第三十五章 決勝直前の控え室②
「んっ……あっ、あ……んっ、んあっ……」
もう一つの控え室。
明那の控え室とは闘技場を挟んで反対側にある部屋。
人避けと防音の結界が張られた室内には、怪我などの治療用に置かれた簡易なベッドへ横たわるエウルの艶めかしい声が響いていた……
「どうだ、エウル? ここは気持ちいいか?」
「っん……そ、そこ……気持ち……いい……」
紅潮し、恍惚とした顔で、オレの指の動きへ無防備に身を任せるエウル。
オレは強弱の抑揚を心がけ、エウルの反応からツボを探る様に指を動かしていた。
そして――
「まっ、これだけ解れれば、そろそろいいだろ……」
身体から力が抜け切り、快楽に身を委ね、されるがままのエウル……
全身が火照る様に熱くなったエウルの様子を見て、オレは次のステップ――いや、最終ステップへと移行する。
「えっ? な、なにを……? い、いたっ!? うぐっ!! ちょ、まっ、痛い痛いっ!! がっ……ぐがああぁぁぁ……」
横たわるエウルの身体がビクンッと大きく跳ねる。そして、今まで感じた事の無い痛みに目と口を大きく開き、そのまま身体を大きくエビ反らせた。
「あっ……あっ、あっ……ちょ!? い、いたっ……すぎ……あっ、んっ、んあ……わ、たし、初めてなんだから、あんっ……もっと……優しく、んん……」
「大丈夫だ。すぐに気持ちよくなる」
「そ、そんな……事、言った……ってぇ……あっ、ああっ……」
薄っすらと涙が滲む弱々しい瞳を向けて懇願するエウルの言葉をスルーして、更に行為を続けるオレ。
「ほらっ! 力抜いて、もっと足上げろっ!」
「んあっ!! そ、そこ……ダ、ダメ……ダメェ……んんっ、ああっ!!」
痛みと快楽の狭間で身を攀じらせるエウルの艶めかしい姿に興が乗り、オレは動きを徐々に速めていく。
「ここかぁ? ここがええのんかぁ?」
「だ、だから! ひゃあっ! そっ、そこっ、よわ! あっあっ、あっ! ダメ! ホントッ! ダメダメダメダメッ!! あっ!! あっあっああぁっ! ああああぁぁぁあぁぁーーーっ!!」
絶叫を上げ、もう一度身体を大きく仰け反らせると、エウルはそのまま足をピクピクと痙攣させながら、ぐったりとベッドへうつ伏せに倒れ込んだ。
虚ろな瞳に涙を浮かべ、浅く速い呼気を繰り返ししてる彼女の様子に目を向けながら、ベッド横に置かれていた簡易な椅子に腰を下ろすオレ。
「まっ、こんなもんだろ」
「オ、オニィ……痛くしないって言ってたのに……」
やり切ったとばかりに清々しく額の汗を拭うオレに、涙の浮かぶジト目を向けながらエウルは唇を尖らせる。
しかし、そんなエウルの上げる非難の言葉を、オレはバッサリと切り捨てた。
「トレーニング後のアフターケアを疎かにしていたお前が悪い」
そう、アフターケア。
極々一部、心の汚れた方々はいかがわしい勘違いをしているかもしれないが、先程までの行為はいわゆるアフターケア。練習と試合で疲労した筋肉のマッサージであり、決していかがわしい行為ではない。
「アフターケアなんて言われても知らないわよ、そんなの……」
とはいえ、リンパの流れを良くしたり、乳酸の溜まりを改善して、疲労の回復に繋げるなどといった科学的なケアが認知されていないこの世界。
疲れなんていうのは、寝てれば取れるっ!!
といった考え方が一般的で、トレーニング後にアフターケアをするなどといった概念は存在していないのだ。
ただ、エウルのような速さと手数を武器に戦うタイプは、特に筋肉へ負荷が掛かりやすい。
それでいて、マッサージどころかまともに入浴もせずにサッとシャワーを済ませ、そのままベッドへバタンキュー。
なんて生活をしていたのだ。筋肉疲労が溜まって当然である。
えっ? 何で入浴せず、シャワーで済ませているなんて事を知ってるのかって?
……
…………
………………
細けぇこたぁ、いいんだよっ!!
と、とにかくっ!
エウルの一回戦と二回戦を観た限り、彼女本来のパフォーマンスが全く出ていないようだったので、わざわざ出張マッサージに来てやったというワケなのだ。
「どうだ? 北○神拳に勝るとも劣らない、人体の秘孔を知り尽くした土御門家秘伝のマッサージは? 身体が軽くなっただろう?」
「その、ホクトシ○ケンっていうのが何かは知らないけど……軽くなり過ぎて、フワフワしてる感じがするわ……」
ムクリと起き上がりベッドへ腰を掛けると、エウルは身体の状態を確かめるように、首や肩を回し始めた。
「それに……腰が抜けたみたいになってて、足に上手く力が入らないんだけど……?」
「それは、時間が経てば回復する。幸い、決勝戦まで結構時間があるからな」
午前中最後の試合である、出場者トーナメントの決勝戦。
しかし、明那とエウルの試合――特に明那の試合が、想定よりも早く終わり過ぎ、午前中最後に予定していた決勝戦までの時間がかなり空いてしまったのだ。
そのため、当初は30分を予定していた準決勝第二試合と決勝戦のインターバルが、急遽60分に変更されたのである。
まっ、明那の第二、第三試合はほぼ瞬殺だったし、エウルは三試合とも全部、三分掛からずに終わったしな。




