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最後の戦い

炎が夜を照らしていた。


王都の大通りはもはや街ではない。


戦場だった。


石畳は砕け、瓦礫が散乱している。

倒れた兵士。

砕けた骸骨。

腐敗した肉片。


そして血。


生者と死者の血が、黒く混ざり合っていた。


「前へ!」


王都軍の怒号が響く。


槍兵たちが隊列を組み、アンデッドを押し返していく。


勇者の結界のおかげで、倒れたアンデッドはもう立ち上がらない。


一体、また一体。


確実に数は減っていた。


若い兵士が剣を振るう。


骸骨兵の頭蓋を叩き割った。


「やれる!」


息を荒げながら叫ぶ。


「押してるぞ!」


だが、戦場の中心だけは違った。


そこでは、常識が通用しない戦いが行われていた。


王都将軍団。


王国の主力が、たった一人を相手に戦っている。


アレイン。


黒い外套が炎に揺れている。


骨の顔に表情はない。


だが蒼い光を宿す眼窩だけが、静かに戦場を見つめていた。


騎士団長が踏み込む。


「はああああ!」


剣が振り下ろされる。


鋭い一撃。


王都騎士団長の技は、王国でも指折りの剣技だった。


だが。


アレインの剣が、それを受け止めた。


火花が散る。


衝撃が走る。


すぐ横から老将が大剣を叩き込む。


「終わりだ!」


重い一撃。


だがアレインは半歩下がり、刃を受け流す。


その瞬間。


魔導師長が叫んだ。


「今だ!」


杖が輝く。


魔法陣が展開された。


「雷撃!」


白い雷が落ちる。


閃光が戦場を裂く。


轟音。


雷撃がアレインを直撃した。


石畳が砕ける。


爆煙が上がる。


兵士たちが息を呑む。


煙の中。


アレインの影が、ゆっくりと現れた。


外套が焦げている。


骨の肩も一部砕けていた。


だが。


歩みは止まっていない。


兵士の一人が震える声で言った。


「……効いてないのか」


魔導師長が歯を食いしばる。


「いや……」


確かに傷はついている。


だが、それだけだ。


騎士団長が低く言う。


「化け物め」


そして再び踏み込む。


剣が閃く。


アレインの剣とぶつかる。


鋼が激しく鳴る。


二人の剣技は、もはや人の領域ではなかった。


斬撃が石畳を砕く。


衝撃が空気を震わせる。


その横から近衛将軍が突撃する。


盾を構えたまま体当たり。


「止まれ!」


鈍い衝撃。


アレインの体がわずかに揺れる。


その隙に老将の大剣が振り下ろされる。


「砕けろ!」


轟音。


刃がアレインの肩に食い込む。


骨が砕ける音。


兵士たちの間に希望が走る。


「やった!」


だが。


アレインの手が動いた。


剣が閃く。


老将の胸が裂けた。


血が噴き出す。


老将の体が崩れ落ちる。


「将軍!!」


兵士が叫ぶ。


だが戦いは止まらない。


騎士団長が怒号を上げた。


「怯むな!」


剣を振るう。


連撃。


鋭い突き。


だがアレインはすべて受け流す。


そのまま詠唱を始めた。


低い声。


「――爆裂」


次の瞬間。


黒い炎が爆発した。


衝撃波が街路を吹き抜ける。


将軍たちが吹き飛ばされた。


瓦礫に叩きつけられる。


兵士たちの悲鳴。


炎が建物へ燃え移る。


屋根が崩れた。


火の粉が舞う。


遠くで市民の泣き声が聞こえる。


「助けて……!」


だが誰も助けに行けない。


この戦場を止めなければ、


王都そのものが終わる。


騎士団長が血を吐きながら立ち上がる。


鎧は裂けていた。


それでも剣を握る。


「……まだだ」


視線の先。


アレインが立っている。


蒼い光の眼窩。


静かな死の王。


騎士団長が低く言う。


「お前は……」


息を吐く。


「王国の英雄だった」


アレインは答えない。


ただ剣を構える。


騎士団長が笑った。


「皮肉だな」


血を拭う。


「英雄を倒すのも……」


剣を振り上げる。


「王国の将軍の役目か」


その時。


後ろから兵士の叫びが聞こえた。


「騎士団長!」


若い兵士たちが駆けてくる。


槍兵。


民兵。


弓兵。


皆、震えながら武器を握っていた。


兵士が叫ぶ。


「将軍を一人にするな!」


別の兵士が続く。


「王都を守れ!」


恐怖は消えていない。


だが。


逃げる者もいない。


騎士団長が振り返る。


炎の中。


傷だらけの兵士たちが並んでいた。


彼は静かに言った。


「……いい顔だ」


そして前を向く。


アレインを見据える。


「来い」


剣を構える。


その背後で、兵士たちも武器を構えた。


燃える王都の街路。


瓦礫の戦場。


その中央で、


王国の将軍と兵士たちは


死霊王アレインに最後の戦いを挑んでいた。

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