scene32 戦闘開始
地下の廊下を歩いていた。
俺はレディアナの後をついていった。
王城の地下から上層へと続く階段を上がる。
「どこへ行く?」
レディアナは後ろを振り返ることなく答えた。
「王の間よ。今、ナザエルはそこにいるはずよ」
「そうか...」
まあ、王城の中の事はレディアナのほうが遥かに詳しい。
俺は大人しく従うことにした。
「それで、レディアナ君はなんであんなところに軟禁されていたんだ」
レディアナは肩越しにちらりとこちらを見る。
「魔法よ...ナザエルは私の魔法を警戒してる。
だから魔法が使えないあの部屋に軟禁した」
「ってことはナザエルが恐れるほどの魔法が使えるってことか…」
レディアナは軽く笑いながら答える。
「そうよ」
レディアナは前を向く。
「少なくとも、私の牙はナザエルに向いている」
怖っ…俺は思わず苦笑した。
長い廊下を抜け巨大な扉の前についた。
王の間、見覚えのある扉だ。
レディアナが扉を押す。
重い扉がゆっくりと開き、荘厳な空間が目の前に広がる。
高い天井、巨大な柱、玉座へと続く赤い絨毯。
そして、その玉座の前に一人の男が立っていた。
宰相ナザエル。
整った服装、穏やかな笑みを浮かべているが、俺を見るその瞳は冷たい光が宿っていた。
ナザエルは俺たち二人をゆっくりと見る。
「……おや」
軽く眉をあげる。
「無資格......と」
視線が横に動く。
「レディアナ姫…いけませんね」
口元に笑みを浮かべ、ゆっくりと話す。
「無資格なんかと行動をともにするだなんて…王女として失格ですな」
レディアナの顔が怒りで歪んだ。
「ナザエル!この謀反人が!」
一歩前に踏み出す。
「敵を討たせてもらうわ」
「何を言っているのですか」
ナザエルは全く理解できないという顔で首を振る。
「父君...王の死は」
空を仰ぎ恍惚の表情を浮かべる。
「世界の改革の尊い犠牲ですよ」
そして俺たちを見る。
「世界の革新であり、王が望んだ世界です」
レディアナの目が鋭くなる。
「お前が、好きなように管理するだけの」
吐き捨てるような声に軽蔑が混じる。
「くだらない世界だな。そんな世界には興味がない」
ナザエルは肩をすくめながら
「…平行線ですな」
これ以上のやり取りは無意味だ。
ナザエル、こいつには何を言っても無駄だ。
「レディアナ下がってろ」
俺は拳を握り前に出る。
ナザエルをまっすぐ見据える。
そして...詠唱。
炎が生まれ巨大な魔力が渦を巻く。
炎の竜巻が轟音とともにナザエルに襲い掛かるが、ナザエルは微動だにしなかった。
「学習しませんね...無資格だからですね」
炎はナザエルの届くことなく霧散し消える。
「無資格の魔法は、すべて無効です」
だろうね...無資格制御装置、想定の範囲内だ。
俺は続けて魔法を放つ。
炎、また炎、次々と魔法を放つ。
この部屋ごと焼き尽くしてやる。
しかしナザエルは表情一つ変えず、ため息をついた。
「無駄ですよ...この部屋は特別製なので…」
ゆっくりと腕を広げた。
「お前の炎でも、焼け跡一つ付けられない」
「なんだと...」
俺はナザエルの足元に目をやった。
その言葉に偽りはなかった。
燃え盛る炎に床は無反応...それでも...それでも。
俺は魔法を放ち続けた。
俺の炎は王の間を包むほどの規模になり部屋中が炎に包まれた。
それでも、壁も柱も、床も何一つ変化していない。
完全な無傷。
「無駄なのに...無資格だからわからないのですかね」
炎の中心で立つナザエルが静かに笑っていた。




