04.兄弟兼親友だと思ってる
ドアがノックされ、反射的に返事をした。
「アイザックです」
その声に封魔の書を枕元へ置いて、ベッドから飛び降りる。
急いで扉を開けると、そこには覇気がないアイザックがいた。
「どうしたの、まだ調子が悪い?」
様子を伺うように見上げると、突然アイザックが頭を下げた。
「この度はルカ様をお守りできず、誠に申し訳ありませんでした」
その時になってようやくアイザックが涙声なことに気がついた。
とりあえず近くを通った使用人に温かいミルクを二つ頼み、アイザックを部屋の中に招き入れる。
普段はうるさいほど喋るのに、今は口を固く閉じていた。
急かすのはよくないだろうと思い、ミルクをちびちび飲んでいると、
「俺はルカ様をお守りするために、フェリクス様に破格の待遇で雇われました。それなのに、今回のような失態をおかしてしまい、どのように責任をとればいいか」
「ごめん、ちょっと待って」
ミルクを全て飲み干し、アイザックの青い瞳を真っ直ぐに見つめた。
「まず、僕はアイクを只の護衛として見てないよ」
「……それは、どういう意味ですか?」
「兄弟兼親友だと思ってる」
ぽかんとしたアイザックを見て、ルーカスは小さく笑った。
「だから、アイクは僕の傍にいてくれるだけで十分なんだ」
「……『お前なんかクビだ!』が口癖なのに?」
「それはアイクの趣味が僕をからかうことなのと、お前の顔が無駄にかっこいいのが悪い」
「そこはいい加減慣れましょうよ」
アイザックがへらっと笑ったのを見て、こっそり胸を撫で下ろした。
彼にしおらしくされるとこちらの調子が狂ってしまいそうだ。
「それにしても、いつの間にか俺はルカ様の兄になっていたんですね」
上機嫌に言うアイザックに思わず苦笑を漏らす。
「そのせいで魔族に決闘を申し込まれたらごめんね。先に謝っておくよ」
「どういうことですか?」
怪訝な顔をするアイザックは敢えて無視して、ルーカスは身を乗り出した。
「フェリクスから封魔の力について聞いた?」
「はい、とても信じがたいお話で……。ルカ様にとっては喜ばしいことかもしれませんが、正直俺は心配しています」
珍しく真面目な表情のアイザックに、首を傾げる。
「心配?」
「大きな力にはそれ相応の代償がつきものですから」
その言葉に、はっとさせられた。
確かに魔法を無効化するなんて力をノーリスクで扱えるわけがない。
そう思い至ったところで、封魔の書が目に入った。
「あれに何か書いてあるかも」
ベッドに駆けより、少し緊張しながら本を開く。
そこには走り書きがされていた。
[黒の瞳をもつ者のみ、主たる資格を得られたり]
「主たる資格……?」
疑問に思いながらページをめくると、その次は白紙だった。
しかし次の瞬間ぽわっと黒い文字が浮かび上がり、現れた文章に思わず全身が震えた。
[第二十四代魔王ギルバートが七男アーデルハイドを本書の主と認める]




