表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロネコ  作者: anather R
4/10

第4章 「闇に消える、漆黒の猫」


第4章 「闇に消える、漆黒の猫」


順調に時間を潰し、気が付いた時には12時を回っていた。


「片桐。飯どうするん?」

まだ飽きずに、部屋を探検している片桐に言った。

「500円あるから、弁当買おうと思ってる。」

こっちを見もせずに、500円をポケットから出し、また直した。


そして、何かの写真を持ってリビングに戻ってきた。


「ねぇ、霞君。この猫って、飼ってたの?」

「・・・・それに、触らんとってくれ。」

「え?でも、可愛いし。名前教えてよ。」

「ええから。それ直してき・・・・・。」


俺の声色が変わった事に、気付いた片桐は、

小さく「ごめんなさい。」と言って、写真を直しにいった。


出来れば、知られたくなかった。

片桐を知ろうとするくせに、自分の事を知られたくない。

これは、矛盾しているのだろうか?


触れられたくない「過去」

それは、誰だって持ってると思う。


「霞君・・・。ごめんね。」

片桐が、戻ってきてからまた謝った。自分に嫌悪感を抱いた。

過去を引きずり、それを必死に隠そうとする。


「片桐・・。俺も悪かった・・・。」


沈黙が流れた。そして、静寂を破ったのは、片桐だった。


「もし・・・もし、よかったら、何があったのか聞かせてほしいの・・・。」

「・・・かなり、重い話やぞ?」

片桐は、少し考えてから、「それでも、聞かせて・・・。」と言った。


俺も話そうか迷った。

だが、片桐の発した言葉で、決心が着いた。

「私たち、もう友達でしょ?」


俺は静かに、写真の猫の話をした。



俺には、小5の頃から黒猫を飼っていた。名前は、クロだ。

飼っていたといっても、正確には面倒を見ていただけだ。


毎日餌をやり、全てを猫に注ぎ込んだ。


それは、中学に入ってからも続き、その所為にする訳じゃないが、

学校も遅刻しがちになっていた。


田舎の学校と言うのは、生真面目で少し調子に乗っている。


俺は、クラスだけではなく。

学校全員の顰蹙を買っていた。そして、イジメられるようになった。

俺を傷付けるなら、いくらでも我慢できた。

何をされても、「覚えとけよ!」って仕返しの準備をする事が出来た。


だが、ある日。

いつも、クロのいる場所にいなかった。

俺の心は一気に、不安で埋め尽くされた。


「クロに何かあったら・・・。」

「あいつらは、やりかねない。」


自然と、拳を握る力は増していき、指が真っ赤になった。

結局、見つからなかった。

しかたなく、学校に行った。そして、知りたくない事実を知る事になった。


それは、昼休みのトイレ。粋がった連中のたまり場だ。

その前を通り過ぎた時、嘲笑う声が聞こえてきた。


「あの黒猫。おもろかったな・・・w」

「動物虐待とか、ひどいわぁ〜w」


この辺で、黒猫と言えば、クロしかいない・・・。

大きな絶望感と共に、俺は憎悪に染められた。

トイレに溜まっていた3人組を、一人ずつ殴っていった。

憎悪に染まった俺は、どんな攻撃も効かなかった。


一人は、顎が外れ、鼻からは鼻血を垂らし、中坊のくせに泣き喚いていた。

もうひとりは、殴った衝撃で頭を強く打ち、病院に運ばれた。

最後のひとりは、1発殴っただけで、逃げられた。


泣き喚かれた所為もあって、先生が駆けつけた。

どんなに倒れても、起こしてまた殴る。それを見た先生は、当然のごとく俺を叱った。


そいつらと、その親に謝れって言われたけど、俺は謝らないの一点張りで、結局謝ってない。


俺は、そんな事より、クロが気になっていた。

学校を抜け出し、クロを探した。見つけたのは、神社の裏だった。

・・・・以前、クロだったモノが横たわっていた。


それがクロだとわかったのは、漆黒の毛並みがあったから・・・。

俺は泣き崩れた。クロだったモノを抱きしめて・・・。


俺の復讐は終わらなかった。


あいつらに、ここまでする根性があるとは、思えなかった。

他に共犯、もしくは首謀者がいる筈だ。

証明はできない確証。


だが、その復讐を実行する事はなかった。


その事件の後、すぐに転校が決まった。

そして、ここに来た。



俺は、全てを信用できなかった。

だが、片桐・・・あいつだけは、信頼できた。

影がある。俺と同じように・・・。

哀しみを知った目。孤独を知った目。俺と似ているからこそ、片桐に本音が言えた。


言い終えた俺は、目に涙を溜めていた。

片桐は、静かに泣いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ