第10話:幻影の迷宮踏破、カイン伝説の始まり
幻影の迷宮の最深部。光と影が交錯する空間に、カインたちパーティは足を踏み入れていた。
「ここまで来れば、あと少しだな」
アランが緊張しつつも剣を握る。ランドも慎重に周囲を見渡す。マークは魔法を構え、後方支援の準備を整える。
カインはいつものように手を振り、にこやかに笑う。
「たぶん、大丈夫です!」
しかし、最深部には迷宮の守護者「幻影王」が待ち受けていた。巨大な黒影に包まれたその姿は、目に見えるものと目に見えないものを自在に操り、仲間の幻影を映し出す。Aランクのアランとランドも混乱するほどだ。
「くっ……どうなってるんだ?」
ランドが声を震わせ、アランも幻影に惑わされる。マークは冷静に魔法で援護しようとするが、攻撃は幻影に吸収される。
「……ここは僕が!」
カインは無邪気な笑顔で前に出る。手を振るだけで、幻影王の力を不意に跳ね返す。偶然の動きが、攻撃の軌道をずらし、幻影を次々と消し去っていく。
「なっ……Fランクなのに、どうして……」
アランが呆然とつぶやく。ランドも目を見開き、マークは思わず笑った。
カインは恥ずかしそうに頭をかきながらも、無意識に仲間の支援も行う。幻影王の攻撃を受けそうになったアランを軽く押しのけ、ランドの位置をずらし、マークの魔法が最大限に効くように偶然の導きを行う。
「たぶん……大丈夫です!」
少年の声が響き渡る。幻影王は動揺し、その影が揺れる。無意識最強のカインの力で、幻影王はついに崩れ落ちた。
迷宮が静寂に包まれる中、仲間たちは安堵の笑みを浮かべる。
「……やっぱり、こいつ、ただのFランクじゃないな」
ランドが小声でつぶやき、アランも頷く。マークはにっこり笑った。
カインは仲間たちに向かって手を振る。
「皆さん、たぶん……大丈夫でした!」
笑顔の少年を見て、聖女ミレーヌの声が遠くから響く。
「カインさん……すごいわ」
ギルドに戻ると、ギルド長ギレンはため息をつきつつも、認めざるを得なかった。
「……0表示でも、お前は最強だ」
マリンも微笑み、カインの頭を優しく撫でる。
「でも、確実に成長していますね」
こうして、Fランク表示のどじっ子少年――カイン――の伝説は始まった。最強でありながら、誰もその真価を正しく評価できない。しかし、仲間との絆と無自覚の力によって、確実にその名は広がっていく。
「さて……次の冒険も、たぶん大丈夫!」
少年の声がギルドに響き渡る。
無邪気でどじな少年が、最強として仲間と共に歩む冒険譚は、まだ始まったばかりだった。




