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戦乱の異世界で、◯◯◯は今日も△気に□□□中!!  作者: 宇都宮かずし
『戦乱の異世界で、シスコン陰陽師は今日も健気に妹溺愛中!!』編第一部 元暗殺者のシスコン陰陽師。勇者になって世界を救う!?
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第二十六章 叶う二つの夢②

「なっ!?」


 その直後、噴水のように噴き出した血飛沫に、男の表情が歪んだ笑みから驚愕へと一変する。


 そう、側近二人の頸動脈から噴き出す、真っ赤な鮮血に……


 舞い上がった鮮血が緋色の雨となって降り注ぐ中。力なく崩れ落ちる大男達の先では、上半身を失ったオレ達の下半身がスーッと消えていき、真っ二つされた人型の呪符がひらひらと落ちていく。


「な、何が……?」

「バカめ、それは残像だ」

「はいっ!?」


 掠れる声を絞り出し、怯えるように後ずさる背中へ向けて明那が中二病的セリフをぶつけると、スキンヘッドは慌てて後ろへと振り返った。


「それも、言ってみたかったセリフか?」

「うん♪ また一つ、夢が叶いました」


 血の(したた)るクナイ。その黒光りする凶刃が握られた手を腰に当て、得意気(とくいげ)に胸を張る明那。


 まあ、オレにはそんな中二病的趣味はないけど――


 日本での仕事――暗殺は、本当に裏仕事。

 目標(ターゲット)を前にして口上を言ったり、決めゼリフを言ったりする機会なんてなかったからなぁ。気持ちは分からなくもない。


 てゆうか、今の技――神道夢幻流、一の舞い(いちのまい)陽炎(かげろう)』という剣技。


 確かに残像には違いないけど、無論それだけではないのだ。残像と忍者なんかが使う空蝉の術を併せた技で、神道夢幻流の中でも初歩中の初歩の技だ。


 敵の攻撃を受ける際、残像へ自身の姿をした式神を重ねながら攻撃を躱し、本体はそのまま気配を消して相手の死角へと回り込むという技である。


 この技の最大のポイントは、一切の殺気、そして気配を断つ事にある。

 一切の殺気を断ち、仮に網膜へその姿が写っていても、それを人と認識されないレベルまで気配を消せないと、この技は成功しないのだ。


 更にスキンヘッドの死角へ入る際、明那は行き掛けの駄賃とばかりに大男と細身の男の頸動脈を斬りつけたのである。


「さて。夢を二つも叶えてくれたお礼に、おじさんは苦しまないよう、優しく殺してあげ、ぐえっ!?」


 クナイを構え、意気揚々と歩き出した明那の襟首を掴み引き止めるオレ。


「それはダメ」

「なんでさっ!?」

「言ったろ? 情報を聞き出すから、一人は残しとけって」


 特にこのスキンヘッドが盗賊団のお頭なら、情報を聞き出すにはちょうどいい。それに、ここで無理に殺さなくても、事情聴取が終われば間違いなく極刑になるだろうし。


 しかし、オレの言葉に明那はこれでもかと頬を膨らませて不満顔。


「むうぅぅ……じゃあ、ちょっとだけ。先っぽだけでいいから、ちょん斬ってもいいでしょ?」

「先っぽって……どこの先っぽだよ?」

「お兄ちゃん? それを女の子に言わせるのは、セクハラです」


 セクハラになるような所をちょん斬るもりだったのか、お前は?


 てゆうか――


「先っぽだけでも、そこをちょん斬ったら血が止まらなくて出血死するからダメ」

「ええぇぇ……」


 それに、いくら極悪非道の盗賊でも、その死に方は同じ男として忍びない。


「それともなにか? 斬ったあと、死なないようにお前が血止めの治癒術をかけるか?」

「だからお兄ちゃん? 女の子に、そんな所を触らせようとするのはセクハラだってばっ!」


 斬るのは良くて、治すのはセクハラなのか?

 お兄ちゃん、お前のセクハラ基準がどこにあるのか分からないよ。


「じゃあ、仕方ない。手足の先っぽならいいでしょ?」

「んん……まあ、そのくらいなら、いいか」

「やったっ!」


 クナイを構え、ネコ科の子供が無邪気に、そして残酷に獲物(おもちゃ)(もてあそ)ぶような笑みを浮かべ、ゆっくりとスキンヘッドの方へ振り向く明那。


 殺気を孕む無邪気な笑み――


 その無邪気な殺気は、数多の修羅場を潜り抜け、そして盗賊団のお頭まで登り詰めた男を簡単に恐怖の底へと叩き落としていた。


 完全に、明那の気に飲まれてるな……


 おそらく、スキンヘッドの男が今まで感じた事のない感覚。

 死の恐怖を超える恐怖……


 明那の笑みを前にして、スキンヘッドのズボンは股間に大きな染みが浮かび上がり、足元には水溜まりが出来ていた。


 その怯えようは、苦しまないように殺そうとしていた明那を止めてしまったオレに罵詈雑言を浴びせても許されるレベル。

 そして、もう冷静な判断など出来ないレベルだろう。


 その証拠に明那がゆっくりと歩き出すと、スキンヘッドの男は足を(もつ)れさせながら入り口の方へと走り出し始めた。


 何か考えがある訳でもなく、ただ本能に従った逃亡。

 そちらに逃げたのでは、仮に明那から逃げ切ったとしても50人の騎士候補生が待ち受けているのだ。状況が好転する要素など皆無である。


 まあ、明那から逃げられる可能性も皆無だけど。


(オン)!」


 明那が歩みを止め、指刀(しとう)を作った手を上げると、その背後に二つの小さな魔法陣が浮かび上がった。

 そして、その手を男の方へと振り下ろすと、魔法陣から二本の鎖が勢いよく伸びてい行く。


 走る男の両側を追い越すように伸びる鎖――


(ウン)!」


 次いで、明那が振り下ろした指刀をクルっと顔の前にかざすと、鎖は入り口へと繋がる通路を碁盤の目状に塞いでいった。


 完全に逃げ場を失い、挙動不審な程にキョロキョロと辺りを見回すスキンヘッドの男……


「くっくっくっ……逃さないよ、仔猫ちゃん」


 不敵な笑みを浮かべ、明那は再び歩みを進め始める。


 てゆうか、その(いか)ついおっさんの何処に、仔猫ちゃん要素があるんだ……?


 そんな事を思い、ヤレヤレと肩を竦めた時だった――


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