第8章 「けじめ」
第8章 「けじめ」
一歩一歩、足を運ぶ。
血が滴る拳を、強く握りしめる。
どれくらいたっただろうか?
奴が、凰蓮が真犯人だと、気付いたのは・・・。
あいつは、最期に取っておいた。いや、正直あいつが犯人だと「認めた」くなかった。
でも、今は。今だから、あいつを殺せる。
春の暖かに目覚めた蝉の音が、時雨のように降り注いでいる。
少し汗を掻いた。暑いのも、寒いのも嫌いだ。
黄昏。それは、まさにこんな感じなんだろう。
俺の最期・・・。俺は満ち足りた人生を送れただろうか・・・?
俺は、楽しむだけ楽しんで、そして・・・安らかに眠りたかった。
黒陵院。
黒幕が、偉そうにタバコを吸う。
睨み合ったまま、静寂が時を支配する。
「お前が、考える事は変わらないな・・・。」
父、凰蓮が懐かしむように言った。
「遺言は、それだけか・・・?」
ポケットから、綺麗に輝く黒い刃を取り出した。
「ほお、闇猫か・・・。」
闇猫。黒陵院家が、剥奪者の証として、それを持たせる黒刀だ。
何故、そんなものを渡されるのかは、分からない。ただ、その禍々しい輝きが、何を意味するかはわかった。
「覚悟は、とうの昔に出来ている。」
凰蓮は、立ち上がった。そして、俺の前で止まった。
「あの日・・・以来か?」
静かに笑った。そして、俺は刃を心臓に突き刺した。
スローモーションに、凰蓮の体が床に沈む。
一人になった部屋には、蝉がうるさく鳴いていた。
そこに、ルイが現れた。
「やっぱり、白蓮は・・・変わらないね。」
闇猫を引き抜き、血を拭ってから俺に差し出した。
「あぁ・・・。」
疲れた。自分の人生に。
でも、もう終わる。復讐者は、今日で終わる。
「何処に行くの?」
俺は、答えずに黒陵院を出た。そして、クロの墓前に来た。
「クロ。もうすぐ、お前と逢えるな・・・。」
おれは「けじめ」を付けた。
今までの自分に。これからの自分に。
闇猫を自分の胸に、立てた。
すぐに、景色は淡く消えていった。
息絶える寸前、確かに見えた。
クロが、俺の傷を舐めてくれた。
痛みとは、違った意味で涙が流れた。
「クロ・・・・ありがとな・・・・。」