私の婚約者に告白されたと、妹に謝罪されました。
「お姉様、ごめんなさい」
そう言って謝るのは、私の一つ下の妹レティシア。儚げな名前の響きに似た華奢な体格の美少女です。
「いいのよ、レティシア」
妹が謝るのは、私の婚約者に頼まれて一緒に出かけたことです。出かけた先が宝飾店だったので、バッチリ目撃した人々によって、私の耳にも届いたのです。
「まさか、お姉様の誕生日の贈り物を選ぶのを手伝って、それが噂になるなんて、思ってもいなかったんです」
「それはそうよね。あなたとランスロット卿は義理の兄妹になるんですもの」
「ええ。私もそう思っていたんです。宝飾店の後にカフェに行くまでは」
「カフェで何かあったの?」
「ランスロット卿に好きだと言われました」
「え?! 好きだと言ったの、ランスロット卿が?」
「ええ。お姉様とは政略結婚だから、同じ家の姉妹なのだから婚約相手を変更したいって。だから、覚悟をしておいて欲しいって」
「・・・!」
既に婚約者の変更まで考えていたとは、思ってもいませんでした。
確かに、私とランスロット卿は義務的な関係で、上滑りしているようなところがあります。
政略結婚って、そういうものでしょう?
紳士淑女の礼儀を守って、エスコートや贈り物をし合っていて、相手の立場を守っているだけの仮面夫婦の関係。
でも、それが妹への愛を、許せるかどうかは別の話です。
妹は私と違って、儚げな美少女です。体格も小柄で、胸もトリプルAカップで、華奢な彼女のイメージを強調しています。
胸が大きいと、自己主張の激しいと思われがちになります。
Dカップの私は、そのせいで婚約者に嫌われていたようです。
顔立ちにしても、同じ垂れ目でも、妹は儚げでありながら色気があって、私は狸顔。
納得いきません。
色気って何でしょう?
胸が大きければ、色気があるってことじゃないんですか?
なんで、トリプルAの妹の色気に私の色気が負けているのか。
・・・きっと、妹が母似で、私が父似だからでしょう。
父に似ていたから、顔で負けたのでしょう。
悔しくはありませんが。
「わかりました。お父様にはこの縁談はなかったことにしてもらうわ」
「ええ。お姉様の良さがわからない愚か者ですもの。私も嫌ですわ」
体格の違いやイメージの違いはあっても、私たちは仲の良い姉妹です。
社交界の殿方の人気は圧倒的に妹にありますが、それは殿方の目が確かだからです。
だから、泣きません。
私は父似の狸顔で、胸はあっても、身長は王都の貴族の殿方並みにあります。領地の殿方から見れば、肩にも届かないのですが。
それでも、王都の貴族から見れば、大女なのでしょう。
だから、泣きません。
「お姉様。チーズケーキ、お好きでしょ? 美味しいと評判のチーズケーキを買ってきましたの。食べましょう?」
「ええ。ありがとう、レティシア」
「お姉様。ケーキを食べた後は手合わせをしてくださるでしょう?」
「ええ」
「お礼にいつか、あの野郎を串刺しにしてやりますわ」
妹は華奢で筋肉が付かない体質です。その代わり、鋭い突きを得意としています。
攻撃力は低いと言われていても、私の婚約者だったランスロット卿を仕留められるくらいの力はあります。
「頼もしいわね、レティシア」
「だって、熊をも仕留められる次期女辺境伯の妹ですもの。それくらいできなければ、辺境伯家に生まれたとは、言えませんわ」
「ランスロット卿も辺境伯家を辺境の伯爵家だと、思い込んでいたのかも知れないわね」
「辺境伯家を辺境の伯爵家ですって?! 縁談がなくなって、本当によかったわ。一軍を率いる能力もないくせに、お姉様から指揮権を奪い取って、国を滅ぼすところだったわ」
婚約者が馬鹿だったおかげで、この国が滅ぶところだったようです。
「大袈裟よ。王都の貴族は当てにならなくても、領地の近隣の貴族も当てになるし、国には将軍だっているわけだし」
私は領地の近隣の貴族家の令息と結婚し、妹は王都で実戦に出られず燻っていた騎士の一人を捕まえて、姉妹で辺境伯領を守りました。
ついでに、辺境伯家と王都の貴族との結婚も、公爵家の出にもかかわらず、戦闘狂だった妹の夫のおかげでクリアできたので、万々歳。




