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戦乱の異世界で、◯◯◯は今日も△気に□□□中!!  作者: 宇都宮かずし
『戦乱の異世界で、シスコン陰陽師は今日も健気に妹溺愛中!!』編第一部 元暗殺者のシスコン陰陽師。勇者になって世界を救う!?
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エピローグ①

 さて、ここで少し後日談を語っておこう。


 怪我を強引に治癒しながら、霊力も限界を超える勢いで行使しつつ戦った、明那と覚醒魔王の二連戦。

 正直、3、4日は目が覚めなくてもおかしくないくらい、心身へ負担を掛かけた戦いだった。


 とはいえ、そこはマナが豊富なこの異世界。覚醒魔王がいなくなった事でマナの汚染も解消され、オレも明那も翌日の朝には霊力完全回復で目を覚ましたのだった。

 ホント、高濃度なマナ様々である。


 しかし、オレ達の眠っていたその半日ちょっとの間にも色々あって、状況はかなりの混乱状態だったらしい。


 まず、観戦席のアチコチから、隠れてオレ達の戦いを盗み見ていた間者(スパイ)達。

 彼らもオレ達が勝つとは思っていなかったようで、覚醒魔王が闘技場外へと出て王国軍との戦闘に入ったら、その混乱に乗じて逃走するつもりでいたらしい。


 まあ、結果としてその混乱は起きず、彼らの逃走は失敗。ほとんどのスパイが闘技場を完全包囲していた王国軍の手に落ちたのだ。


 ただ、ここで問題なのは"全てのスパイが"ではなく"ほとんどのスパイが"という点である。


 対覚醒魔王戦用に組織された王国軍。

 完全包囲されたスパイの相手などには、オーバーキル気味の過剰戦力だ。


 しかし、それだけの戦力を以ってしても、その包囲網を突破した者がいたのである。


 逃走に成功したのは女のダークエルフ。リザードマンと女ダークエルフという、異色な二人組スパイの片割れで、リザードマンが王国軍へ向けて単身特攻をかけ、取り囲まれた所で大爆発と共に自爆。その混乱に乗じてダークエルフは逃走したのだ。


 情報が錯綜しているようだが、どうやらその女ダークエルフは南東の方角。サウラント王国方面へと逃走したのだけは間違いないようである。


 また、王国軍に包囲され、投降するか自刃するかの二択を迫られる形となった残りのスパイ達。

 とはいえ、国は違えどスパイはスパイ。どこの国のスパイであっても、任務と自分の生命(いのち)(はかり)にかければ、任務に重きを置くのが彼らである。


 投降、そして捕縛される事を(よし)しとせず、ほとんどの者が自刃を選び、実際に確保出来たのは数人らしい。


 まっ、同じ状況ならオレも明那も自刃を選ぶだろうし、数人でもスパイを生きた状態で確保できたなら御の字だろう。


 次いで、肝心の覚醒魔王についての調べはと言えばだ。


 まず、オレと明那の試合中。ビクトール先輩が寝かされていたという医務室のベッドから大量出血の跡が見つかった。

 そして、シーツに広がる血痕の状況から出血は左脇腹――そう、魔琥珀が埋め込まれていた箇所であると断定された。


 加えて、ビクトール先輩が寝かされていた医務室では校医の女性が一人、更に医務室周辺へ配置されていた警備兵が数人殺されていたそうだ。


 状況証拠的に、ビクトール先輩は医務室で寝ているところを襲われ、左脇腹へ魔琥珀を埋め込まれたと見て間違いないないだろう。


 そして、殺された校医や警備兵の致命傷は、刃物で急所を一突きにされたものだという。

 ただ、校医は傷口の形状から、凶器はナイフのような短い直刀。対して警備兵の傷口の形状がシャムシールのような曲刀と見られる事から、犯行は二人以上と推測されている。


 今も現場検証と、遺留品の捜索をしているようだが……


 まあ、そこは文明が中世レベルの異世界。足跡や指紋の採取。血液鑑定やDNA鑑定などの科学捜索から犯人を割り出すなんて事が出来るはずもなく、捜索はかなり難航しそうである。


 強いて日本の現代技術より秀でている点を上げるとするなら、残留魔力の鑑定を使った捜索法があるという事だろう。


 特に魔力の波長や波形とは、指紋と同様に全く同じ物はないと言われている。

 しかも、その魔力の波長や波形というのは髪の毛などの遺留物や血痕、はたまた衣服や装飾品に染み付いた残留魔力からも読み取れると言うのだ。


 とはいえ、読み取るのはあくまで機械ではなく人間であり、結果はその鑑定人の感覚である。


 なので、ほぼ100%の精度を叩き出す指紋照合やDNA鑑定と異なり。100人の容疑者がいれば、それを30人程度に絞り込めるという程度のものだそうだ。

 正直、証拠能力としては、かなり微妙なところである。


 ただ、それでも調査報告の中に一つ気になる部分があった。


 ビクトール先輩が覚醒魔王となったあの日。エルラー家から使用人の女性――ビクトール先輩付きのメイドが一人、姿を消したと言うのだ。


 まるで存在自体を隠蔽するかのように、全ての持ち物ごと綺麗に消え去ったという女性。


 しかし、ビクトール先輩の部屋から彼女の物と思われる髪の毛が採取され、その魔力波長が医務室に落ちていた髪の毛の波長と合致したそうなのだ。


 そして自刃したスパイや捕縛されたスパイの中には、その髪の毛と同質の魔力波長を持つ者はいないとの事。

 つまり、唯一逃走に成功した女ダークエルフというのはビクトール先輩付きのメイドと同一人物であり、覚醒魔王事件の実行犯である可能性があるという事だ。


 特に、コチラの世界には容姿を誤認させる魔道具なんかがあり、大きな地下組織では、容姿や種族を偽って潜入や工作活動を行うなんていうのはよくある事らしいし……


「とりあえず、現在の捜索状況はこんな感じですわ」


 王宮の中にある応接室の一室。

 紅茶を片手に話を聞いていたオレと明那。そして、その対面に座るソフィアが調査報告書から視線を上げ、真剣な眼差しをオレ達の方へと向けてきた。


 そう、まるで見てきたように語っていたが、気を失っていたオレ達が事の顛末など知る由もなく。単に、ソフィアから調査の報告を聞いていただけなのだ。


 ちなみに、王宮の応接室。しかも、王族であるソフィアとの対談だ。

 いくら勇者とはいえ、武器の携帯は当然NG。しかるに、村正は扉の前にいる護衛の騎士に預けてある。


「なるほどねぇ……まあ、考え方次第かもしれないけど、そのダークエルフさんが逃走に成功してくれたのは、むしろラッキーだったのかもしれないね」

「えっ!?」


 明那がクッキーへと手を伸ばしながら呟いた言葉に、ソフィアとその後ろへ控えていたメイド姉妹が目を丸くした。


 まあ、多少捻くれた考え方かもしれんが、オレも明那と同意見である。


「だって、下手に自刃なんてされてたら、黒幕に繋がる糸もそこで切れちゃったかもしれないし」

「そして取り逃がしてしまったからこそ、逃げた彼女の痕跡を追う事で黒幕へと繋がる手掛かりが掴めるかもしれないしな」


 つまり、あえて敵を泳がせ、更なる情報を収集する手法である。


「なるほど……そういう考え方もあるのですね。勉強になります」

「ただ、他国にまで逃げられたらそれも難しくなるからな。出来れば国内にいるうちに捕捉。あとは付かず離れずで情報収集するのがベターだな」


 オレ達が口にした案に真顔で頷き、生真面目にメモを取る三人。

 まあ、わざわざメモなど取らんでも、こんなのは諜報機関にいれば基本中の基本な考え方だ。

 この国の諜報機関がよほど無能でもない限り、もう既に動いてると思うけどな。


「次にコレからの事ですが――」


 ひと仕切りメモを取り終わった所で、次の案件へと話題を進めるソフィア。


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