第6.5章 おまけのお話し(壱)
クリスちゃんから冒険者のお話しを聞く前日の夜。
タマモちゃんと日本に帰る方法を話し合っていた場面に、少しだけ戻ります。
ギャグ中心でエロ少々のおまけ話しです。苦手な方は、読み飛ばして頂いても問題ありません。
『それで、玉藻前。簡単に魔力を回復させると言っていますが、何か当てでもあるのですか?』
「ふっ、そのようなも――これほどにファンタジーな世界なのじゃ。魔力を回復させる秘薬なり秘宝の一つくらいあるであろうよ」
『随分と気楽に言ってくれますね』
「まっ、ワシと和沙の思い浮かべた世界とは、そんなご都合主義な世界じゃからのう」
思金の問いをいなすように、いたずらっぽい笑みを浮かべるタマモちゃん。
そういうふうに言われれば、確かにその通り。RPGゲームは、ストレスなくサクサクと進むモノに限る。ゲームバランスの狂ったムリゲーに燃えるほど、私はM属性を持ち合わせていないのだから。
「まっ、東のイーステリアは魔物の国らしいからのう。そちらに向かうのも一興じゃと思おておる。街の者共の話では、イーステリアとやらには、人の手の入っておらん遺跡などが多いと聞くしのう」
イーステリアに遺跡って……いつの間に、そんな情報を……?
てゆーか、それ以前に――
「ねぇ、タマモちゃん。ちょっと気になってたんだけど……いつの間に、この世界の言葉を覚えたの?」
そう、再会のインパクトが強すぎてそこまでは考えが至らなかったけど、初対面のクリスちゃん達と普通に話していたし。
「何を今更――」
呆れるよう肩を竦め、足を組み変えるタマモちゃん。そして、肌蹴た着物から伸びる白い足に、眉を顰める私。
てか、気をつけてよ……ただでさえ、着物を着崩して着てるんだから。私に百合の趣味はないし、タマモちゃんのパンチラなんて別に見たくもないよ。
「伊達に幾つもの国を渡り歩いておらんからのう。その土地の言葉なぞ、民の会話に耳を傾けながら、四半日も街を歩いておれば自然と覚えてしまうわ」
四半日? ああ、四分の一日って意味か……って、六時間で覚えちゃうのっ!?
『ワタシは、三時間でマスターしましたけどね』
そして、何故か張り合う思金……
もしかして、さっき言い負かされた事を根に持ってるのかな?
とはいえ、チミたち。
中学高校と六年間も英語の勉強をして、それでも殆ど英語が話せない日本の人々に謝りたまえ。
「さて、ワシはそろそろお暇しようかのう」
とりあえず、今夜の作戦会議は終了とばかりに席を立つタマモちゃん。
小柄な私に、長身のタマモちゃん……
ベッドに座る私の目の前に立たれると、ちょうど帯と肌蹴た着物、そしてそこから覗く太ももが目に入る訳で……
「タマモちゃんさぁ……その着物、もう少しどうにかならないの?」
「ん? どこかおかしいかの?」
「その、着物の合わせ目っ! 肌蹴り過ぎて、ちょっと動いただけで中身が見えちゃいそうじゃん!」
「なんじゃ、そんな事か……」
私の忠告に、タマモちゃんヤレヤレと肩を竦めた。
そんな事じゃないよっ! 一応レーティングは15禁にしているけど、良い子のみんなだって読んでいるかもしれないんだからっ!!
「しかし、こういうのは大人の都合で、捲れたり肌蹴たりせんもんなんじゃないのか?」
「それは、私やクリスちゃんみたいな清純派キャラの話っ! タマモちゃんは、どう見てもお色気キャラじゃんっ!!」
『だから、全裸を晒しておいて、どの口か清純派と――』
「うるさい、黙れ……次、その話題に触れたら、アンタを殺して私も死ぬ……」
『ぎ、御意……』
私にヤンデレな三白眼を向けられる思金。淡い光を放っていた勾玉から光が消え、気配を消すようにスリープモードへと移行した。
「じゃがな、和沙よ――」
しかし、そんな惨劇直前のやりとりを前にしても、顔色一つ変ずに淡々と口を開くタマモちゃん。
「やはりこの着物は、中身が見えたりなぞせんと思うぞ」
「何を根拠にそんな事を……」
「根拠か……根拠といえば、そうじゃのう――」
タマモちゃんは口元に手を当て、しばし考え込むと、ベッドに座る私の眼前まで進み出た。
「な、なに……?」
「いや、なに。こういうのは、論より証拠と言うじゃろ」
警戒するように訝し気な目を向ける私へ、タマモちゃんは含みのある笑みを浮かべる。
そして、おもむろに帯の下で肌蹴た着物の縁を掴むと――
「ほれっ」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~っ!!」
帯の下で着物の合わせ目を捲りながら、豪快に広げるタマモちゃん。そしてその、着物の下に隠されていたモノをいきなり眼前で露わにされ、私は悲鳴を上げながらベッドの上を後ずさった。
「オナゴ同士で、何をそんなに騒いでおる?」
「こ、ここここんなチョー至近距離で、いきなりそんなにモノ見せられたら、誰だって驚くっちゅーねんっ!!」
「ふんっ……これだから未通女娘は……」
「うるさい、うるさいっ! 処女で悪いかっ!!」
てゆーか、初経験どころか、彼氏すら出来たことないわっ! それどころかここ数年、男と手を繋いだ記憶すらないちゅーねんっ!!
「とはいえ、これで分かったであろう? この着物がこれ以上捲れたり肌蹴る事がないと」
た、確かに……
あれが捲れたり肌蹴たりして、その下が晒されたら大問題だ。もし万が一、謎の光や湯気のない状況で晒されそうになったら、私の身体を障害物にしてでも隠さなければならないっ!
そう、全ての男性読者を敵に回す事になっても……
リアルに穿いてないキャラ、タマモちゃん……恐ろしい子……