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【完結】アーデルハイドは知らない─黒髪黒眼なのに期待はずれと追放された魔族は、痛みを以て魔界をぶっ潰します─  作者: 米奏よぞら
第二章(十五歳・前編)

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22.絶体絶命

「ルーカス、今日はよろしく頼むよ」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


多くの観客に見守られるなか、二人が握手を交わす。

にこやかな笑みを浮かべているクリスに対して、ルーカスはがちがちに緊張していた。


「はいはい、皆様ご注目くださーい!通りすがりの護衛が今からすごいこと言いますからねー」


聞き覚えのある呑気な声に顔を上げると、何故か訓練場にいるアイザックと目が合った。


「アイク、なんで?」


「そちらのクリス様に試合の審判を依頼されたんです。報告が遅れて申し訳ありません」


全く申し訳なく思っていなさそうな口調でウインクを飛ばすアイザック。


「今朝実力者を見かけて声をかけたら、君の護衛だって言われたから驚いたよ」


そう言って笑うクリスに、ルーカスは言葉を失った。

初見でアイザックの強さを見抜いた……?

やっぱりルーカスではこてんぱんにやられてしまうのではないか。

完全に弱気になっていると、脳天気なアイザックの声が聞こえた。


「でも俺が審判したところで、いまいち盛り上がらないと思ったので、適任をお連れしました。……皆さん、拍手でお迎えください!この試合の審判を務める、フェリクス・カディオ様でーす!」


そしてアイザックが示した方向から、フェリクスが現れる。

この六年間ここまでアイザックをクビにしたい日はなかった。


観客は一瞬しんと静まり返った後割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こる。

その一方で、ルーカスの頭のなかはネガティブ思考で埋め尽くされ破裂しそうだった。

フェリクスの目の前で負けるわけにはいかないという思いと自分がクリスに勝てるはずがないという思いがせめぎ合う。


「クリスが勝てば俺に弟子入りする、ルーカスが勝てば最上級魔法を撃ってもらう。両者これでいいんだな?」


フェリクスの問いに、少し遅れて頷く。

そして気持ちが一つに纏まらないうちに、フェリクスが開始の合図をした。


緊張して気持ちが乗らなくても、身体に刷り込まれたものについては関係ない。

クリスに接近して体術で仕掛ける。

自分を最大限守りつつ、相手の隙をつくように攻撃していく。

彼は守るだけで精一杯なようで、攻撃は控えめだった。


(これなら体術だけで勝てるかもしれない……!)


少しの希望が見えた瞬間、クリスの口角が僅かに上がった。


「甘いよ」


「…………っ、いった」


至近距離で聖魔法を浴び、慌てて距離をとる。

すぐに無効化したはずなのに、全身が火傷を負ったように痛んだ。

やはり耐性を獲得していないため、効力が薄いのかもしれない。


「魔族だったら今ので勝負がついてるはずなんだけど、なにしたの?」


「はぁ、はぁ……」


おかしい。

すぐに癒えるはずなのに、先程の火傷は一向に治る気配がない。

これも聖魔法だからなのか。

どうにか足を前に進めようとするが、あまりの痛みに膝をつく。

クリスがゆっくりと歩いてきて、手をルカの頭上にかざした。


「降参してくれる?」



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