プロローグ
深海って、暗くて深くて泳いでいる魚も怖くて苦手だったんです。
でも、そういった環境で育った魚達にとっちゃぁそれが当たり前で
暗い中でもどこかに光をもって必死に生きてるんだと気付くとなんだか感動を覚えたんです。
深海は海底だけでなく奥が深い‼…と……(笑
月明かりに照らされた漆黒の海は夜風に揺らされ踊り出す。
辺りは静まり返り生物は姿一つ見せない。
僕はどうして此処に立っているのか…一体何をしているのか…
浜辺の水際、少年は一人佇んでいた。
半分程開いた目が見つめるのは、邪悪な暗い雲に見え隠れする満月だった。
時折大きな波が来れば足首までが水に染みる。
冷たい自然が頬を撫で眠気を吹き飛ばした。
「綺麗だよね…。こんな日に自死するなんてとんだ贅沢だと思わない?」
突然の背後からの声掛けに雅は驚いて振り返った。声を掛けたのはスーツ姿だがどこか幼い顔立ちをした青年だった。青年は先程雅が見つめていた満月を見た。
そして雅に視線を戻すと、手を伸ばし、彼の腕を引いた。
徐々に深い暗闇へと向かっていた足が、一気に戻される。
僕はここから始まった。
今思うととても幸せだった、とても不思議な出発点へかえる為の道筋。