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戦乱の異世界で、◯◯◯は今日も△気に□□□中!!  作者: 宇都宮かずし
『戦乱の異世界で、『もと』ひきヲタ魔法少女は今日も吞気に冒険中!!』編 第一部 ホントに異世界来ちゃったのっ!?
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第19章 推理と謎解き 02

 とはいえ――


 へぇ~、さすが群れで狩りをするファングウルフさんだ。相手を追い駆ける者、逃げた先で待ち伏せする者、そして逃さないよう出口を塞ぐ者と、キッチリと役割分担が出来ている。


 その狩りの様子に感心しながら、私は狼さん達と初めて会った時の事を思い出してみる。


 そう、考えてみればクリスちゃん達が狼さんに襲われている時点から、そもそもおかしかったのだ。


 クリスちゃんが狼さん達に襲われていて、私が駆け付けそれを追い払う。その後、御者のおじさんと馬の埋葬。そして、街まで移動――この(かん)、あの道を誰一人として通らなかった。

 にも拘わらず、街壁前には入領審査の大行列。


 という事は、クリスちゃん達が襲われていた道は、今は使われていない裏道か旧道なのだと考えるのが自然だ。


 しかし、仮にもお貴族さまの馬車が、普段使いされていない危険な裏道や旧道と使うとかいえば、そんなリスクを犯す訳がない。

 つまり、本道を移動中、狼さん達に襲われ旧道の方へと追い込まれたのだろう。


 そして、人目(ひとめ)のつかない場所まで追い込んでから、馬を襲って馬車を停車させ、そして人間を……


 こんなに組織的な狩りが出来き、人間から見れば圧倒的な強さを持つファングウルフ。ましてや、あの時にはこの倍の数がいたのだ。そんな回りくどい事をするだろうか?


 いや、そもそも野生動物は、餌を狩る以外で他の生き物を殺すなんて事はしない。そして、弱そうな相手を狩るのが基本だ。


 こう言っては何だけど、入領審査で並んでいた馬車の殆どは、クリスちゃんの馬車よりも貧相な物だった。

 そんな中で、わざわざ豪華で強固に見える馬車を狩りの相手に選ぶ事自体、野生動物の狩りではあり得ないのだ。


 つまり、そこには人為的な意思が介入しているという事。


 おじいさんとハートさまが結託し、狼さん達に豪華な馬車を襲わせて、後からその荷物を回収(ネコババ)している――


 と言うのが、私の立てた推測だ。

 まっ、確かに確証はないけど、当たらずとも遠からずと言った所だとは思う。


 と、そんな事を考えているうちにも、狼さん達はハートさま達を部屋の隅へと追い込み、威嚇する様にその取り囲んでいた。


 低い唸り声を上げるファングウルフ達に怯え、身を竦ませるコワモテお兄さん達の中、恐怖で涙と鼻水を流しながら抱き合うハートさまとパイパおじいさん……


「ふむ。やはりワシには男色(BL)の素養は無いようじゃ。男共(オノコども)が集まり抱き合っている姿を見ても、ちっともときめかんわ」


 いや、さすがの私でも、あの汚い絵面じゃ腐った心は目を覚まさないよ……


 とはいえ、制圧は完了。あとは、ゆっくりとクリスちゃん達が来るのを待ちま――


「和沙っ、気を付けいっ! 窓の外のじゃっ!!」

「っ!?」


 タマモちゃんの叫びと同時に、背中を悪寒が突き抜ける。


 そして次の瞬間っ!!


 窓ガラスが甲高い音をたてて砕け散り、大きな人影が飛び込んで来た。


「狼さんっ! 下がってっ!!」


 私の、叫びにも似た指示の言葉。

 しかし、狼さん達が動き出すよりも早く、一匹の狼さんが――額にバッテン傷の付いた群れのリーダーが、喉元から真っ赤な鮮血を吹き出しながら、空中へと打ち上げられた。


「狼さんっ!!」


 私の絶叫に、『バキッ!』という天井へと激しく激突する嫌な音が重なる。そして、そのままの勢いで落下し、床へと叩きつけられる狼さん……


「みんなは下がってっ、早くっ!!」


 他の狼さん達に指示を出し、床に力なく倒れるリーダーへと駆け寄る私。


 パックリと一文字に切り裂かれた喉。とめどなく溢れる鮮血……


「くっ!?」


 私は両手で流れる血を押さえ込む様に傷口を塞ぎ、そこへ霊力を集中させる。


「思金っ! ヒーリングッ!!」

『御意っ!』


 授業で習った、ヒーリングという心霊治療の一種。霊力を使い傷口の細胞を活性化させ、傷口を塞いでいく術。


 多分、傷口を塞ぐ事は出来ると思うけど出血が酷い。正直、助かるかは五分五分くらいだろう……


「ほおう……いくら咄嗟に後ろへ跳んだとはいえ、俺の一撃を受けて、まだ首が胴に繋がっているとはなっ。さすがファングウルフだ」


 野太い声と粗野な物言い。

 私は、狼さんの傷口に手を当てたまま、声のする方を睨みつた。


「なんか、面白そうな事してるじゃねぇか? 俺もまぜろよ」


 そこには、2メートルはあろうかという大柄な傭兵風のおじさんが、その巨体に負けないくらいの大きな剣を担いで立っていた――

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