第9話:最終ダンジョンへの招待
ギルドでの一連の中級依頼を終えたカインは、仲間たちと共に静かな歓声の中、ギルド長ギレンに呼ばれた。
「カイン……聞いたか? 王国から正式な招待状が届いたぞ」
ギレンが少し困った表情で封筒を差し出す。中には最上級ダンジョン「幻影の迷宮」への挑戦権が記されていた。
「えっ、最上級ダンジョンですか!?」
カインの瞳が輝く。15歳の少年にとって、これは冒険者としての大きなステップだ。
マークも驚きつつ笑みを浮かべ、アランとランドは目を見開く。
「……Fランクのくせに、どうしてこうなるんだ」
ランドが小声でつぶやく。アランも同意しつつ、少し警戒の色を見せた。
ギレンはため息をつき、重い口調で説明する。
「お前の実力は誰も評価できない。だが、無自覚ながら最強であることは確かだ。王国騎士団も聖女も、君の力を認めた結果だ」
カインは照れ笑いを浮かべ、手を振る。
「ありがとうございます! たぶん、大丈夫です!」
招待状には、ダンジョン内でのチームプレイと戦略的判断が求められることが明記されていた。アランとランドは作戦会議を提案する。
「ここは僕たちが前衛で、カインは……どうする?」
マークが後方支援を想定しながら指摘する。カインは少し考え込むが、すぐに笑顔で手を挙げた。
「たぶん……先に進んでも大丈夫です!」
翌日、パーティは王都を出発し、幻影の迷宮へ向かう。道中、カインは相変わらず小さな失敗を繰り返す。石につまずき、枝で顔を軽く叩きながらも、無意識に罠や敵を排除してしまう。
「……こいつ、本当にFランクか?」
アランがため息交じりに呟く。ランドも頷き、マークは笑いながら肩をすくめる。
「どじっ子だけど、最強って……意味わからん」
迷宮の入口に到着すると、王国騎士団団長バルトと副団長ダニエルが出迎えた。バルトは腕を組み、鋭い視線でカインを見つめる。
「……Fランク、しかも0表示か。噂通り、無自覚に強いな」
ダニエルは冷静に観察しつつ、ステータスパネルを何度も確認する。
――攻撃力:測定不能
――表示:0
「ここから先は、全員が力を合わせないと進めません」
バルトは厳しい声で警告する。カインは笑顔で手を振った。
「たぶん、大丈夫です!」
幻影の迷宮に一歩踏み入れると、空気はひんやりし、足元には光の幻影が揺れる。視覚的に騙す魔法や巧妙な罠が随所に仕掛けられ、Aランクのアランとランドも慎重に進む。マークは後方支援で魔法を準備し、カインはいつものように無邪気に手を振るだけで、偶然に罠や幻影を解除していく。
「……またやられた」
アランが小声でつぶやき、ランドもため息をつく。マークは微笑みながら頭を抱えた。
「……やっぱりFランクって油断できないな」
ダンジョンの深部では、幻影の影が次々と襲いかかる。カインは無意識に動き、倒れたり手を振ったりするだけで幻影を消し去る。仲間たちは目を丸くし、作戦が自然と成立していくのを感じる。
「……Fランクのどじっ子最強か……」
ランドが呟き、アランも苦笑。マークは笑顔で頷く。
「でも、このチームでなら絶対にクリアできるな」
迷宮の入口から見える光景は、仲間と共に挑む冒険の喜びをカインに実感させる。無自覚最強少年は、Fランク表示でも仲間との連携で確実に力を発揮し始めたのだった。
「さて……幻影の迷宮も、たぶん大丈夫!」
少年の声が洞窟内に響き、どじっ子最強伝説はいよいよ最終章へと進む。




