15.仲直りする気ある?
「アーデルハイドがルーカスとして幸せそうに生きているから、何事もなかったんだと思い込んでいた」
「何の事情も知らずに偉そうな口を聞いてしまい、誠に申し訳ございませんでした……」
フリードリヒの話を聞き、アイザックは両手で自身の顔を覆った。
「父上は本気でアーデルハイドを次の魔王にしようとしている。反対派の者から刺客が送られることも増えるだろう。できるなら、君と手を組んで今度こそ弟を守りたい」
「はい、宜しくお願いいたします!」
アイザックが真面目な顔で頭を下げると、フリードリヒが小さく笑う。
「あとは君とアーデルハイドが仲直りするだけだ。僕でも兄弟喧嘩なんてしたことないのに、羨ましい限りだよ」
呆れたように言われ、アイザックは苦笑を漏らすしかなかった。
「という感じで、フリードリヒ様と和解してきたので、どうか愚かな俺を許してください」
校内の中庭で一人寝転がるルーカスの足元に、アイザックは渾身の土下座をしていた。
「兄上は僕が拒絶した理由について何か言ってた?」
「いえ、何も言っておられませんでした」
「役立たず」
「はい、俺といったら役立たず、役立たずといったら俺です。申し訳ございません」
「……もういいから、頭上げてよ」
おそるおそる顔を上げると、少し不満そうな顔をしたルーカスがいた。
「魔王に『アーデルハイドが一緒にいると、あの二人は笑われてしまう』と言われて、それを信じた僕が勝手に拒絶したのに、魔界から追い出されそうになった途端頼りにするのはきもいなと思って」
「それはとてもきもいですね」
「他にも沢山言われたんだ。二人は僕の命を狙ってるとか、裏ではひどい悪口言ってるとか」
「やり方のレベルが低すぎて言葉もありません」
「かつての僕は魔王の言うことは真実だと思ってた。でも、全部嘘だった。だから、最上級魔法に撃たれるのはそんなアーデルハイドの禊でもあるんだ」
「禊ってもっと清らかなイメージですけど」
「……アイク、僕まだ許してないからね」
釘を刺されたアイザックは慌てて頭を下げる。
「申し訳ございません。心の内ではすごく反省しているんですが、いつもの癖で口から思ってもいないことがペラペラと出てくるんです」
「……………………」
突然静寂が訪れ、これはいよいよまずいかとアイザックが内心焦っていると、
「さっき、初めて最上級魔法に一発で撃たれたでしょ?」
「はい、素晴らしかったです!」
「火属性は熱くて痛いし、めちゃくちゃ苦しかった。頑張った分以上に褒めてくれたら、許してもいいよ」
今までで一番傲慢で可愛らしいお願いだった。
あとはアイザックが豊富な語彙力を使ってルーカスを褒め倒せば万事解決……だったのだが。
「なんでそんなに上からなんですか?俺そこまで悪いことしましたっけ?」
「もういい」
「冗談、冗談ですから!もう一度だけチャンスをください!」
やはりいつも通りの二人であった。




