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壁の崩壊

炎が空を赤く染めていた。


王都の大通りは崩壊している。


瓦礫。

炎。

血。


砕けた石畳の上に、兵士とアンデッドの死体が折り重なっていた。


煙が低く漂い、呼吸するだけで喉が焼ける。


それでも――


戦いは終わらない。


「押せぇぇぇ!!」


王都軍の怒号が響く。


槍兵が突撃する。


骸骨兵の胸を貫く。


骨が砕け、崩れ落ちる。


「次!」


剣が振り下ろされる。


腐敗兵の首が飛ぶ。


勇者が残した結界のおかげで、倒れたアンデッドは二度と動かない。


兵士たちはそれを理解していた。


だから戦える。


若い兵士が息を荒げながら言った。


「……まだ」


血だらけの剣を握る。


「まだやれる」


だが。


その時だった。


――ドン


重い衝撃。


地面が揺れた。


兵士たちが振り向く。


そこに立っていたのは。


アレインだった。


黒い外套はほとんど焼け落ちている。


骨の身体も砕けている。


それでも。


死霊王は立っている。


その足元には――


騎士団長が倒れていた。


王都騎士団長。


王国屈指の剣士。


彼は膝をついていた。


腹から大量の血が流れている。


それでも剣を握っていた。


兵士が叫ぶ。


「団長!」


騎士団長は顔を上げた。


血に濡れた顔。


それでも笑っていた。


「……情けないな」


息が荒い。


それでも、ゆっくりと立ち上がる。


「まだ」


剣を構える。


「終わってない」


アレインは静かに見ていた。


騎士団長が言う。


「お前は……」


息を吐く。


「王国の英雄だった」


炎が揺れる。


騎士団長は続けた。


「俺は」


苦笑する。


「年下であるお前に剣を教わったこともある」


兵士たちが息を呑む。


アレインは何も言わない。


ただ、剣を構えている。


騎士団長は笑った。


「皮肉だな」


血が地面へ落ちる。


「弟子が師匠を止めるとは」


そして。


踏み込んだ。


最後の突撃だった。


剣が振り下ろされる。


渾身の一撃。


だが。


アレインの剣がそれを受け止めた。


火花が散る。


騎士団長は叫ぶ。


「王都は――」


剣を押し込む。


「落とさせん!」


その瞬間。


アレインの剣が動いた。


一閃。


騎士団長の胸を貫いた。


剣が背中まで突き抜ける。


兵士たちが凍りついた。


騎士団長は驚いた顔をした。


そして。


ゆっくり笑った。


「……やはり強いな」


それが最期の言葉だった。


騎士団長の体が崩れ落ちる。


剣が石畳へ転がる。


王都軍の最後の将軍が、倒れた。


静寂が戦場を包む。


兵士の一人が呟いた。


「……終わった」


誰も動かない。


ただ炎の音だけが聞こえる。


その時だった。


アレインが一歩踏み出した。


その瞬間。


兵士たちが後ずさる。


若い兵士が震える声で言う。


「……無理だ」


剣を落とす。


「勝てるわけがない」


誰かが泣き始めた。


別の兵士が膝をつく。


王都軍は、限界だった。


将軍たちは全員倒れた。


勇者もいない。


もう戦う理由が見つからない。


アレインは静かに彼らを見ていた。


蒼い光の眼窩。


その奥に、わずかな記憶が揺れる。


この街。


この兵士たち。


かつて守った王都。


だが。


死霊王の足は止まらない。


ゆっくりと。


王城の方向へ歩き始めた。


その姿を見て。


若い兵士が震える声で言った。


「……王都が」


遠く。


炎の向こうに王城が見える。


王国の象徴。


王の城。


兵士は涙を流した。


「王都が……終わる」


炎の中。


死霊王アレインは、静かに王城へ歩いていた。


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