チカとエリカ
ある日私は交通事故で生身の体を失った。
世界では必ず、どこかで戦争が起きている。
私は平和な国の比較的、裕福な家の一人娘だった。
しかし、ある日私は交通事故で生身の体を失った。
「敵歩兵を視認! 」
「規模は? 」
「1個小隊規模」
「友軍は? 」
「1人です」
「迎撃可能か? 」
「可能です」
「では、出撃命令を出す」
「了解」
私は1人、戦場に立っていた、火星から地球への独立戦争だった。
生死の境、私は機械の体と自由を引き換えに命を取り留めた。
私に与えられた新しい体は、最新のナノテクノロジーで
造られた体、優れた兵士身体・ESDだと言われていた。
そして今、私は30から60人の兵士の中に突入していた。
勿論、旧式とはいえ、私同様あちらさんもサイボーグだ。
功夫、空手、柔術、合気道、忍術等をベースにした
独自軍格闘術を叩き込まれESDの私には簡単な任務のはずだった。
いつものように敵の隙間をすり抜けつつ、打撃、斬撃で半数以上を殺した。
しかし、敵の中にも数名の手練れがおり、死体の陰から私の右足を掴んだ!
レイコンマの一瞬、私の動きが止まってしまった!
奴らはその一瞬を逃さなかった!
およそ30体ほどの敵らが覆いかぶさってきた!
皆一様に目が赤く光って、自爆しやがった!!
目の前が真っ暗になり、私の意識もドス黒い闇のなかに沈んでいくようだった。
「これが死というものか」
そう思い意識がなくなった。
「・・・しぃ も・・しぃ」
「もしもーしぃ、」
「!!」
パチリと私は目をあけた。
「わ! びっくりしたぁ・」
そこには、私を覗き込むように少女が屈んでいた。
? 私は生きていいるのか? 手足や体に異常は無さそうだ。
ESDの自己修復機能は大したものだ、普通あれだけの数に
自爆を受けたら死ぬ、もしくは首だけになっていると思ったのだが。
「ねぇ、君、喋れないの? 大丈夫? 」
「ガガディデジジ(ああだいじょうぶ)」
ん?少女の言っている事は思念で伝わるが、発音が難しい。
私の知らない言語なのか? まずはこの少女の発音を
真似てみていこう。少女の口元、喉の奥の映像を再生して発音してみた。
「ワ! ビックリシタァ・」
「それは、僕のセリフだよ、君は外国人さん? 」
「それに、どうして、こんな所で寝ていたんだい? 」
「ダイジョウブ」
「なにが大丈夫なものだい、こんな所で寝ているだなんて自殺行為ものだよ!」
「は!もしかして、もうすでに何か乱暴さてちゃった後ぉ!」
「でも、大丈夫ってさっき言ってたし、平気なのかな? 」
「へいき」
と、オウム返しで何となく会話が成立したので、
そんな感じで1時間ほどおしゃべりをして、だいたいの発音が出来るようになった。
「それでね、僕が可愛がってた猫が・・」
「ねえ! あなた、ここはどこ! 戦争はどうなっている? 教えて!」
「うわ! いきなり流暢に喋りだしたぁ! 」
「いいから、教えて! ここはどこ? 戦争はどうなっている? 」
「それは、さっきも聞いたよぉ、ここはハシラの森、戦争って、天界グシティア王国と
魔界国家アシグルとの争いのこと? 」
「グシティア? アシグル? それってなんのことなの?!」
ここは、地球でも火星でもない! どこか知らない人間の住める惑星?
そうだ、通信は?
「スー・・・・・」
ク! 通じない。 しかし動じるな、まずはこの星の事を詳しく調査してみよう!
そういえば、さっき天界グシティア王国と魔界国家アシグルとの争いって
いってたよね?・・・・。
「お姉さん、お姉さん! 急にだまらないでよ! 」
「僕だってちゃんと聞きたい事が有るんだ」
「お姉さんのお名前は? そして兵士なの? 」
ああ、このクリィチェア・ライトアーマーを装備しているからか。
「名前はチカ、兵士よ。」
「僕の名前はエリカ、チカさんは兵士のわりに剣や盾を持ってないよね?
寝ている間に盗まれちゃったの? 」
「盗まれては無いわ、初めから持ってないの」
「じゃぁ、どうやって戦うの? 体術士なの? 」
「そうね、体術士だけどこんな武器も使うの」
そう言って腕刀からキルブレイドを生やして見せた。
「うわ! 腕から刀が生えた! これ、魔法? 」
「魔法? まぁそんなものかな? 」
「チカさんは、ここで何をしていたの? 」
「初めは戦場にいた、それで死にかけて、
気が付いたらここにいて、仲間とも連絡がとれなし、
今いるこの世界の事も分からなくて困っている・・・・」
「チカさん」
「チカって呼び捨てでかなわないよ」
「じゃぁ、僕の事もエリカでいいよ、それでね、よかったら
僕の家に来ない? しばらく住んでてもいいよ! 困っているんでしょ? 」
「え!? いいのかい!? こんな見ず知らずの私を!
それにご両親にだって了承をもらわなくちゃだし! 」
「大丈夫、今は僕一人で住んでいるんだ、
僕の両親は1年前に軍隊に殺されちゃったんだ」
「あのぉ、なんかごめんな、嫌なことを思い出させてしまったみたいで」
「いいよ、済んでしまった事は仕方ないし、
僕の家の家訓は「困っている人を見たら助けてあげなさい」だから」
こんなに良くしてくれようだなんて、
もしかしたら一人で寂しいのかもしれない。
「じゃ、エリカに甘えさせて貰います、よろしくね」
「こちらこそよろしく、チカ」
「僕の住んでいる町は、トライブって言うんだ、結構大きな町だよ」
「ここから遠いのか? 」
「ううん、近いよあと1時間も歩けばつくよ」
1時間か、もう日も沈みかけてるし、このまま歩きだと夜になってしまいそうだな?
「エリカ、私に任せてくれれば近道ができるが、どうだ? 」
「近道って、チカはここら辺初めてでしょ? 」
「方角さえ分かれば問題ない」
「えぇ? 本当? 」
「嘘はいわない、信じてもらえないか? 」
「うぅん、わかった、チカにまかせる! 」
私はエリカを抱えると、背中から灰色の翼を生やし、
翼を羽ばたかせ、ゆっくりと宙に浮かんだ。
「うわ! 浮かんだ! それにチカ、天使様みたい! 」
この殺人マシーンが天使か・・・。
調子にのって翼の色を真っ白に変色させてみせた。
「綺麗な翼、チカは天使様だったんだね」
「エリカ、私は天使なんかじゃないよ」
どちらかと言えば悪魔だ。
そしてエリカのさす方角へ一直線に飛行した。
すると頑丈そうな外壁に守られている町が見えてきた。
「エリカ、あそこがトライブだな? 」
「そう! あの町だよ!」
町の門の少し手前で降りて、そこから門まで歩いた。
門の前には門番がいてエリカに話かけた。
「エリカちゃん、このお姉さんは誰だい? 」
「トライブまで旅をしてきたんだって、僕が困っている所を助けてくれたんだ」
この門番、手に何やら怪しげな物を持っているな。
「助けてって、なにを? 」
「転んで足をくじいちゃって、すぐそこまで抱いて運んでくれたんだ」
門番が私に近づいてきた。
「ふーん、でお姉さん名前は?」
「私はチカという」
門番が手に持っているものを拡大視した、どうやら何かの計測器のようだ。
何を計測しているんだ?と、思っていると、門番が近づき私の背中の方を覗き込み
そうになり、
「旅ってわりに・・・」
私は察して、背中に荷物らしき物を形成した。
「っと、こりゃ大荷物だねぇ。」
チラッと門番が計測器を横目でのぞいた。
「今夜は何処に? 」
「エリカがお礼に泊めてくれるそうなんだ」
「エリカちゃん、偉いね、2人共通っていいよ」
門番が持っていた計測器、いったい何を計測してたんだ?
ま、無事に門を通れたし問題ないか。
しばらく歩くとエリカの家についた。
「お腹空いたでしょ? 今、何かつくるね」
「いや、私は水が補給できればそれだけでかまわない」
一応、味覚もあり通常の食事も出来るが、基本的には水分さえ
有ればことたりる。
「そんな事言わないで一緒に食べよう! 一緒に食べたほうが美味しいんだから!」
「・・・・了解した」
食事を終え、エリカと色々と話した。
悪魔、魔獣、魔物、天使、妖精、精霊、神
魔法、呪術、奇跡、祝福など、まるでおとぎ話のようなこの世界の現実。
そして、天界シティア王国と魔界国家アシグルの事。
天界シティア王国は神聖術で発展し、天使が住まいし神を崇める国。
それに対して魔界国家アシグルは魔術で発展し、悪魔が住まいし魔王を崇める国。
神は人間に奇跡と祝福を、魔王は人間に呪いと恐怖を与えていた。
人間にとっては天界シティア王国に勝利してもらいたいと思うか。
戦争ならば勝者こそ正義なのだ。
そこには天使が正義、悪魔が悪という概念は無い・・・。
まぁ、私の経験上、本人の自覚無しで人間は聖者よりも悪魔になりやすいと思うんだが。
本物の悪魔ってやつは、どの位強いのだろうか?
魔法は私にも効果があるのだろうか?
年に数度、天界シティア王国と魔界国家アシグルは戦争を起こすそうだが
その度にトライブに大きな被害が出るという。
エリカは頭の賢い子で、人間の町トライブの政治や法律にも詳しかった。
町の発展具合や人口数からいって、王が居ないという事以外、町と言うよりも国に近かった。
次の日、昨日エリカを夜更けまで話につき合わせてしまったせいだろう、
エリカはお昼近くまで寝ていた。
「おはよう、チカ」
「おはよう、エリカ」
片目をこすりながら眠そうにエリカが起きてきた。
「朝ごはん、じゃなくて、昼ごはんの支度するよぉ」
「ああ、すまない私も何か手伝おうか? 」
「いいよ、僕1人で」
今日はエリカに図書館へ連れて行ってもらおう、何せ情報がほしい。
どうにか帰還する方法の糸口でも掴めればと思う。
昼食後、早速エリカに図書館に連れて行ってもらえるよう頼んだ。
「いいよ、でも今日は1日中は付き合えないから帰りは1人で大丈夫? 」
「ああ、大丈夫、了解した」
昨晩、空中から町の構図は記憶できていたから問題ない。
ただ、その時、空を飛び高度を上げたら上空に
見えない壁を感知した。ガラスではない透明の何かだ・・・。
視覚機能パターンを何度も切り替えて観たが、何なのかは分からなかった。
特に危険そうでも無かったので気にしないようにしたが、
やはり色々と不思議だった。
町の東北に図書館があった、かなり大きな建物だ。
私は片っ端から本の中身を記憶していった。はたから見れば、読んでいるというよりも
ただ単に、高速でページをめくっているだけの様に見えているのだろう。
かなり厳重に保管されていた書物の数々も含め、夕刻を過ぎた頃には図書館にあった本、全部に目を通し終えていた。
後は文字の解読だ、これも一晩有れば十分だ。
エリカの家に着くと、エリカが家の前で串焼きを焼いて売っていた。
「ただいま、エリカ。 何か手伝う事ある? 」
「じゃあ、お肉をこれくらいに切って、そこの串にさしていって」
肉を切って串刺しにする、得意分野だ。
速攻で終わらせた。
「エリカ、出来たよ、他に何かある? 」
「え! もう出来たの? もう頼める事ないから休んでて」
次の朝、本の解読が終わり中身の内容が理解できた。この世界の成り立ちから、
あのおとぎ話のような悪魔、魔獣、魔物、天使、妖精、精霊、神
魔法、呪術、奇跡、祝福などの事柄を知れたのはよかった。
この世界に来る前までは有り得ない内容ばかりだったからだ。
「マナ」「オド」といった概念も知ることが出来て、対処方法もわかった。
また、魔法結界などで厳重に保管されていた書物には天界シティア王国と
魔界国家アシグルについても記されていた。
天界シティア王国では天使と人間のハーフが生まれた事が有り、そのハーフの子は
数百年トライブに住んで居るらしい。しかも、見た目は少女のままなのだそうだ。
魔界国家アシグルには、元天使も住んで居るらしい。
しかも魔界ランク上位に属している。魔王と呼ばれる個体は複数存在する。
元の世界に戻れる可能性があるのは「奇跡」と「魔法」かな?
奇跡は癒し、死者の蘇生、復活などがある。私も1度死んで復活したのかもしれない。
魔法には時間魔法、空間魔法などもあり、これも私が死ぬ瞬間時間が止まり、空間移動でこの世界に来たのかもしれない。他にも転移や召喚なんてのもある。
それと、神の奇跡と悪魔の魔法を無力化する方法と天使や悪魔を倒せる魔法もある。
か弱い人間が生存するための知恵というやつか。
「バタン!!」大きな音で戸が開いた。
「エリカちゃんがさらわれた!!」
知った顔のおじさんが大きな声でそう言った!
「誰に?! どこに?! 何のために!!? 」
「悪魔だ! 多分、西の古城だ! く、喰われちまうかもしれねぇ! 」
急いで町の門をでて、すぐさま翼を広げ真上に上昇し、西側を見る。
既に周りは真っ暗闇だが、私には関係ない!
「見えた! 」
視覚を拡大し、古城を視界ロックして音速で飛行する!
距離は30Km、到着と同時に両手の平から強烈な空気砲発射でブレーキをかけ着地する。
古城の中に入り床をみて、足跡を発見した。
「真新しい跡だった! 奴もついさっきここに来たみたいだ! 」
足跡を追跡、上り階段に向かっている! ジャンプして一気に上がって
真っ直ぐな通路を何か仕掛けが無いかセンサーで探知しながら走り進むと
どでかい扉が現れた!
左足で蹴り飛ばして扉を破壊して中に入った!
壁に青白い光が点々と灯っている。
「ギャーッブァア、ハッハッハ!! 」
「よくこの短時間でここまで来たなぁ! 」
「空でも飛んできたのか!? 」
豚ベースのモンスター?
体長3m62cm
重さ2560Kg
天井に56匹
コウモリみたいなのが吊り下がっている。
「そんな事は、どうでもいい!」
「エリカはどこだ!? 」
「俺様の後ろのドアの向こうだ」
「ギャーッブァア、ハッハッハ!! 」
ドア向こうからの生体反応が急激に弱くなっていっている!危険な状態だ!
こいつらを倒す前に、エリカの救助が先だ!
超加速!踏み込みで床が割れた。 豚野郎の又の間をすり抜け、ドアを蹴破った!
すると四肢を切断され、両腕、両脚の付け根をロープで縛り大の字にエリカが吊るされてた!
蹴破ったドアから豚野郎が覗き込んできた。
「食材は鮮度が一番だからなぁ、今日喰う分だけ切り分けて、生かしてあるのさぁ」
「ギャーッブァア、ハッハッハ!! 」
奴はあの体格だ、直ぐにはこちらに入ってこれまい!
注意すべきはコウモリ野郎どもだ。
私は体の一部をガムテープ状に分離しながら切断された四肢を探した。
右奥のテーブルに両腕、両脚が並べて置いてあった!
素早くテーブルのもとへ移動し、切断された両腕、両脚の確保に成功した!
コウモリ野郎が1匹、2匹と部屋に侵入してきている! 急がないと!
エリカの所に行き、まず右腕付け根のロープを外して、
右腕を切断面に合わせてテープでグルグルと巻き付けた。
コウモリ野郎が7匹、8匹と次々と侵入してきて、私めがけて突っ込んでくる。
コウモリ野郎を手で振り払いながら、右腕と同じ要領で左腕を付ける。
次に左脚だ、うーん、終わり。 次、右脚!・・・・・終了!!
治療したエリカを足元に寝かせ、
私は両腕を細長く刃状に高質化させ、コウモリ野郎達を切り刻んでいった!
ボトボトとコウモリ野郎が床に落ちていくが、
直ぐに起き上がって、こちらに歩いてくる。
動体真っ二つにした奴も下半身は歩いて、
上半身は、はって近づいてくる。
頭半分の奴もいるのに。 脳内検索をかけた・・・・・!
こいつらバンパイアだ!! だったら!
両手を広げ、なるべく大きなポーズをった。
「太陽光照射!! 」
全身が眩しく光る、コウモリ野郎どもは、たちまち灰になっていった。
そのまま残りのコウモリ野郎のいる隣の部屋へ入って、皆、灰にしてやった。
「ゴンノヤロウ! 」
豚野郎が襲い掛かってきたので、光を消して裏拳を顔面に入れてやった。
豚野郎の頭がトマトのように潰れた。
「・・・・・悪魔ってのはこの程度か」
エリカの容体を透視で観て確認すると、
骨がもうくっ付きかけ、筋繊維は完全に治っていた。
エリカをそっと抱え、トライブの町へと戻った。
主人公の設定が気に入っています。
読んで頂き有難う御座いました。