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ベターな出会いは、毒フラグ

―高校入学の日。


俺は春風に新たな生活の始まりを感じながら、桜舞う並木道を…




「うおおぉぉぉ、遅刻だあぁぁぁ!!!」



暑苦しく走っていた。




「くそっ初日からこんなギリギリなんて最悪だ!でもよ、時計の7:20と8:20って似てると思わねーか!?思わねーよな!!」



とか誰に言うでもなく叫んでいると、学校が見えてきた。



「よしっ、もうちょいだ!うおおぉぉぉ!!」





――さぁ、ここでこの時点での状況を整理しようと思う。


~{華麗なる解説}~

・このとき俺は走っていた。(with食パン)

・目の前には曲がり角があった




さぁ!この条件だけでもはや定番のシチュエーションが頭に浮かんだのは俺だけではないはずだ!



パンをくわえて~、運命の人と~、曲がり角で~、ゴッツンコ~。

なんというベタな、しかし誰もが憧れる展開だ。




そう、この瞬間、俺は運命の出会いを果たしたのだ。




パンをくわえて。



曲がり角で。



ゴッツンコ。



運命の人の…






――自転車と。



「って危なぐはぁっ!?」


運命とは残酷なものだ。



「…せめてっ、…歩きで、…来て欲しかっ――」



そうして俺がのたうちまわっていると、



「だ、大丈夫ですか!?」



と、どこからか鈴の音のようにキレイな声が聞こえてきた。




見上げると、そこには長い黒髪を二つに結わいた、小柄な美少女の姿があった。



この瞬間から始まったのだろう。俺は、いつの間にか彼女に轢かれていたんだ。



――間違った。

惹かれていたんだ。





そうしてしばらく見とれていると、



「あ、あの、お怪我はありませんか?」



とか可愛い声で聞かれたので思わず、



「大丈夫です!体はもともと丈夫なので!」


と答えてしまった。



後に病院に行ったら

捻挫:全治二週間

とか言われたのはまた別の話としよう。



「そうですか、よかった…、本当に…、無駄な治療費を払わずにすんで」


「へ?」


「いえ、なんでもありません」



なんだ、なんか凄まじいセリフが聞こえたのは気のせいか?



「それより、早く行かないと遅刻してしまいますよ。こんな下らないことで時間をとられてはいけません」



く、下ら…いや、空耳だよな。こんな美少女からそんな言葉が出るはずないっ!



「それでは、失礼します」



そう言って、彼女は去っていった。


衝撃的だった。心的にも身体的にも。とくに右足首がヤバい。

→捻挫:全治二週間




「まぁ、いいや…」



そして俺はまた急ぎ出す。


まさか、この後に、またもや衝撃的な再会を果たすとも知らずに…。





「ここが新しいクラスか…」



俺は教室の扉を開き、出席番号のところの席に着く。番号は二十番。

…あ行、多くね?



まぁそれはさておき、俺は教室に見覚えのある顔があるのに気がついた。


右端の一番後ろに浅野のやつも座っていたが、そっちじゃない!どうでもいい!



教室の左端、一番前の席に彼女はいた。



「あ、」

「あ…」



向こうもこちらに気づいたようで、目が会って少し気まずい雰囲気になった後、それとなく目をそらした。


なんか…、こっ恥ずかしいなぁオイ!





――その日の帰り、俺は勇気を出して声をかけてみた。

途中で、


「おーい、一緒にカラオケ行かねーか?」


「君、家近いんだよね?よかったらこの辺案内してくれない?」


「君、家近いんだよね?よかったら、この幸運の壺を買ってくれないか?」



というクラスメイトの誘いを全てスルーし、三番目のやつには自首を促し、ていうか家近いの関係ねーだろ!!



彼女に、声をかけた。





「あ、あのさ…」


「え?」



彼女がちょっと驚いた顔で返事する。



「朝は、ごめん。怪我とかしなかった?」


「ええ、私は大丈夫。心配してくれてありがとう。優しいのね」



わ、笑った…。やっぱり可愛いな。


よぅし、なんかいい調子じゃね?

いい雰囲気じゃね?

このままフラグ立てまくってやるぜ!



…とか考えてた俺がバカだった。



「あ、でも」


「ん?なに?」



正直浮かれていた俺に、彼女は爽やかな声で語りかける。




「今日学校に着いてから気がついたんだけど、私の自転車、前輪のブレーキが効かなくなってたのよね~。昨日までは全く問題なかったのに…」


「そ、そうなんだ…」




あれ?これってもしかして…





「ねぇ、誰のせいで壊れたと思う?」





―――空気が、凍った。




やっべーよ!これマジで怒ってるんじゃね!?

さっきから笑顔が微動だにしないもの!!


こ、これはどうすれば…




①自分にもデメリットがあったことを主張する



「じ、実は、俺もその、ちょっと体痛めちゃって――」


「怪我はなかったんでしょう?」


「いや、その、後から痛んできて…」


「体は丈夫なんでしょう?」


「えと…」


「私、記憶力はいいの」



無理だーーー!!!

なんか言い訳すらできねーよ!!やべーよ!!





②素直に謝る



「ごめんなさい」


「どうして謝るの?」


「えっと…」


「理由を言わないと、わからないわよ?」


「えっと、俺のせいで…」


「うん」


「あなたの自転車が壊れてしまいました…」


「はいよくできました」



な、なんか俺、悪さした子供みたいになってね!?





③とりあえず今後の処置を決める



「えーと…」


「そういえば、名前をまだ言ってなかったわね。私は観月里奈。あなたは?」


「え、…霧谷、勇馬」


「そう、霧谷君、ね」


そして彼女は大きく息を吸ってから、


「ねぇ霧谷君、私この後寄りたい自転車屋さんがあるんだけど、一緒に来てくれるわよね?」



はい、弁償確定。

さらば僕の今月の小遣い達よ…



「―――はい…」


「わぁ、ありがとう!霧谷君って本当に優しい人ね!」





――――――とまぁ、

こんな調子でどつかれ小突かれ振り回され弁償させられ、俺と観月は親しく(?)なっていった…



すまん、泣いていいか?

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