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戦乱の異世界で、◯◯◯は今日も△気に□□□中!!  作者: 宇都宮かずし
『戦乱の異世界で、和食屋『桜花亭』は今日も元気に営業中!!』編第二部 桜の木の下で……
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第九章 シズト軍VSラーシュア軍 03

「え~いっ! シズトは今日もおらんのかっ!?」


 太陽が真南から若干西へ傾いた頃。準備中の札が掛かった桜花亭に、王国第四王女の声が響き渡った。


「あっ、シルビア王女様。おはようございます」

「と、ゆうても、もう昼過ぎじゃがな。まったく、この寝坊助姫(ねぼすけひめ)が……」


 テーブル席で食後のお茶を片手に声の方へと振り返るステラとラーシュア。

 母屋の方から近衛騎士のトレノと共に現れたシルビアは、少々不貞腐れたように頬を膨らませると、その二人の座るテーブル席へと腰をかた。


「仕方あるまい。妾とて祭りの準備と政務の書類仕事が重なり、夜は何かと忙しいのじゃ」


 王国の第四王女に面と向かって『寝坊助姫』などと言える者など、サウラント王国広しと言えど、彼女ともう一人くらいのモノだろう。

 ただ、王宮で国王の末娘として蝶よ花よと育てられたシルビアにとって、自分を特別扱いしない――他の者と分け隔てなく接してくれる事が、心地良くも感じていた。


「あっ、すぐにお二人の分の食事をお持ちしますね」


 ――後は、二人の雇い主であるこの娘も、そうなってくれれば良いのじゃがな。


「何か仰いましたか?」

「いや、何でもない――それよりも食事って、またアレか?」

「あはははは……」


 シルビアの問いに、困った笑いを浮かべるステラ。

 その表情に、全てを察したシルビアは肩を竦めため息をついた。


「はあぁ~。またイカメシか……」

「確かに最初食べた時は、見た目とはうらはらの美味さに驚きもしたけど……」

「さすがに三日も続けば、少々飽きてくるのう」


 そう、静刀がB級グルメコンテストに参加を表明してから、三日。静刀は昼食用にイカ飯を作り置きして、日中の間はコンテストの準備に奔走しているのだ。


 昼食に同じメニューが続いている事に加えて、静刀と敵対した事により、一緒にいる時間も削られる形となったシルビアは、先日の選択を後悔し始めていた。


「それでシズトのヤツ、今日はどこに行ったのじゃ?」


 運ばれて来たイカ飯を食べながら、不機嫌そうに尋ねるシルビア。


「え~とぉ、今日は釣りに行くと言ってましたよ」

「釣りじゃと?」

「釣りか……?」


 ステラの答えに、訝しげな表情を見せる美人主従。

 ちなみに前日と前々日、シルビアが同じ事を尋ねた時に、ステラは昨日が修道院で厨房を借りるで、一昨日が鍛冶屋に行くと答えていた。


「それで? 女ギツネはどうしたのじゃ? まさか、シズトと一緒ではあるまいな?」

「いえ、アルトさんは、修道院に行きましたよ。何でも新しく作った調味料が出来上がったとかで」

「そうか……ならば、ひとまずは安心じゃな」


 ホッとした表情を浮かべて、再びイカ飯を頬張り始めるシルビア。


 あの酒場での一件以来シルビアは、アルトに対して抜け駆けは禁止と何度も釘を刺してはいるが、相手は元宮廷魔導師にして智将アルテッツァである。

 ましてや、女性としての色香に関しては、彼女の方が上であるという自覚もある。

 シルビアにとっては、やはり不安のネタは尽きないのだ。


「しかし、釣りというと――やはりシズトは魚料理という事でしょうか?」

「ふむ……確かにシズトはどちらかというと、肉料理より魚料理の方が得意じゃからのう」

「ただ、屋台で出せる魚料理など、わたしには串焼きくらいしか思いつきませんが……」

「妾もじゃ……」


 今食べているイカを魚に分類して良いのかシルビアには分からない。しかし、頭では三日続いたメニューを飽きたと思っていても、いざ食べ始めると箸は止まらないのが現実だ。


「かっかっかっ! 主が何を作っておるのかは知らんが、屋台で――しかも安価で出せる魚料理なぞ、たかが知れておるわ」


 眉を顰める二人の会話を、豪快に笑い飛ばすラーシュア。

 その言葉に、シルビアは安堵の表情を見せた。


 シルビアの印象では、料理の腕は静刀の方が上にだけど、知識だけ見れば多分ラーシュアの方が上。そのラーシュアが現状、この世界でクレープを超える屋台料理はないと言う。

 いくら、勝てば静刀に何でも言う事を聞かせられるとはいえ、彼を敵に回した上に負けたのでは目も当てられない。


 ただ、気になるのは、この『現状』と言う言葉。

 確かに現状では存在しないのかもしれないけど、静刀は何か新しい調味料を作っているという。


 それが、ラーシュアの予想していないモノだとしたら……


「かっかっかっ。土下座して謝る姿が目に浮かぶようじゃ」

「おい、ラーシュ――」


 あまりにも状況を楽観視しているラーシュアに、シルビアが声をかけようとした時だった――


「何だ? 自分が土下座する姿が、そんなに嬉しいのか?」


 準備中のはずの扉が開き、三人の人影が現れたのだった。

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