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【完結】アーデルハイドは知らない─黒髪黒眼なのに期待はずれと追放された魔族は、痛みを以て魔界をぶっ潰します─  作者: 米奏よぞら
第二章(十五歳・前編)

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16.紳士って難しい

四日間の最上級魔法に耐え、ルーカスは火属性への耐性を無事に獲得することができた。

そして、約束通り、


「兄上、ワーグナーが恋人になりたいって」


「そうか。じゃあ『私はアイザックみたいな男がタイプだからごめんなさい』って断って」


「いいけど、アイザックに手を出すのだけはやめてね」


「…………気をつける」


そんな会話を経て、アイザックはワーグナーに恋敵認定されていた。



「急いで次の最上級魔法を見つけないと!」


「なんでそんなに意欲的なんだよ。結局初日以外五発以上も撃たせたくせに」


「火は想像の十倍つらかったから、つい……」


「ついじゃねえよ。フレア先生からは振られるし、もう散々だ」


落ち込むワーグナーの頭をぽんぽんしながら、ルーカスは教室を見渡した。

大抵のクラスメイトは自分と目を合わせようとしない。

しかし、ここ最近気になることがあった。


「リア、だったよね」


そう言って話しかけたのは、ルーカスに「美少女顔はいいですわよね!」と言い放った少女だ。

黒髪のリアは女子の中でも浮いている。


「偶に僕の方を見てるみたいだけど、何かあるの?最上級魔法撃ってくれるとか?」


少し期待してにこやかに聞いたのだが。


「お断りしますわ。次期魔王を撃って不敬罪で捕まりたくありませんもの」


「……僕は次期魔王じゃないんだけど」


「でも貴方、第七王子のアーデルハイドでしょう?」


「あはは、冗談きついなー。あ、そういえばフレア先生にリアを連れてくるように頼まれてたんだった。一緒に行こうよ」


クラスメイトたちが固まる中ワーグナーに頼むとサインして、困惑するリアをフリードリヒのもとまで連れていった。



「君は僕に何か恨みでもあるの?」


「なくはないですわね」


「それって登校初日のやつのこと?」


「当たり前でしょう」


フリードリヒの研究室に押しかけたはいいものの。

女装は飽きたのか、通常の格好をしている兄は何も言わず、楽しそうに二人を見ているだけだった。


「初対面で魅了魔法を使われたら、誰だって驚くよ」


「私はそんなつもりじゃ」


「まあまあここは、人生経験豊富な僕から一つ言わせていただきたい」


急に介入してきたフリードリヒに、リアが疑惑の目を向ける。

どうやら彼が第五王子であることは知らないようだ。


「まず可愛いアーデルハイド。お前は今まで野郎に囲まれて生きてきたから知らないだろうが、女性は香水の感覚で軽く魅了魔法を自分にかけるものなんだ」


「え、そんなことって」


「僕は純粋なアーデルハイドが好きだけど、そのせいで変な女に捕まるのは避けたいからね。女の免疫をつけるの手伝おうか?」


「いらない」


バッサリ切り捨てると、フリードリヒが苦笑を漏らした。


「貴方、本当にご存知なかったの?」


目を丸くして驚くリアに、ルーカスはゆっくり頷く。


「世間知らずなせいで、誤解してごめん」


「……もう気にしていませんわ」


「ありがとう。じゃあ、最上級魔法撃ってくれる?」


紳士的にお願いしたつもりなのだが、やはりルーカスにはまだ早かったらしい。



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