06.大きすぎる代償
一、封魔の力を完成させるためには全ての属性の耐性をつけなければならない。
二、カウンター(無効化した魔法を二倍の威力で放出する)を用いる場合は、寿命が削られる。
だって、と顔を上げるとアイザックが顎に手を当てて何やら考え込んでいた。
「二つ目が重いですね」
「そうかな?僕は別に構わないけど」
けろっとして答えると、アイザックが訝しげな目を向けてきた。
「この質問はよろしくないかもしれませんが、魔族の寿命ってどれくらいなんでしょうか?」
「途方もなく長いってことしか知らないな。例えばイザヤ兄上は二千くらいだし、フリードリヒ兄上も一千とかだったかな。一万歳になると長寿と言われてた」
「ルカ様は?」
「まだ九歳だよ。……あ、そういうことか」
この時になって漸くアイザックの言わんとすることを察し、手元の本に話しかけた。
「一回のカウンターでどれくらいの寿命が削られるの?」
[誰だお主は。我はアーデルハイド様の質問にしかお答えしないからな]
その言葉にすっと真顔になり、咳払いをした。
「アーデルハイドの名に於いて命じる。先程の質問に答えろ」
この本、とても疲れるかもしれない。
そんなことを考えながら遠い目をしているうちに、新しい文章が浮かび上がっていた。
[千回のカウンターで約一年分の寿命を消費します。ちなみに、アーデルハイド様のように黒い瞳をもつ魔族の寿命は一億年です]
「僕の余命長すぎるでしょ」
アイザックに説明すると、やはり同様の感想を口にした。
「チートカウンターは心置きなく使えそうだね」
「ルカ様は一億年生きなくていいんですか?」
面白がった顔で聞くアイザックに白い目を向ける。
「冗談じゃない。この九年もやっとなのに」
「あはは、では頑張ってカウンターで余命を削ってください」
「うん、そうする。全属性の耐性についてはフェリクスに相談しないとな」
「耐性ってどうやってつけるんでしょう?」
「確かに。……どうするの?」
低めの声で封魔の書に問いかけた。
[何度言われても、我はアーデルハイド様の仰ることしか聞かんからな]
それに対して何の反応も返さずに黙って見つめていると、暫くしてさらさらと文字が書かれた。
[耐性は、各属性の中級以上の魔法を浴びることで獲得できます]
「魔法を浴びる?」
[例を挙げてご説明するなら、開けた場所の中央に立ち、そこに向けて中級以上の魔法を撃ってもらうのです]
「それって僕死なない?」
[魔族は生命力が極めて強いので大丈夫です。魔法を浴びる瞬間は非常に強い痛みを感じると思われますが、それは我慢してください]
あまりの衝撃で、言葉が出てこなかった。
「ルカ様?」
「なんか、中級以上の魔法に一回撃たれたら耐性がつくらしい」
[いえ、我が主。最上級魔法なら四回で済みますが、上級魔法なら十回、中級魔法なら二十回撃たれてください]
ショックのあまりアイザックに伝える余裕もなく、ベッドに突っ伏し思いっきり叫んでしまった。




