事件
「ヤダ!!無いじゃない!」
母の声が部屋中に響いた。
「どうしたんだよ。何が無いんだよ?」
突然大声を上げた母にたいして不思議そうに尋ねる父。
それは、私が小学校五年生の時の出来事だった。
私の家は、父・母・兄の四人家族。
父は、趣味が仕事といってもいいくらい土日も休まず会社へ出勤して行く人だった。
その為、家族でどこかに出掛けた記憶はほとんど無い。
私は、そんな父でも家族で一番スキだった。
母は、もともと専業主婦をしていたが兄が中学に入学すると同時にパートを始めた。
母も、土日もパートに出ていたので家に家族が揃うのは夕方〜夜にかけてだった。
兄は、私と2個離れている。私とは違って、性格的に真面目だった。
学校帰りも寄り道はしないで直帰するような子供だった。
私は…よくわからない。
「無いのよ。ちゃんとお財布に四万入れておいたのにないの…」
母は慌ててグチャグチャになるまで探した。
「本当に入れておいたのか??間違ってるんじゃないのか。」
父が何を言っても、母はそれどこじゃないらしい。
その様子を見ている私。
「かなは?」
母が小声で父に尋ねた。
父(…?)
母が私のとこに来て聞いた。
「かな、お母さんのお財布いじった??お母さんがお仕事してる時、誰かおうちに来た??」
首を横に振るだけの私。
「そう…。じゃあお兄ちゃんが帰ってきたら、お兄ちゃんにも聞いてみるね。」
そう言って母は、居間に居る父の方へ行った。
この時私は、小学校五年生ながらにも自分が疑われているのでは??と不安が過ぎった。