第一章 賄いの席にて 02
「そんな不純な動機での結婚なんて、認めないと言ったはずですよっ!」
オレの雇い主兼、結婚反対派のステラがキッパリと言い切った。
普段は王族や貴族相手に萎縮気味だけど、なぜかこの話題になるとステラは態度を急変させるのだ。
てか、オレ自身も王族との結婚なんてする気もなければ、この土地を離れて王都へ行く気もないけど。
そもそもオレは、為政者や政治に携わる人間を快く思っていないのだ。
まあ、姫さまとトレノっち、それにアルトさん――それぞれ違うタイプの美女達だし、姫さまから提示された側室50人というのも、かなり魅力的ではあるけど……
「いいですかっ!? そもそも婚姻というのは、二人の愛を誓い合い、その愛を神に祝福していただく――」
「まあまあ、落ち着いて、小姑さん。そんな剣幕で眉間にシワを寄せては、可愛い顔が台無ですよ」
「誰が小姑ですかっ!? とゆうか今、小姑と書いてステラと読みましたねっ!?」
大人の余裕を見せつつ、からかうような笑みを見せるアルトさんへ、眉を吊り上げるステラ。
はぁ……また始まったか……
もはや恒例となりつつある討論会にため息をつく、オレとラーシュア。
と、そんなオレ達の口元に、箸で摘まれたカツがスーッと差し出された。
ラーシュアの前にカツを差し出したのは、爽やかスマイルを浮べたペド紳士。
まあ、コレは驚く事ではない。
しかし、オレの前にカツを差し出したのは、頬を赤くしてソッポを向いているトレノっちだった。
「ラーシュアさまに曇った顔は似合いません。コレを食べて元気を出して下さい」
「か、勘違いするなよ……最近、食事の量が増え過ぎてる気がするから、恵んでやるだけだからな……」
爽やかイケメンっぷりを発揮するレビンに、テンプレ的ツンデレっぷりを発揮するトレノっち。
しかし、今こんな事をすれば、火に油を注ぐ結果になるワケで――
「てぇーーっ、トレノさんっ!? なにシズトさんに『あ~ん』しようなんて、羨まけしからん事してるんですかっ!? ラーシュアちゃんの方はいいですけど」
「そうじゃっ! 抜け駆けは許さんぞ、トレノッ!! ラーシュアとレビン公がくっつくのは別に構わんが」
「なんとっ! シルビア王女様から、直々にお許しを頂けるとは……コレでわたし達の仲は王族公認という事ですね、ラーシュアさま」
「おい、お主ら……いくら御仏の化身と言われた温厚なワシでも怒るぞ」
「怒ったお顔も――いえ、怒った顔の方が魅力的です。ラーシュ、ぐはっ!!」
御仏の化身|(?)であるラーシュアに、ドMペド紳士のレビンまで参戦し、討論会が闘論会へと変わって行く。
はぁ~、三人で静かに賄いを食っていた頃が懐かしい……




