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プロローグ(後篇) 『派遣』

前回小説の更新についての説明を忘れていました。

一応、1週間に1回のペースで投稿する予定です。何らかの事情で不定期更新に変わるかもしれませんので、ご了承の程よろしくお願いします。

 二人の忠臣が敵陣に駆けて行くのを見届けた後、私は新介を連れ御殿(ごてん)に向けて走った。

 御殿内にいた小姓衆(こしょうしゅう)に火を掛けるよう命じ、奥の間へ向かっていく。

 奥の間に向かっている間に、私は新介にある命令を下しておいた。



「新介、余が腹を切ったら縁の板を引きはがし、遺体を床下へ入れて隠せ。決して我が首級(くび)敵に渡すでないぞ」


「……承りましてございます。必ずご命令通り処置致します」



 新介は少し躊躇いながらも、この命令を受けてくれた。

 これで私の首級は光秀の手には渡らぬだろう。ひとまず安心だ。



 目の前に奥の間の入り口が見えてきた。御殿に火が回り始め、焦げ臭い匂いが辺りを立ち込めている。

 ……いよいよ我が生涯の最後か。25年という短い人生であったが、最後に織田家の意地を天下に示すことができて満足だ。

 いや、天下泰平の世を見れずに散ることが心残りであるな……。

 もし“来世がある”というならば、また“武人として生まれ、我が才を存分に発揮”して、“天下泰平の世を創りたい”ものだ。

 そう考えていたとき、奥の間から『ドスンッ』と音が鳴った。

 突然聞こえた音に、私は腰に差していた太刀の柄に手を掛け身構えた。

 その隣では、新介が訝しそうに私を見ていた。



「……中将様? 如何(いかが)されました?」


「…………いや、なんでもない」


「……?」



 かなり大きな音がしていたはずなのに、新介には聞こえていなかったらしい。……気のせいなのか?

 私が自問自答している間に、新介が奥の間の襖を開けていた。

 これ以上考えても答えはでないか。

 そう思い私が奥の間に入ると、目の前に黒い虎のような生き物が現れた。

 その生き物は、体長が約33尺(約10メートル)あり、顔と胴体は虎だが背中にコウモリのような羽が生え、蛇の尻尾が5本ある気色の悪い歪な風貌をしている。

 その生き物の目は爛々と光り、私たちをジッと見つめていた。

 話しに聞く(ぬえ)のような生き物だ。

 私は差していた太刀を抜き、目の前の鵺に向かって構える。

 それを見た新介は驚きの声をあげて、私を問い詰めてきた。



「っ中将様!? 先程から如何なされたのです!」



 私は新介の問いに、怒鳴り返すようにして答えた。



「何を申す! 目の前に鵺がおるではないか! お主も刀を構えよ!」


「中将様こそ何を申されますか! 鵺など目の前にはおりませぬ!」


「ぬかせ! なら目の前におるあの黒い生き物は何じゃ!」



 新介にあの黒い生き物について聞いてみたら、意外な答えが返ってきた。



「中将様は何を見ておられるのですか? ここには拙者と中将様しかおりませぬ!」


「なっ!?」



 新介には見えていないだと!?

 ならばなぜ私には見えるのだ?

 新介は見えていなくても、私にはハッキリと見えているのだ。

 私は改めて鵺の視線をよくよく追ってみてみると、私だけを見ていることに気が付いた。

 すると不意に私に話しかける声が聞こえてきた。



『……爾が我を呼び出したものか……』



 この声は新介のものではない。

 それにこの部屋には私と新介の2人、それと鵺の1匹しかいない。

 と言うことは鵺が……しゃ、喋った!?

 しかし、奴の口は動いていない。それにこの声は私の頭に響くように聞こえてくる。

 それは即ち、直接私の頭に話しかけていると言うことか!?

 私は摩訶不思議なことを体験させられて、ひどく混乱してしまった。……落ち着け自分。考えることだけはやめるな。 

 あの鵺は私に話しかけてきたのだ。なら対話は可能だろう。

 ……よし。試してみるか。

 私は先程から言いたかったことを、鵺に向かって言ってみた。



「余は貴様なぞ呼んでおらぬ! 早々に立ち去れ!」



 すると鵺は首を傾げるような仕草をしながら言った。



『……いや、爾は我を呼んだのだ。爾は来世での活躍の場を欲したはずだ。それが我を呼び出すトリガー』



 とっトりガー? なんだその言葉は?

 それと鵺って小首を傾げるのか。なんというか……少し不気味だ。

 なんにせよ、トりガーとか言う言葉の意味は分からないが、私が“来世があるなら武人として生まれその才を発揮したい”と考えたことが原因で、奴を呼び出してしまったらしい。

 ……ウソだろこれ。いや、誰かウソだと言ってくれ!

 私があれこれ考えている間にも、鵺は話しを続けていた。



『来世には、爾の活躍できる場所はない。ゆえに武人として生まれることもない。しかし……こことは“異なる世界”ならば活躍することができるだろう』


「……は?」



 何を言っているのだこの鵺は。

 と言うより“異なる世界”ってなに?

 あまりにも理解できないことを言うので少し尋ねてみた。



「“異なる世界”とはなんだ? 貴様はいったい何がしたいのだ」


『その問いの答えはこれから向かう先にある。なに、すぐに分かるはずだ。……そろそろ時間だな。武人としての才を発揮し、天下泰平の世を創ることを望む者よ。今より爾を“異世界”へ派遣する!』



 私の問いには答えることはなく、声高に意味の分からないことを宣言する。

 すると奥の間が急に闇に包まれた。

 ふと周りを見てみると、先程まで傍にいたはずの新介がいなくなっていた。

 私は慌てて鵺に向かって叫んだ。



「ま、待て! 何をするきなのだ! まず余の問いに答えよ!」



 しかし返事は来ない。

 本当に何も答えないつもりなのか?

 それに先程私を派遣すると言ったはずだ。

 どのようなにして? もしや私を……。

 そう思っていた次の瞬間、予想通り鵺はその大きな口を開いて私に襲いかかってきた。

 私は咄嗟に構えていた太刀で口を斬ろうとしたが、あまりにも鵺が大きかったため斬ることもできず、そのまま丸呑みにされてしまった。





 暫しの刻限(とき)が過ぎた。

 鵺に喰われてから周りはずっと闇の中だ。

 本当に“異なる世界”に行かされるというのか?

 あの鵺は私を“派遣する”と言ったが、その意味はいったいなんなのだ。

 なぜ私が派遣される?

 これからどうすればいい?

 頭の中で次々に疑問が湧いてきて、先程よりも混乱してきた。

 周りも闇に包まれたままでいっこうに明るくならない。

 気が狂るいそうになったとき、急に辺りが明るくなった。

 私は咄嗟に目を瞑った。

 おそるおそる目を開けてみる。



「…………ここは……どこだ?」



 そこには私が今まで見たことのない風景が広がっていた。



     ◆     ◆     ◆



 ━━━━━天正(てんしょう)十年(1582)6月2日

 織田家当主・織田信忠は家臣・明智光秀に攻められ、京都・二条新御所にて自害……することはなく、黒い鵺のような生き物によって異世界に派遣された。

2月25日の第一話の投稿はお休みします。来週からは投稿を再開しますのでご理解のほどよろしくお願いします。

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