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吹替シンデレラ  作者: 佐々木佐々
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ちょっと待って! まさかの展開になっちゃうの!?

「こんにちはー。お弁当届けに参りましたキラウマ弁当でーす」


 固くて重い鉄の扉をゆっくりと開ける。

 別にここを乱暴に開けたからといって中に影響がないことは知っているのだけど、なんとなくいつもそっと開けてしまう。


「ああ。待ってたわ。今里さん」

「あ。伊木さん! いつもありがとうございますー!」


 ソファーとテーブル、その上にお菓子。それとテレビがあるだけの小さな部屋。壁には所狭しと外国映画のポスター。その先には入口よりも更に重そうな扉が二つ。小さな部屋に見知った顔があって安心した。たまに誰もいないこともあって、その時は対応がすごく面倒くさいから。

 伊木さんは40代前半くらいの眼鏡をかけた、すごく気さくで元気な女性。変に女を感じさせないその性格が、あたしは何となく好きだ。

 注文されたお弁当をテーブルの上に置き、請求書を彼女に手渡した。


「あー…っとお金なんだけど、まだみんなから徴収できてないのよ。もうちょっと待ってもらっていい?」

「どれくらいかかります?」

「そうねー……。今このロール最後のガヤ録りしてるからあと数分かな」

「わかりました。ちょっと店に連絡入れておきます」

「ごめんねー」

「いえいえ。いつもご贔屓にしてもらってますからこれくらい」


 そう言って、私はいったん外に出て、すぐに室内に戻った。

 戻ったら、人が増えていた。20代後半くらいと40代くらいの男性。二人ともスーツを着ている。ここでスーツの人って初めて見たかも。


「あ、お帰りー。大丈夫だった?」

「はい。なるべく早く戻るようにって言われましたけど」

「まあ、そうだよね、ほんとごめんねー」


 あ。最後の一言いらなかったか。と思っていると、スーツの若い男性が伊木さんに声をかけた。


「伊木さん。この子は?」

「ああ。ケータリング頼んだお弁当屋さんの配達娘ですよ」

「キラウマ弁当さん?」

「はい! キラウマ弁当の今里と言います」


 お店の名前に敬称をつけられるとなんかムズムズする。


「たまにうちの子も僕もお世話になってるよ。いつも美味しくいただいてます。ありがとう」

「いえいえ! こちらこそありがとうございます」


 うわあああ! この人笑った顔が超綺麗! ていうかイケメンじゃん! スーツに気を取られてて気づかなかった!!

 たかがバイトの配達娘だから別にあたしが作っているわけじゃないんだけど、役得だーー!!

 とかなんとかやってたら部屋の奥にある重い扉の一つが開いた。


「渋谷さんお疲れさまでーす。お弁当届いてますよー」


 出てきた人は40代くらいの男性で。なんだか少し疲れた顔をしていた。頭をぼりぼり掻いている。


「おーー……」

「終わらないんですか?」

「本線はいいんだよ。文句ないんだよ。ただなー。思ったよりガヤの女の子の声が足りない」

「何個も重ねたら?」

「んーー。ガヤとはいえ、同じ声が十個もあったら気づくだろ」

「MEは?」

「そうなんだよー。ME使えると思ってたんだよーー。でもMEが微妙だから録りたいんだよなー」


 おおお。よくわからない専門用語が並んでいる。どの会社に届けに行ってもこういう時、その道のプロってすごいなーって思う。


「足りないのって女の子ですか?」

「そう。おばちゃんじゃなくて女の子」

「渋谷さん? 誰もそういうことが言いたいんじゃなくてですね」

「じゃあ何?」


 はーっと深いため息を吐く渋谷さん。


「女の子、一人いますよ」

「は?」

「いやいや今日来てるマネージャー全員男……」


 渋谷さんは、ここにきて漸く奥の部屋から出てきて初めて顔を上げた。

 そしてあたしと目が合う。


 ……ん?


「いたーーー!!!」

 思いっきり指さされました。


 え。これってさ、もしかしなくても……

 白羽の矢が立ったってこと!?

アニメ声優にスポットをあてた作品は数あれど、吹き替えにスポットをあててる作品ってみたことないなぁ。と思って、書き始めました(私が知らないだけかもしれませんが)


声優業界のおかしな風潮や、慣習、昨今の声優ブームによるひずみも描けたらなぁ…

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