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戦乱の異世界で、◯◯◯は今日も△気に□□□中!!  作者: 宇都宮かずし
『戦乱の異世界で、『もと』ひきヲタ魔法少女は今日も吞気に冒険中!!』編 第一部 ホントに異世界来ちゃったのっ!?
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第6章 逃げ込んだ先―― 02

「まっ、過ぎた事をあれやこれや言うても仕方あるまいよ。それで、小娘よ。お主はこれからどうするつもりじゃ?」

「どうするって……」


 少々、強引な玉藻前の話題転換。とはいえ私も、このキツネさんの今後の身の振り方には興味がある。というか、知っておくべき重要事項である。


異世界(こっち)に来ちゃったものはしょうがないし、適当に生きて行くつもりだけど。異世界で成功するハウツー本は、たくさん読んでたしね。現代日本の知識があれば、そんな苦労する事なく生きていけるでしょう」

「はあぁ……このお気楽娘は……」


 やれやれとばかりに、大きくため息をつく玉藻前。


 お気楽娘とは失礼なっ!


「じゃあ、そういうアンタはどうするのよ?」

「ワシか? ワシは、日の本に帰る手立てを探すつもりじゃ」

「帰る手立てって……」


 そんなのあるの……?

 まっ、来れたんだから、帰る方法だってあるかもしれないしけど――


「まあ、こっちの邪魔をしなければ、好きにすればいいわ。それと、人に危害を加える様なら遠慮なく討伐するからね」

「お~ぉ、怖い怖い。じゃが、安心せい。ワシは元々穏健派。争いは好まぬ」


 お店の人を殺して食い逃げしようとしていたクセに、どの口が穏健派だなんて言うんだか……


「ときに小娘よ――」

「和沙……」

「なに?」

「私の名前っ! いい加減、その小娘ってぇのやめてくれる?」


 これでも、酸いも甘いも噛み分け、清も濁も併せ飲める大人のレディなのだから。


「だいたい、さっきは――クリスちゃん達の前では、名前で呼んでたでしょ? 何で戻ってるのよ?」

「ふむ……されば、お主もワシを『タマモちゃん』と呼んで貰おうか?」

「なんでさっ!?」

「なんでも何も、お主こそ天然小娘の前では、ワシをそう呼んでおったじゃろ?」


 そ、それは、アンタが従姉妹(いとこ)だなんてウソついたからでしょが……


「それに、生まれい出て数千年。タマモちゃんなどと呼ばれたのは、初めてじゃ。中々に気に入ったわ」

「クリスちゃんみたいな事、言ってんじゃないよ、まったく……」

「嫌なら、小娘のままじゃ。いや……小胸娘にするか」

「誰が小胸だっ!?」


 ぐぬぬぅ……少しばかり大きいと思って、図に乗ってくれちゃって。


『カズサ。このままでは話が進みませんし、キツネを相手の口喧嘩でカズサが勝てる見込みもありません』


 ぐぬぬぬぬぅ……確かに、対人スキルが決して高くない私が、性悪キツネに口で勝てるわけがない。


「ああっ、もうっ! 分かったよっ! タマモちゃんっ!! これでいいでしょっ!?」

「ふむ……では話を戻すとしようか」


 満足そうに上品な笑みを見せるタマモちゃん。

 てゆうか、戻すも何も、何の話してたか忘れちゃったよっ!


「ときに和沙よ――お主は、日の本に帰ろうとは思わんのか?」


 ああっ、確かそんな話だったね。とはいえ、日本にねぇ……


「特に帰りたいとは思わないかな……」

「な、なんと……」


 正直、日本には嫌な思い出が多すぎる。私の大き過ぎる霊力は、日本じゃあどうしたって異端扱いだ。

 ましてや、直近の危機である玉藻前の脅威が消えたなら尚更である。


 ただ逆に、魔法や精霊の存在が認知されているこの世界なら異端扱いされる事はない。

 可憐な魔法少女にとって、どっちの方が住みやすいかと言われれば、間違いなくこっちの世界の方だろう。


 しかし、私のそんな判断にタマモちゃんは驚き、目を丸くしていた。


「で、では和沙は……海賊王になる話や小学生探偵VS黒の組織の続きが気にならないと申すのか?」

「傾国の大妖怪が、なに俗っぽい事を言ってんのっ!?」

「それに、ゴルゴ30にグラスの仮面の最終回が見たいとは思わんのか?」

「ああ……ごめん。そっちは読んでない……」


 とゆうか、そっちは私の生きている内に終わる気がしない。


「まったく、情けない……こんなゲームもアニメもネットもない世界で満足するとは……お主は、引きこもりとして恥ずかしいとは思わんのか? ヒキニートとしての矜持はないのか?」

「ヒキニート言うなしっ! 引きこもりはあえて否定しないけど、とりあえずニートじゃなくて学生だったしっ!」


 てか、私……何で怒られてるの?


「そもそも、殺生石に封じられていたアンタが、何でそんな事に詳しいのよ?」

「封じられていたと言う言い方には少々異論があるが……まあ、封じられていたからこそじゃな」

「はぁあっ? 意味分かんないんですけど……?」


 タマモちゃんの言い(よう)に、私は訝しげに眉を顰める。


「ふむ、分からんか……? ワシとお主、根っこの所は似ていると思っておったのじゃがのう……」

「はあぁあっ!?」


 とんでも勘違い発言に、思わず声を上げ、勢いよく立ち上がる私。


「ちょっ!? 私とタマモちゃんのどこが似てるって言うのよっ!?」


 日本における魔物達の頂点にして、傾国の大妖怪。


 容姿に年齢、そして性格……

 私には、性別以外の共通点など全くと言っていい程に思い当たらない。どうしても似てると主張したいのなら、その目障りなおっぱいを半分でいいから寄越しやがれっ!


 人類の敵とも言うべき相手から似てるなどと言われ、怒りにも似た感情が湧き上がる私。

 しかし、そんな私のとは対照的に、タマモちゃんは座ったまま、冷ややかな瞳で私を見上げた。


「どこがと問われれば、人に忌み嫌われ内に篭っていた所かのう……」

「…………!?」


 的確に、一番触れて欲しくない所を突かれ言葉を失う私。


 目を逸していた事実――逃避していた現実。

 そう……似てると言われ、必要以上に反応してしまったのは、自分でも似ていると無自覚に認めてしまっていたから。そして、その現実から目を逸していたから……


「お主とワシ――逃げて内に篭った先が、同じだった言う事じゃ。まあ、殺生石の中にはインターネットは無かったが、ワシには千里眼があったからのう。観たいモノがあらば、適当に漫画喫茶やネットカフェを覗けば何処かで必ず観れておったわ。そうそう、続きが気になる漫画を、直接作者の部屋を覗いて生原稿で読んだ事もあったな」


 あっけらかんと話すタマモちゃん。


 突き付けられた現実のショックから立ち直り切れない私は、もう一度ベッドに座り直し、言葉を絞り出す様に問い掛ける。

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