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剣聖の最期

煙がゆっくりと晴れていく。


砕けた石畳。


崩れた家屋。


そして無数の死体。


その中央に三人が立っていた。


勇者。


剣聖。


そしてリッチ――アレイン。


だが、状況は変わっていた。


アレインの背後に、影が並んでいる。


黒い鎧の騎士。


巨体の屍兵。


骸骨の魔導士。


どれもただのアンデッドではない。


王都の兵士たちがざわめく。


「……高位アンデッド」


剣聖が低く呟いた。


勇者の額に汗が流れる。


先ほどの激突で、アレイン自身も大きく損傷している。


だが、それでも魔力は衰えていない。


そして今、新たな軍勢が現れた。


アレインは静かに杖を下ろす。


その瞬間。


黒騎士たちが一歩前へ出た。


重い足音。


戦場の空気が張り詰める。


剣聖が剣を握り直した。


「……なるほど」


その声は落ち着いていた。


勇者が横を見る。


「剣聖……」


剣聖は笑った。


「勇者」


「ここから先は、お前の戦いだ」


勇者は首を振る。


「何を言っている!」


剣聖は前を見たまま言う。


「分かるだろう」


黒騎士が剣を抜く。


屍巨人が唸る。


死霊魔導士が魔法陣を展開する。


「この数を突破してアレインに辿り着くのは、お前だけだ」


勇者の拳が震える。


「なら二人で――」


剣聖が首を振った。


「駄目だ」


静かな声。


だが断固としていた。


「勇者が倒れれば終わりだ」


剣聖はゆっくりと振り返る。


その顔には、戦場に立つ男の覚悟があった。


「王国はお前に賭けている」


勇者は言葉を失う。


剣聖は剣を肩に乗せた。


「だから」


一歩前へ出る。


「ここは俺が引き受ける」


黒騎士たちが動く。


剣聖は剣を構えた。


その姿は、まるで山のように動かない。


勇者は歯を食いしばる。


「……死ぬな」


剣聖は笑った。


「さあな」


そして。


黒騎士が突進した。


剣聖が踏み込む。


剣が振るわれる。


一閃。


黒騎士の首が飛ぶ。


だが止まらない。


二体目。


三体目。


屍巨人が拳を振り下ろす。


剣聖が跳ぶ。


空中で剣を振る。


巨人の腕が斬り落とされる。


剣聖が着地する。


そして吠える。


「来い!」


高位アンデッドが一斉に襲いかかった。


剣が唸る。


骨が砕ける。


鎧が裂ける。


だが数が多すぎる。


死霊魔導士の魔法が飛ぶ。


黒い炎。


闇の槍。


剣聖の肩が焼ける。


血が流れる。


それでも剣は止まらない。


一体。


また一体。


アンデッドが倒れていく。


城壁の上で兵士が叫ぶ。


「剣聖様……!」


剣聖は振り返らない。


ただ戦う。


ただ斬る。


勇者が駆け出す。


剣聖の横を抜ける。


アレインへ向かって。


アレインはそれを見ていた。


剣聖と目が合う。


一瞬だけ。


二人の視線が交差する。


剣聖が笑った。


「……行け」


勇者は走る。


その背中を、剣聖は見送る。


次の瞬間。


屍巨人の拳が落ちる。


剣聖はそれを受け止める。


骨が軋む。


剣聖は歯を食いしばる。


剣を振り上げる。


最後の一撃。


巨人の頭が砕ける。


だが。


その瞬間。


黒騎士の槍が胸を貫いた。


剣聖の身体が止まる。


血が溢れる。


だが剣聖は倒れない。


槍を掴む。


そして引き抜く。


黒騎士の首を斬る。


アンデッドたちが迫る。


剣聖は膝をついた。


それでも剣を離さない。


空を見る。


青空が広がっている。


遠くで勇者が戦っている。


剣聖は小さく笑った。


「……任せたぞ」


アンデッドが押し寄せる。


剣が最後に振るわれる。


そして。


剣聖の姿は、黒い軍勢の中に消えた。


城壁の上で誰かが泣いた。


だが勇者は振り返らない。


ただ走る。


ただ剣を握る。


その先に。


アレインが立っていた。


王都の運命を賭けた。


最後の戦いが始まる。


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