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剣の継承

門前は、骸で埋まっていた。


レオリア将軍の剣が閃く。


斬撃は正確無比。


踏み込みは衰えない。


子爵家三代の武威。


王都軍はそれを背に戦っていた。


だが。


斬っても、減らない。


足元で砕いた骨が、震える。


黒い魔力が骨片を引き寄せ、再び形を成す。


「再構成速度、上昇しています!」


副官の叫び。


レオリアは応じない。


ただ、前へ出る。


門前五十歩圏。


そこは死と再生の循環地帯。


斬る。


砕く。


踏み潰す。


だが背後で、再び立ち上がる。


「散開しろ! 密集するな!」


号令と同時に、横合いから重装骸骨兵が突進。


盾を構え、押し潰すように迫る。


レオリアは迎え撃つ。


一撃で盾ごと断つ。


だがその瞬間、足元から骨腕が伸びる。


鎧の隙間を掴まれる。


一瞬の拘束。


そこへ、横薙ぎの剣。


金属が裂ける音。


胸甲が割れ、血が噴く。


「将軍!」


副官が駆け寄る。


レオリアは膝をつかない。


歯を食いしばり、骨腕を踏み砕く。


さらに一閃。


敵を薙ぎ払う。


だが出血は止まらない。


呼吸が荒くなる。


視界がわずかに揺れる。


城門が、軋む。


結界が震える。


城壁上から声が飛ぶ。


「門前、限界です!」


「押し返せぬ!」


レオリアは理解する。


ここが潮目だ。


これ以上、自分が立てば立つほど、門前は死で満ちる。


再構成の素材を与え続ける。


アレインはそれを見ている。


測っている。


門前で、黒衣のリッチが静かに杖を持つ。


まだ前に出ない。


余裕。


それが腹立たしい。


レオリアは剣を構え直す。


「……まだだ」


踏み込む。


最後の踏み込み。


だが次の瞬間。


地面が爆ぜた。


黒い衝撃波。


高位魔法。


直撃ではない。


余波。


それでも十分だった。


レオリアの身体が宙を舞う。


石畳に叩きつけられる。


肺から空気が抜ける。


剣が手から離れる。


門前が揺らぐ。


アンデッドが一斉に前進。


「将軍を下げろ!」


副官と親衛隊が盾になる。


レオリアは血を吐きながら、腕を伸ばす。


「……退くな」


だが声はかすれる。


胸の裂傷は深い。


肋が折れ、呼吸が不規則。


それでも立とうとする。


その視界に、白光が差した。


城壁上から、一条の光が落ちる。


地に降り立つ影。


勇者。


神聖剣が白く燃える。


足元の骸が、触れただけで灰となる。


アンデッドが一瞬、後退する。


初めて。


門前で、死者が“退いた”。


勇者はレオリアを一瞥する。


短く、言う。


「よく持たせた」


レオリアは笑う。


血を吐きながら。


「……遅い」


だが安堵もあった。


剣を握り直そうとする。


勇者が静かに足で押さえる。


「ここからは、俺の役目だ」


白光が爆ぜる。


神聖剣の一振りで、前列十数体が同時に浄化される。


再構成が、起きない。


門前の循環が、断ち切られる。


城壁上で歓声が上がる。


「勇者だ!」


「押し返せ!」


聖女の結界が強まる。


第三層が、ようやく安定に入る。


レオリアは担ぎ上げられる。


視界が揺れる。


だが門前で、白光が黒を裂くのを見た。


アレインが、初めて一歩前に出る。


黒と白。


二つの象徴が、正面に立つ。


門はまだ破られていない。


王都はまだ立っている。


だが戦は、次の段階へ入った。


レオリアは薄れゆく意識の中で思う。


――勝てる。


勇者がいる。


神がいる。


王都は落ちぬ。


白光と黒炎が、門前で交錯する。


決戦が、始まる。

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