scene35 勇者
赤い鎧の女は、無言のまま剣を構えている。
鋭い視線が刺さり俺から離れない。
俺は小さく息を吐き苦笑する。
「出来れば...そういう物騒なものは、しまってくれたほうが...ありがたいんだが...」
言っては見たものの女は微動だにしない。
全然しまってくれる気はなさそうだ。
仕方がない...。
俺は剣を抜く。
それと同時に警報音が鳴り響く。
まずいな...長引くと監察兵が来る...。
早めにケリをつけて...。
そもそも無駄に戦闘とかしたくないんだが...。
「助けてやろうか?」
背後からレディアナの声が聞こえた。
「警報なってるしな」
俺は憮然とした表情になりながら答える。
「大丈夫だよ。俺あてのお客さんみたいだし」
「そう?じゃあ任せるけど、あんまり時間ないわよ」
「わかってるよ」
わかっている事を言われると、なんかむっとするって言うか、手伝ってもらえばよかったのに思わず断ってしまったが...。
次の瞬間、女が動いた。
一歩踏み込んだ次の瞬間。
ガツンとした衝撃!
赤い閃光と、ともに振り下ろされる剣。
速い!
受けるだけで精いっぱいだった。
腕に激しい衝撃が走る。
押し返せない。
マジか...この女...俺の力で押し返せ無いって。どんな怪力だよ。
至近距離でにらみ合い。
剣と剣がぶつかり合い火花を散らす。
「おい!ゼイ!その女、相当強いぞ。
お前相手に互角だ。手伝うか?」
「いらん!」
レディアナの声に必死に答える。
力比べで負けるかよ。
俺はさらに力を込める。
しかしーーー剣にかかる圧力が増していく。
この女、まだこんな力出るのかよ...。
ギギギ...と音がなり、俺の足が地面を削っている。
やばい...押されてんじゃねえかよ。
歯を食いしばり気合を入れるが…明らかに力負けしている。
そのとき。
ふっと、圧が消え、俺はよろけて体勢を崩した。
女は一歩引いた位置に立って笑っていた。
「さすが、歴代最高の勇者と言ったところね」
興味深そうに、俺を見ている。
「実力は十分ね」
実力...?十分?何を言っている?
俺は露骨に怪訝そうな顔をする。
「そんな不審者を見るような顔をしないでよ」
そう言われても不信以外の何者でもない。
「私はルナ…またの名を」
その名前に覚えはない。
「...勇者7号」
勇者!?
「あなたの…大先輩よ」
女の口元がわずかにあがった。




