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希望と絶望

初戦開始より二刻。


王都軍の戦果は明確だった。


外郭一帯で撃破確認――およそ六千。


魔導砲による蒸発、粉砕、焼却が主。


弓兵と魔導兵の連携により追加で千。


合計七千。


対する王都側の損耗は三百未満。


数字だけを見れば、圧勝だった。


城壁上に確信が広がる。


「押している!」


「このまま削りきれる!」


レオリア将軍は頷かない。


「敵は死者だ。数字に酔うな」


だが内心、計算はしていた。


二万の三分の一を削った。


残りは一万三千。


結界完成まで保てる。


勝てる。


その時だった。


外郭中央。


爆煙の中から黒衣の影が前へ出る。


アレイン。


それまで一歩も動かなかった存在。


杖をわずかに掲げる。


空が歪む。


魔導砲の砲身が震えた。


「魔力循環、異常!」


魔術士長の叫び。


次の瞬間。


第一砲、内部爆裂。


青白い光が砲身を内側から引き裂く。


第二、第三。


連鎖。


轟音とともに城壁上に火柱が立つ。


砲手が吹き飛び、破片が兵を貫く。


「遮断しろ!」


だが間に合わない。


十二基のうち十基が沈黙。


七基大破、三基使用不能。


残る二基も不安定。


王都最大の遠距離優位は、一瞬で消えた。


「……構造を書き換えられた」


魔術士長が呟く。


発射機構ではない。


魔力循環そのものを逆転させた。


理解の外。


レオリアは剣を抜いた。


「前衛、城門前へ! 白兵戦だ!」


アンデッドが前進する。


砲撃の雨が止んだ空白を逃さない。


焦土を踏み越え、距離を詰める。


矢が降る。


雷が走る。


だが密度が違う。


「城門まで三百歩!」


鉄扉が震え始める。


結界が軋む。


レオリアは城壁を駆け下りた。


門前広場へ。


「門は抜かせぬ!」


子爵家三代の剣。


重心は低く、踏み込みは鋭い。


先頭の骸骨兵を一刀で両断。


横薙ぎ。


三体が同時に砕ける。


踏み込み、突き。


胸骨を貫き、魔核を砕く。


動きに無駄がない。


アンデッドは数で押す。


だが門前は狭い。


密集は利点であり、弱点でもある。


「来い!」


レオリアは吠える。


回転斬り。


骨が弾ける。


鎧が裂ける。


後続が詰まる。


副官と親衛隊が左右を固める。


王都兵の士気が跳ね上がる。


「将軍が出たぞ!」


「押し返せ!」


一時、アンデッドの進行が止まる。


城門前五十歩圏は、骸の山。


レオリアの鎧は骨粉で白く染まる。


息は荒い。


だが剣は止まらない。


「まだだ!」


さらに踏み込む。


王都兵が続く。


門前は戦場というより、処刑場だった。


再び、王都が押し返す。


城壁上で歓声が上がる。


「止めた!」


だが。


黒衣の影は、まだ動いていない。


アレインは静かに見ている。


レオリアの剣技。


門前の密度。


結界の揺らぎ。


すべて。


そして。


杖を、わずかに傾けた。


地面が脈動する。


門前で砕けた骨片が、震える。


レオリアの足元で、砕いたはずの骸が動く。


「……なに」


骨が寄り集まる。


鎧が組み上がる。


再構成。


門前で斬った数百が、立ち上がる。


背後から、王都兵を掴む。


悲鳴。


レオリアは振り返る。


一瞬の遅れ。


横合いから剣が走る。


鎧が裂ける。


血が滲む。


だが将軍は倒れない。


「散開しろ! 密集するな!」


再生を前提とした敵。


削るほど、門前が死で埋まる。


レオリアは歯を食いしばる。


剣を振るう。


斬る。


砕く。


だが減らない。


城門が、再び震える。


結界が軋む。


城壁上。


勇者が一歩前に出る。


神聖剣が白く燃える。


王都はまだ立っている。


だが“優勢”は消えた。


門前で、レオリア将軍はなお戦う。


血を流しながら。


誇りを背負いながら。

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