第三章 作戦会議 01
「植物の成長と活性化なら、精霊魔法と四大元素魔法で、なんとかなると思いますよ」
手にしていた湯飲みを置いて、明るい口調で話すステラの言葉――
オレも詳しくは知らないが、確か精霊魔法とは万物に宿る精霊に働き掛ける魔法で、主にエルフ族に伝わる魔法だ。
対して四大元素魔法は、火・水・風・土の四元素を操る魔法で、コチラの世界でもっとも一般的な魔法である。
「例えば苗木を育てる時に、精霊の力を借りて成長を促進させてあげれば三日で背丈くらいの大きさに育ちます」
「そして植樹の方は、寒さと陽のあたる時間が短く活力が弱まると言うのであれば、枯れぬように大気のマナを集めて木に注ぎ込んでやればよいのです」
「それと充分にマナを送ってあげれば、大地と樹木の精霊に働きかけて、一気に木を成長させる事も出来ますしね」
「他に充分な量の肥料と水が必要になりましょうが――まあ、川沿いの土手に植えるのなら水は問題ないでしょう。ですので必要なのは、大量の肥沃な土と肥料ですね」
「「おおぉぉ……」」
ステラ先生とアルト教授の解説に、オレ達は思わず感嘆の声を上げた。
さすがハーフエルフと元宮廷魔導師。
魔法なんて架空の存在だった日本では、考えもつかないやり方だ。
「なるほど……その手がありましたね。魔導師の端くれとして、その事に気が付かないとはお恥ずかしい限りです」
「えっ、なに? レビン、魔導師だったの!?」
伯爵公子の突然の告白に、思わず目を丸くするオレ。
「ええ。恥ずかしながら、コレでも大賢者セルシオ・レクサンスの直弟子なのですよ」
「大賢者セルシオ・レクサンス……?」
微かに聞き覚えのある名前に首を傾げるオレ。
え~と……確かこの国で、一、二を争う魔導師の名前が、確かそんな名前だったような……
「あっ、大賢者セルシオさんって、セルおじいさんの事ですよ」
首を傾げたオレを察したのか、件の大賢者について、とても分かりやすく教えてくれるステラ。
しかし、その手短で的確。そして単純明快な解説に対して、なぜかオレは思考は中々追いついて行けなかった。
え、え~と……セルおじいさん……?
……
…………
………………
「はあぁぁぁああぁぁーーっ!? あの貸馬屋のエロジジイが大賢者ぁぁーっ!?」
そしてようやく思考が追いついた瞬間。衝撃の事実に勢いよく立ち上がり驚嘆の声を上げた。
そう、ステラの言うセルおじいさんとは、近くで貸馬屋をしているじいさん。
ウチの店の常連で、事ある毎にステラの尻やトレノっちの胸を触ろうとする、油断も隙ないエロジジイである。
「な、なんとっ!?」
「あの、スケ――ご、ご老体がセルシオ殿なのかっ!?」
更にオレの言葉を聞き、同じように驚嘆の声を上げるシルビアとトレノっち。
ちなみにラーシュアとアルトさんに至っては、声も出せずに目を丸くしている。
「大賢者セルシオ・レクサンスと言えば、戦時中に数々の伝説を残し、王都にもその名が轟いておるぞ……」
「はい、王都でその名を知らぬ者は居りますまい……しかし、変わり者とは聞いていたが、あそこまで変わり者――いや、アッチ方面に変わり者だったとは……」
王都在住である王女さまと近衛騎士の言葉に、困ったような苦笑いを浮かべるステラ。
「お主といい、エロジジイといい……この国の魔導師は、変態でないとなれん決まりでもあるのか?」
「お褒めにあずかり光栄です、ラーシュアさま」
「褒めとらんぞ」
レビンの爽やか笑顔に、ラーシュアの冷たい視線が突き刺さる。
まあ、信じられない事実ではあるが、現実逃避していても仕方ない。
オレは気を取り直すべく椅子に座り直し、すっかりぬるくなった紅茶を飲み干してから伯爵公子に向かって口を開いた。
「なあ、変態の弟子。一つ聞いていいか?」
「なんなりと聞いて下さい、お義兄さん」
「魔法を使えば、季節はずれの時期に――例えば春に咲く花を秋に咲かせる事も出来るのか? それからお義兄さんゆーな」
「専門外ゆえ詳しくはありませんが、確か可能だったかと思いましたよ」
おおっ、可能なのか。
とはいえ、この残念イケメンは専門外らしいし、誰か詳しそうな人の話を聞きたいな。出来ればエロジジイ以外で――




