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クリスマスパーティーは突然に

水樹と恋人関係になってからもう3か月が経とうとしていた


周囲には秘密にしているため、デートなんてとんでもないし、学校で顔を合わせて、寮でも顔を合わせて……という毎日の繰り返し


前と変わったことといえば



「結衣って…見てて飽きないんだよなー」


「なにそれ?褒められてる?」


「あぁ、飽きないくらい可愛いってことだから」


「なっ…!」


ふざけてこんなことを言ってくるようになった

水樹がふざけているとわかっていても、私は顔から火が出るくらい恥ずかしい


「あのね!そんなことばっか言ってるから、女の人が寄って来るんじゃないの?

自業自得よ!」


「こんなの、結衣以外に言うわけないだろ」


何でもないように言う水樹の言葉に私は言い返せず、赤面するしかない日々


たまには仕返しをしたいとも思うのだけれど、返り討ちを考えると怖くて出来なくなる



そんなある日の日曜日

朝、寒さで目が覚めた私はカーテンを開けて外の光景に驚いた


「積もってる…初雪だ!」


下を見ると、そこは一面の銀世界となっていた


朝からテンションの上がった私は、ベランダに出てせっせと雪をかき集めて…


「かわいいー」


雪だるまを作ってみた


そうだ、水樹にも自慢してやろう


そう思ってバケツに入れてベランダに置いておくことにした

絶対に、雪とか交通機関の遅れに繋がるとか言ってイライラしてそうだからね



そして夕方、大学から帰ってきた水樹が部屋に来た


「朝から雪とか最悪だよ

車が全然進まねーし」


「まぁまぁ、そんな水樹君に見せたいものがあるんだよ

これ見たら雪もいいなって思えるから」


ウキウキしてベランダからバケツを取り出す


「あ…。」


しかし残念なことにバケツの中の雪だるまはただの水と形を変えていた


せめて写真に撮っておけばよかった…


立ち尽くす私の元に水樹が寄ってきた


「なんだ?ただの水じゃん

こんなの見てどうするんだよ」


全然興味が無さそうにして見てくる


「これ…朝作った時にはかわいい雪だるまだったの!

石で目もつくってあげたし」


「沈んでるじゃねーか」


そうだけど!


まぁ仕方ないか…


捨てるしかなくて、またベランダに持って行こうとしたら、床を這っていたコードに足をとられた

そして…


「わっ!」


なんだかスローモーションで周りが見えた


おもいっきり転んだ私の手からはバケツが離れていき…


宙を舞う


そして


バシャーン


飛び出した水は見事に水樹を直撃した


コロンコロンと石が床に転がる


やってしまった…


「冷てっ!

おい、結衣!」


「わー、ごめんなさい!

わざとじゃないの!

タオルタオル」


慌ててタオルを持ってくると、水樹は濡れた服を脱いで上半身裸になっていた


「わっ、ちょ、ちょっと!

脱がないでよ」


「無茶言うなよ!

すっげー冷たいんだからな!」


あー、またこんな感じで1日が終わってしまう…

私が水樹を赤面させることができる日なんて訪れるのだろうか?


100年かかっても無理かもしれない



それからも水樹と過ごす平凡な日々が過ぎていったのだが、今日の私は機嫌が良い


寮にはツリーが飾られ、ピカピカと電飾が光っている


そんな、景色を見ながら登校する


最高じゃないか


12月24日

今日から冬休みで、クリスマスイブ!

特に予定がある訳じゃないけど、楽しい気分になる


「お姉さまはクリスマスをどう過ごされるのですか?」


「んー…そういえば何も考えてないや」


そっか…

普通のカップルはクリスマスといえば一大イベントなのだろうが、水樹とは何の話もしていない


特別何かするっていうのも想像出来ないし…


いつものように部屋で他愛もない話をして過ごすのだうか、というか、水樹は寮にいるのだろうか?


「七海はお友達とクリスマスパーティーをするんですよ

よかったらお姉さまも一緒にいかがですか?」


「気持ちだけでうれしいよ」


さすがにそこに参加する訳にはいかないでしょ


それに多分、一般の高校生がするような友達数人が集まってご飯やケーキを食べて…なんて規模のものじゃないはず


どこかのホテルを借りて、数えきれない程の人が来て、一流シェフが作ったディナーを食べる

そんな本格的なパーティーなんだろう


私が行っても浮いてしまう


もしかしたら今年も、1人寂しく会長室で仕事をしているのかもしれない



「さて、そろそろ今年の仕事は終わりにしようか」


「やったー!」


「そんなこと言って、会長はまた冬休みもこっそり1人で仕事進めるつもりでしょう?

今年こそはしっかり休んで下さいね」


「あ…はい

気を付けます」


深雪に注意をされて、今年の生徒会の活動は終了した



そして、結局その日は寮に帰っても水樹はいなくて…25日が来た


何をしよう?

部屋にいては世間がクリスマスムードに染まっていることなど全くわからないため、ただの平日のように思ってしまう



そんなふうに考えていると、部屋のドアが開いた


「今日の夜、空いてるか?

急遽クリスマスパーティーに参加しろってじじいから言われて、絶対面倒なやつだから断ったんだけどしつこくてさ


だから結衣も連れて行くことを条件に参加を承諾した」


なんで勝手に条件に出されてんの!


「それってあれでしょ?

お金持ちの人ばっかりが集まって、パーティーの裏では仕事の駆け引きなんかが行われるっていう…」


「まぁな

俺も基本的にそんなパーティーなんかには参加しないんだけど、じじいがどうしてもって言うから今回だけって約束だ


しかもこのパーティー、お金持ちっていってもトップクラスしか来ないらしいぞ」


余計に私が行ったら駄目じゃんか

絶対に嫌だよ、笑われるだけだし

それに撫子学園の学生がいたらどうすんのよ!


「行かないよ」


「残念ながらその選択肢はないぞ


もうドレスも用意してるし


大体結衣を隣に置いておかないと、知らない女が寄って来るだろ?


それとも、結衣の知らないところで大好きな彼氏がお嬢様達に囲まれててもいいのか?」


なんでそんな不安をあおるようなことを言うのよ!

ズルいじゃない!




そしてその不安に勝てなかった私は気がつけば、目の前にそびえ立つ大きなホテルを見上げていた


「やっぱ無理かも」


「今さら何言ってるんだよ

行くぞ」


そう言われて入っていくと、1人の女の人が待っていた


「お待ちしておりました

さ、結衣様はこちらです」


「え、え?」


一体どこに連れていかれるのかと、女の人と水樹を交互に見る


「安心しろ

槙島家の使用人だ」


それはわかったけど!

私はどこに連れて行かれるのよ!


キョロキョロとしていると、奥の個室に通され鏡の前に座らされた


「メイクと髪のセットをしていきますね」


そう言われると、あっという間に鏡の中の自分が整えられていく


「次はこちらのドレスにお着替えください」


「え…」


そこにあったのは白とピンクの丈の短いドレス

すごく可愛いんだけど、これを私が着るの?

いや、それはさすがに…


「時間がありませんから


きっと水樹様をドキッとさせられますよ」


「はは、笑われないといいですけど…」


これを着て人前に出ていいんだろうか、と思いながらドレスを着てみた


やっぱ短いって!

肩もでてるし!


「水樹様がお待ちですよ

どうぞ」


え、待ってよ

心の準備が全く出来てない!


私はどうすることもできず、開かれる扉の前にただ立ちつくしていた


扉が開かれると共に見えてきたのは、紺色のスーツに身を包んだ水樹の姿


さすが…

着こなしている


これぞ本物のお金持ちと感じさせるようなオーラ

なんだかキラキラして見える


一方私は…

水樹に何を言われるかとドキドキしていた


サッと上から下まで見ると

「悪くない」

と一言


え、それはどうなんですか?

悪くもないけど、良くもないってこと?

まぁ、自分でもそこまでの高評価が出るなんて思ってないからいいんだけどさ


「行くか」


いつもとは違う水樹に胸の高鳴りを抑えながら、腕を組んで会場までを進む


普段はヒールの高い靴なんて履かないから、バランスをとりながら水樹についていこうと必死で歩いていると、それに気づいた水樹はバカにしたように笑いながらも、歩幅を小さくしてくれた


そんな優しさに、私は心臓を掴まれたような気持ちになる



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