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王とリッチ

玉座の間に、炎の光が揺れていた。


窓の外では王都が燃えている。


崩れ落ちる建物の音が、遠くから響いていた。


王は玉座の段を降り、赤い絨毯の上に立っていた。


手には剣。


王家に伝わる黄金の剣。


その刃は炎を反射し、静かに輝いている。


アレインはその前に立っていた。


蒼い光を宿す眼窩。


骨の身体を包む黒衣。


死霊王。


かつての王国最強の英雄。


二人の距離は、十歩ほどだった。


玉座の間の空気が張り詰める。


聖女が床に手をつきながら叫ぶ。


「陛下……!」


王は振り返らない。


ただ剣を構えた。


その姿は、玉座に座っていた王とは違っていた。


足運び。


重心。


剣の構え。


それは戦場のそれだった。


王は言った。


「驚いたか」


静かな声。


「私は戦えないと思ったか」


アレインは何も言わない。


だが蒼い光がわずかに揺れる。


王は続ける。


「王とは」


剣をゆっくり持ち上げる。


「戦えぬ者がなるものではない」


その瞬間。


王の姿が消えた。


踏み込み。


速い。


剣が閃く。


黄金の刃がアレインの首を狙う。


だが。


アレインの剣がそれを受け止めた。


鋼の衝突音が玉座の間に響く。


火花が散る。


王の剣は重かった。


力ではない。


技でもない。


それは――


長年、戦場で振るわれてきた剣だった。


王が低く言う。


「覚えているか」


剣を押し込む。


「私も」


炎が揺れる。


「戦場にいた」


王国がまだ若かった頃。


王は前線で戦っていた。


王族でありながら、戦場に立つ王だった。


魔族討伐。


国境戦争。


そして。


魔王軍との戦い。


王は多くの戦場を生き延びてきた。


アレインの剣が動く。


王の剣を弾く。


後退。


王は即座に踏み込む。


二撃。


三撃。


鋭い斬撃。


速い。


重い。


王は強かった。


聖女が息を呑む。


「……陛下」


アレインの剣が動く。


一閃。


王の鎧が裂ける。


血が飛んだ。


だが王は止まらない。


笑った。


「そうだ」


剣を振るう。


「それでこそ」


黄金の刃が再び迫る。


「英雄だ」


剣が交差する。


火花が舞う。


玉座の間に金属音が響き続ける。


王とアレイン。


王国最強の二人。


剣がぶつかるたび、床石が砕けた。


柱が裂けた。


魔力が空気を震わせる。


王が息を吐く。


「お前は」


剣を振るう。


「強すぎた」


斬撃。


「人望もありすぎた」


突き。


「そして」


踏み込み。


「王命を軽んじた」


蒼い光が揺れる。


アレインの剣が王の剣を弾く。


そして。


踏み込む。


速い。


剣が閃く。


王の肩が裂けた。


血が床へ落ちる。


王は後退する。


だが、笑っていた。


「そうだ」


息を吐く。


「それでいい」


剣を構える。


「王を討つなら」


炎が揺れる。


「正面から来い」


再び突撃。


剣がぶつかる。


だが。


次の瞬間。


アレインの剣が王の剣を弾き飛ばした。


黄金の剣が床を転がる。


静寂。


王の胸に、剣が向けられている。


蒼い光が静かに揺れる。


王は動かない。


ただアレインを見ていた。


そして笑った。


「……やはり」


小さく息を吐く。


「強いな」


聖女が叫ぶ。


「陛下!」


だが王は振り返らない。


ただ言った。


「アレイン」


その声は静かだった。


「私は王だ」


炎が揺れる。


「間違ったかもしれない」


「だが」


その目は揺れていない。


「最後まで」


ゆっくり言う。


「王であり続ける」


アレインの剣が動く。


一閃。


王の胸を貫いた。


血が溢れる。


王の体が崩れる。


玉座の段に膝をつく。


聖女の叫びが響く。


「陛下ァ!!」


王は苦しげに息を吐く。


それでも笑った。


そして言った。


「これで」


かすれた声。


「証明されたな」


蒼い光が揺れる。


王は最後に言った。


「お前の方が」


「強かった」


その体が崩れ落ちる。


王冠が石床に転がった。


玉座の間は静まり返っていた。


王国は、終わった。


アレインは動かない。


ただ、玉座を見ていた。


炎の光が静かに揺れている。


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