後ろから殴りかかったけど、ふり向くことなく避けた少佐に壁に叩きつけられた。


「……いや、オレもやるよ」


 やらなきゃならない。みんなと一緒に、オレも先へ進むためには。もうあの人は、オレの知っているゾンネ少佐じゃ、ない。


「こい!」


 少佐が向き直った瞬間、オレの捨てた鞘が床に落ちる前に刃がぶつかった。いくら体格のいい少佐でも、肉食獣人やそれに勝つケンカ屋の腕力にはかなわないから、彼らの攻撃はすべてかわしている。そこへオレとボールドさんが間断なく攻め立てた。疲れて集中力が切れてきたら、その一瞬の隙をたたく。

 これこそゾンネ少佐、あなたに教えてもらった戦術の一つです。互いの信念と命を賭けて戦うと決めた限りは、卑怯な手段や敵への同情など、余計な思考は自分にも相手にもいいことはない、と……そう教えてくれた昔には、もう戻れないのか……。


「ぐっ……!」

「もらったぁッ!」


 上段を受けそこなった少佐の手元が滑ったところへ、すかさずサンの爪が光った。このタイミングと態勢なら、絶対によけきれない。よけてほしいのか、これで決着がついてほしいのか、正直、オレにはまだわからなかった。真っ赤に切り裂かれた少佐の姿に目を背けそうになった、その瞬間。


「……ッ!?」


 実際には爪が届く前に、耳をつんざく爆音と大きな地震が起こって、そこにいた全員がよろめいた。……いや、一人だけ、不意を突かれずに平然としているヤツがいた。


「遊びはここまでよ」


 ずっと部屋の隅に避難していたと思っていたキツネが、何かのスイッチを片手に笑った。しまった、この館を爆破するつもりか……!


「安心して。この部屋は安全だから。でも人質たちはどうなるかしら……うふふ」

「てんめぇー!」


 逆上したリトルが、立っていられないほどの揺れの中で飛びかかった。その速さをよけられるはずもないキツネが焦る間もなく、ひづめが襲いかかって……。


「なっ……!?」


 リトルだけでなく、キツネも息を呑んで目を見張った。鋼鉄の蹄は彼女の寸前で止まっていた。……いや、正確には、彼女の前に飛び出したゾンネ少佐の胸を貫いていた。


「ど、どうして……」


 キツネはわけがわからないと言うように、何度も首を振りながら後退(あとずさ)った。オレもまさか、受け止められないとわかっている一撃から、自分の体を盾にしてまで彼女をかばうとは思っていなかった。誰も少佐の行動を予測できなかったし、またすぐには理解もできなかった。


「あなたと私は、ただ戦争を起こすために手を組んだだけなのよ。なのに、どうしてこんなことを……あなたに助けてもらう義理なんかないわ!」

「すまない、スキーム……」


 リトルが体を引くと、少佐は血に染まったわき腹を押さえてひざをついた。戸惑うキツネを見上げるその表情は、優しさと謝罪に満ちている。……そういえば、彼女の名前さえ、オレ達は今まで知らないままだった。


「わしは……お前がどう思っていようとも、わしはお前を大切な同志だと思っている。お前の苦しみを知るうちに、どうしても放っておけなくなった……」

「同情なんかしないで!」

「あぁ、そうだな。すまない……」


 何度も何度も謝りながら、ついに体を支えていることができなくなって、苦痛に顔を歪めながら床に横たわった。そんな少佐を、スキームはただ見つめているばかりで、誰にともなく叫んだ。

「何? いったいなんのつもりなの!? 私は獣人なのよ。ハーフなのよ。人間が助ける意味ないじゃない!」

「意味なんて、いらねぇよ」


 怒っているような泣いているような抑制のない声で、リトルがつぶやいた。


「大事な仲間を助けるのに、意味なんかあるかよ。大事に思うのに、獣人も人間も関係ねぇ」


 それはスキームに言ったのか自分に言ったのか、オレ達にはわからなかった。たぶん、その両方だったんだろう。リトルは強いふりをしていても、実際にどれだけケンカが強くても、同じ血と過去を持つ者として、誰よりも彼女の痛みを知っている。そしておそらく、違う立場と種族でありながらも、少佐も彼女のことを……。


「ヤバい!」

「あ……!?」


 瞬きをする間もなかった。突然、轟音が頭上から降ってきたと思った時には、大岩みたいな天井の破片が崩れてきた。オレ達は瞬間に跳び退ったけど、土埃が収まったそこにリトルの姿がなかった。


「リトル! おい!?」

「……でかい声出さなくても大丈夫だ」


 がれきの隙間から、かすかに声が聞こえてきた。スキームと少佐も、この向こう側にいたはずだ。あいつ、彼らをかばって……。


「それより、お前らは早くカームを助けに行け」

「お前はどうするんだよ!?」

「サンのくせに俺の心配なんかしているんじゃねぇ。さっさと行かねぇと、もうここはもたねぇぞ」

「でも、お前を置いてなんか……」

「いいから行け!」


 いつにも増して厳しいリトルの声に、サンは食いさがる言葉が見つからなかった。それでも諦めきれずにがれきを動かそうとしたら、ボールドさんに取り押さえられた。


「行くぞ。早く人質を助けないと本当に危険だ」

「いやだ! オレはリトルを助ける!」

「あいつなら大丈夫だ。それに俺たちが行かないと、全員で生き埋めになる。……リトル! 先に人質たちを連れていくから、外で落ち合うぞ!」

「任せたぜ、ボー兄」


 先にサンを部屋の外に引っ張り出して、ボールドさんも出ようとした時、オレに目でうなずいていった。さっきからあえて何も口出ししないでいたけど、オレの意図は伝わっていたらしい。


「シオン、お前も逃げろ」

「フィリガーのくせに、何を格好つけておるのだ」

「お前がいても、どうにもならないだろ」

「心配するな、応援くらいはしてやろう」


 こんな時にワケのわからないことを言って、あくまで動こうとしないから、もう放っておくことにした。


「……さて」


 大木が積み重なったような巨大ながれきの前に立って、とりあえず一息ついた。傷ついた少佐と細身のスキームは、意識がないのか声がしない。リトルの気配も、さっきからほとんどわからなくなった。早く助け出さないと、三人とも危ないな。

 試しに隙間を探して手を伸ばしてみたけど、引っ張り出すのはむずかしかった。小さな破片から動かしていっても、すぐにまた崩れてきて、よけいに危ういバランスになってしまった。


「さすがにマズい、かな」


 素手でこのがれきに立ち向かうのは、やっぱり無理らしい。どんどん揺れがひどくなって、入口の方でも崩れる音がしたけど、ふり返って見るのはやめておいた。

 残るはこの黒い刀のみ。オレの長年の相棒でも、果たしてこんな大きな塊をどうにかできるんだろうか。

 ……いや、どうにかしないとな。過去に世話になった上官と、今を見せてくれた女性と、未来を一緒に歩く友達。彼らは絶対にオレが助ける。目の前で大切な者を失うのは、もうたくさんだ。

 遠くで近くで、いよいよ最後の崩壊が始まったみたいだ。サンとボールドさんは、無事に人質たちをつれて逃げられたかな。


「……やってみるか」


 刀を鞘に戻して、左足を後ろに引く構えをとった。速さ重視のオレの刀術の中で一番威力のある技で、一か八かの賭けだ。がれきとがれきの間、最ももろい支点に狙いをさだめる。

 そして抜き放った一撃の瞬間、ついにすべての天井が崩れ落ちてきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ