ジェノサイダー桃太郎
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。
このお話は、川に洗濯をしていたおばあさんが川上からどんぶらっこっこと流れてきた大きな桃を持ち帰り、それをおじいさんがナタでかち割ろうとするところからはじまります。
おじいさんのナタが届く前に、桃がてっぺんからパカリと割れ、おじいさんをひと飲みにしたのです。
狂乱したおばあさんは、とっさに逃げ出そうとしましたが、哀れ、桃から生えでた無数の触手にとらわれ、おじいさんと同様にひと飲みにされてしまいました。
二人を食べた桃は、吸収した栄養で身体を成長させつつ、二人の脳を解析して残された記憶や想いを読み取っていました。
――そうか、恨みがあるのか。
読み取れたのは、鬼への強い恨みでした。近隣一帯を支配している鬼と呼ばれる種族が人間を苛烈に支配していたのです。
おじいさんとおばあさんが老老介護寸前の二人暮らしをしていたのも、鬼に面白半分で息子夫婦を惨殺されたせいだったのです。
桃は義理堅い性格でした。血肉になってくれた二人へ、せめてもの恩返しのつもりで鬼ヶ島に攻め入ることにしました。
鬼ヶ島に向かう行きすがら、目についた人間を触手でつかまえてはパクパクと食べていると、同じ恨みを持つ人間がたくさんいることがわかりました。
これはますます、鬼たちをこらしめなければいけません。
次々に人間を食べた桃は、鬼ヶ島に着くころには山のような巨体に膨れ上がっていました。
桃が姿を表すと鬼たちは大慌てで弓や投げ槍で攻撃してきましたが、そんなものは痛くも痒くもありません。鬼たちの攻撃にはかまわず、鬼ヶ島ごとパクリとひと飲みにしてしまいました。
桃の体内で鬼たちが消化されます。
消化が進むと、鬼たちが人間たちに強い恨みを持っていることがわかりました。
血肉になってくれた鬼たちへの恩返しをするために、桃は人間たちの都へと向かうのでした。
了
まったく毛色の違う連載を執筆中です。
サクッと読める軽い読み味なので、よろしければお口に直しにどうぞ。
■三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~
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