scene1 勇者35号
「おまえ資格持ってないじゃん」
「黙っとけよ資格ないんだからさ」
「資格はありませんが実務は出来ます。
だからいけます」
俺の言葉はむなしく空を切る。
「下がってろよ」
俺は出来るんだ。
やらせてくれれば全然こいつらよりも出来る。
ただ資格がないだけなんだ。
その瞬間目が覚めた。
嫌な夢だ。
資格を持っていないだけでバカにされるし仕事も任されない。
今日も憂鬱な一日が始まる。
起き上がろうとしたその時違和感を感じた。
ベッドがやわらかい。
布団がフカフカしすぎる。
そして何より部屋が広くて豪華だ。
少なくとも六畳一間のボロアパートに住んでいるはずの35歳の独身男性の部屋ではない。
「おはようございます勇者様」
勇者?誰?俺?
「勇者35号様がお目覚めになりました。
皆さん身支度のご用意を」
そう言ったのはメイド服を着たショートカットのかわいらしい女性。
「あの...あなたは...?
そして俺はいったい…?」
「ご安心ください35号様
私はあなたの身の回りの、お世話を任されたティアです。
そのままじっとして頂ければすべてご用意いたします」
「はあ...」
全部ご用意?
何を用意してくれるんだ?
俺はどうなるんだ…って言うか…。
「35号って...俺が35歳だから...?」
「違います。勇者様の年齢は存じ上げません。
ただ35人目の勇者だから35号です」
「えっ?勇者ってそんなにいるの?
って言うか俺も勇者?」
「当たり前じゃないですか
これから勇者任命式です。
早く準備しませんと遅刻しますよ」
任命式...勇者...?
全く状況がわからん。
ただ一つわかることは異世界に転生なり転移なりしてしまったという事だ。




