第二十九章 聖女様式ブートキャンプ③
どう見てもサイズが小さくピチピチな上、へそ出しになっている半袖体操着と、すでに日本では絶滅危惧種となっているブルマーを穿いたサンディ先輩。
「何って……? アキラ様が考案された体操着という物ではありませんか? ちょうど、試作品が出来上がっていたので着てみたのですがどうでしょうか?」
サンディ先輩の口から出た言葉を聞いた瞬間、明那の目がジト目に変わりオレのピュアなハートへと突き刺さる。
「いや、待て! 誤解だ、明那!」
「まだ何も言ってないんだけど……」
「コレはだなっ、そろそろ学生指定の運動着のデザインを一新しようとかいう話があってだな。日本の学生はどんな格好で運動をしているのかと聞かれた時に幾つか教えてやった内の一つで、決してブルマ好きとかいうマニアックな趣味がオレにあるわけでは――」
「そうそう、アキラ様。もうすぐアキラ様一押しの『きゅうしきすくみず』という、水練用衣装の試作品も出来上がるので、楽しみにしていて下さい」
「……………………」
オレの賢明な弁明の途中。火へ油を注ぐようなサンディ先輩の発言で、オレは二の句が継げなくなり固まってしまった。
そして、そんなオレを見る明那の目も、ジト目から道端に落ちている生ゴミを見るような目へと変化していったのだった。
ちなみに、固まるオレの隣では美人主従が――
「きゅうしき……旧式かしら? でも、なぜわざわざ古いデザインのものを…?」
「いえ、ソフィアさま。もしかしたら、九式――九番目の武装という意味かもしれません」
「なるほど。確かに、その可能性もありますわね」
などと、真顔で論議していた。
でも、残念ながらそれは"九式"ではなく"旧式"が正解です。
日本には『温故知新』と言って、古きを温め新しきを知る。という尊い言葉があるのだよ。
「まあ、その件は今夜にでも家族法廷を開くとして――」
ま、また、アレをやるのか……?
「サンディ先輩? 訓練に参加するのなら、早くコッチに整列して下さい」
「私も参加していいのですかっ!?」
「ええ、大歓迎です。それに、もし訓練に最後まで立っていられたら、お兄ちゃんにファッ○してもいいです」
明那の誘いに、パッと表情を輝かせるサンディ先輩。そして、サンディ先輩の輝く笑みに、負けず劣らずのキラキラとした笑みを浮かべる明那。
しかしオレは、その笑みの裏にドス黒い笑みが浮かんでいるのを見逃さなかった。
とゆうか、なぜオレが"受け"になっている?
「では、よろしくお願いしますぁ~す♪」
喜び勇んで訓練生の中へと入って行くサンディ先輩。その、今にもスキップを始めそうな浮かれた背中に、オレはため息をついて肩を竦めた。
「なんと愚かなのでしょう……あのような見え見えの罠に引っ掛けるとは……」
「全くです。あれで学生会の会長とは……先日のビクトール様といいサンディ様といい……この学園のレベルも落ちたものです」
オレと同じように、肩を竦めるソフィアとアリアさん。
いくら魔道科でトップレベルの成績とはいえ、宮廷魔導師志望のサンディ先輩が明那の海兵隊式訓練に付いていけるとは到底思えない。
それよりも何よりも――
巨乳を目の仇にしている明那である。サンディ先輩へ八つ当たりをしようという意志が、ありありと伝わって来るのだ。
「では、ほほえみ雌豚も加わった所で、訓練を再開するっ!!」
「メ、メス……ぶたぁ?」
「私から話しかけられた時以外は口を開くなっ! そして口を開く時には、言葉の前と後ろへ"サー"と言えっ! 返事は、サーイエッサーだっ、! 分かったかっ、雌豚ぁーっ!?」
「サ、サー、イエッサ……?」
「ふざけるなっ! もっと腹から声を出せっ! タマ落としたかっ!?」
「サーイエッサーッ!!」
いや、サンディ先輩にタマは元からないだろ?
「遅れて来た貴様の為に、もう一度説明してやろう。この訓練の場では、貴様は人間ではない、雌豚だっ! いや、それ以下だっ! 大陸で最も劣った生き物だっ! パパの精○がシーツのシミになり、ママのおマ○コに残ったカスがお前だ、雌豚」
「サ、サー、イエッサー……」
「だが、私は厳しいが平等だ。差別はしない。貴族の位、学園での地位、年齢の差、全て平等に価値がないっ! まして貴様の乳など所詮はただの脂肪の塊。オークの腹に付いた贅肉と同じっ! 両生類のク○をかき集めた値打ちしかないっ! ただのそびえ立つク○の山だっ!!」
顔を青ざめさせ、すでに半泣き状態のサンディ先輩。
伯爵家ご令嬢として、蝶よ花よと育てられた彼女だ。ここまで罵倒されるなど初めての経験だろう。
しかしオレの隣では、そんな明那の罵倒にソフィアが満足そうに大きく頷いていた。
「では、自分の身の程を弁えた所で、訓練を再開するぞっ、ほほえみ雌豚」
「サァ……イエッサ……」
「ふざけるなっ! もっと大声を出せっ! その目障りな乳房を斬り落として、セイウチのケ○の穴にねじ込むぞっ!!」
「サーイエッサーッ!!」
「もっと大きな声だ! 腹から声を出せっ! 出来なければ目玉くり抜いて、頭蓋骨でファッ○してやるぞっ!!」
「サーイエッサァァァーーッ!!!!」
「よしっ! やれば出来るじゃないか、雌豚ぁ!!」
半泣き状態で半ばヤケクソ気味に声を張り上げ、木刀を振り上げるサンディ先輩に、煽るような笑みを浮かべる明那。
てゆうか……ウチの妹は、ここまで巨乳嫌いを拗らせていたのか……?
気付いてやれなくてごめんな、明那。今度、ドワーフの巨匠に会ったら、なんとか豊胸マシーンを作れないか相談してやるから。
「貴様らもだっ、ウジ虫どもっ! とっとと木刀を構えろーっ!!」
「「「サーイエッサーッ!!」」」
「では、素振り再開だっー!!」
「「「サーイエッサーーーッ!!」」」
オレが不憫な妹に心の中で一筋の涙を流すと同時に、聖女様によるブートキャンプが再開されたのだった。




