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戦乱の異世界で、◯◯◯は今日も△気に□□□中!!  作者: 宇都宮かずし
『戦乱の異世界で、和食屋『桜花亭』は今日も元気に営業中!!』編第二部 桜の木の下で……
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第二十一章 コンテストのあとに…… 02

 とはいえ、失格になったからといって、家に帰ってふて寝をするわけにも行かず、その後はミラさん達警備隊の手伝いや裏方の仕事でこき使われたのだった。


 ただ、オレ達二チームが揃って失格となると、もう一つ大きな問題が出てくる。


 そう、酒場などで行われていた賭けである……


 ほぼ鉄板と言われていた、一番二番人気が揃って脱落したのだ。賭けは大荒れに荒れて、下手すると暴動が起こってもおかしくはない程だった。


 しかし、その大騒ぎは彼女のおかげで事なきを得た。

 あの、舞台の上をシルビアに向い、カチカチに緊張しまくって歩く修道服の少女。今コンテストの優勝者、コロナちゃんのおかげで。


 元々が温和な性格であるラフェスタの住民。優勝したのが修道院(コロナちゃん)チームであり、その賞金が修道院の戦災孤児に使われるのならばと、みな揃って溜飲を下げたのだ。


「しかし……五平餅(ごへいもち)とは考えたな……」

「五平餅ではない。あれは、味噌たんぽじゃ」


 どっちも似たようなもんだろう。


 五平餅――神道の祭祀で用いる『御弊(ごへい)』の形をしているところが名前の由来らしい。


 固めに炊いたうるち米を米粒が残る程度に潰し、串に挿して焼いた物。この時に、わらじ形にするのが五平餅で、ちくわの様に串へ巻きつけるのが、きりたんぽである。


 五平餅はタレを着けて焼くのだが、味噌や醤油ほか色々とバリエーションがある。

 対してきりたんぽは、焼いた物を串から外し、鍋の具材にするのが一般的である。ただ、この時に串から外さず、味噌タレを着けて焼いた物を味噌たんぽというそうだ。


 そういう意味では、確かに今回コロナちゃんが出した新メニューは味噌たんぽに近いかもしれない。


 いつもの串芋で屋台を出すつもりだったコロナちゃん。

 串芋も確かに美味しいが、連日の様に市場で屋台を出していた事もあり、どうしても目新しさと言う点でマイナスになってしまう。


 そこで昨夜、修道院に泊まったラーシュアの提案で、急遽味噌たんぽに変更したらしい。

 毎日のように市場で味噌ダレを着けた串芋の屋台を出していたコロナちゃんだ。串焼きに関しては、すでにベテランである。


 食欲をそそる焦げた味噌の香りに、外はサクッリ、中身はモチモチの食感。なにより、素朴にして健気で可憐な売り子さん。


 もし、オレ達が出ていたとしても、いい勝負をいていただろうし、充分に賞金圏内を狙えるモノだった。

 そういう意味では、ラーシュアの判断は良い判断だと言えるだろう。


 良い判断ではあるのだが……

 しかし一点だけ、どうしても腑に落ちない事もあった。


「で? 何処(どこ)までが、お前の計算なんだ? このマッチポンプは……?」


 オレはラーシュアを――いや、ラーシュアが持つ麻袋を横目で睨みながら問い掛ける。


 そう、賞金圏内を目指す為、そして屋台の売上を上げる為。お世話になっている修道院チームへ、新しいレシピを考案すると言うのはオレも賛成だ。

 そして、オレ達が失格になったとしても、代わりに修道院チームが優勝したのなら御の字であるし、負けて悔いなしである。


 しかし……しかしだっ!


 新レシピだけでなく、オレ達が失格となった原因である遠隔攻撃ステラへ教えたのもコイツであり、あまつさえ、そのラーシュアが酒場主催の賭けで修道院チームに大金を賭けていたとなると話は変わって来る。


 そう、ラーシュアの持つ麻袋とは、ほぼノーマークだった修道院チームが優勝した事により見事に大穴を当て、せしめた大金が入っているのだ。


「マッチポンプとは人聞きが悪いのう。コレは全て、神の思し召し(おぼしめし)じゃ」


 そう言って、嬉しそうに麻袋へ頬ずりをするラーシュア。

 とゆうか、お前も神の一人だろ? 太陽神にして、戦乱の鬼神さまよ。


「なんだ、こんな所にいたのか?」


 守銭奴神へジト目を向けていたオレの耳に届く、聞き覚えのある声。

 オレはジト目を止め、平静を装いつつ、その声の方へと振り返った。


「よう、お疲れさん。トレノ……っち?」

「トレノっち言うな」


 振り返った先にあったのは、貴族のご令嬢の如きドレスを纏うトレノっちの姿。


 薄く化粧を施した頬を膨らませた顔。そして、上品なドレス姿と普段のウェイトレス服や騎士甲冑姿とのギャップに思わず見蕩れて、頬を赤くするオレ……


 何故だろう……?

 スカートで言えば、ウェイトレス服の方がずっと短いし、露出度だってセパレートの騎士甲冑の方が高いはずなの、いでででで……


「おほんっ!」「こほん……」


 両サイドからステレオで聞こえる、ラーシュアとアルトさんの咳払い……

 ああ~、チミたちチミたち。分かってると思うけど、二人してオレの足を踏んでいるからね。


「こほん、こほん……と、ところでトレノっち。姫さまに付いてなくていいのか?」


 二人から生ゴミでも見る様な視線を受け、オレはそれを誤魔化す様にトレノっちへと話を振った。


「ん? ああ……この祭りは、この街が主催の催しだし、あまり王国直属の者が出しゃばるのも悪いからな。警備は街の警備隊に任せてある」


 ステージへと振り返り、壇上のシルビアへ目を向けるトレノっち。


 その視線の先には、ちょうど賞状と賞品の贈呈が終わり、ネコ耳巨乳の警備隊(ビキニアーマ)二人を引き連れ舞台袖へと向かうシルビアの姿が見て取れた。


 まっ、話を逸らす為に聞いてみただけで、今日のトレノっちは近衛騎士としてではなく、スペリント家の侯爵令嬢として祭りに参加する事は知ってたんだけどな。

 だから、本日の(よそお)いも甲冑ではなく、パーティードレスを纏ってるという訳だし。


 ちなみにステラはと言えば、表彰式の間だけ子供達を見ていて欲しいとコロナちゃんから頼まれ、今は舞台裏でガキ共の面倒を見ているはずである。


 さて、表彰式も終わり、これでB級グルメコンテストも一段落だ。

 河川敷に集まっていた人達がゾロゾロと桜並木の方へと移動して行くのを眺め、ホッとひと息をつきながら、笑みを浮かべるオレ。


 まっ、グルメコンテストは終わったが、桜祭り自体はまだ終わりではない。会場はこのまま開放して花見会場となるし、屋台もほとんどの店がそのまま営業するそうだ。


 更に桜の花は、魔道師と精霊魔術師の皆様が交代で一週間ほど開花を維持するそうなので、その期間が実質の桜祭り期間である。


 コレを期に、是非とも花見文化が根付いて欲しいものだ。


「とはいえ、ようやくコンテストも終わり。これで机仕事からも開放だ。んっんん~~っ……」


 目の前で大きく伸びをするトレノっち。

 と、同時に、大きく上下に揺れる、たわわに実った二つの果実、って痛い痛い……


 その揺れに釣られる様に、顔を上下に揺らしたオレの両足の甲へ再び激痛が走る。


「お、お疲れさん……トレノっちも慣れない仕事ばかりで、大変だったろう?」


 そして再び、全力で話を逸しにかかるオレ。


「まったくだ……どうも机仕事は肩が凝って性に合わん。温泉でも行って、ゆっくり休みたい気分だ……」


 コキコキと首を鳴らしながら、ため息混じりに愚痴をこぼす近衛騎士さま。


 いやいや、肩凝りの原因は机仕事じゃなくて、その大きな厶…………って、えっ?


「お、おい、トレノっち……」

「い、今……何と申した……?」


 トレノっちの口から出た、驚愕の言葉(ワード)に、目を見開き、言葉を詰まらせるオレとラーシュア。

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