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【完結】アーデルハイドは知らない─黒髪黒眼なのに期待はずれと追放された魔族は、痛みを以て魔界をぶっ潰します─  作者: 米奏よぞら
第二章(十五歳・前編)

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12.襲来

「熱い……痛い……痛い……痛い……痛、くない」


すっと起き上がりアイザックたちの元へ駆け寄ると、ワーグナーがぎょっとしてルーカスを見た。


「なんで無傷なんだ?」


「魔族だからね」


「いや魔族にしても異常な気が」


「ワーグナーは僕以外の魔族を見たことがあるの?」


「ないけど」


「じゃあ偉そうな口聞かないで」


ぴしゃりと言うと、ワーグナーがアイザックにそっと耳打ちをした。


「ルカってこんな刺々しいキャラだっけ?」


「最上級魔法に撃たれるとストレスゲージが限界突破して、口が悪くなっちゃうんですよ」


「あんた、イケメンなのに苦労してるんだな」


「そうなんですよ。でも俺はルカ様の兄弟兼親友ですから」


ね、とこちらに話を振ってくるアイザック。

それじゃコソコソ話の意味がないだろう。

この三年で少し丸くなったが、それ以上に神経が図太くなっているアイザックに呆れる。


「ワーグナー、あと三日間頼むよ。約束通りあの人に話はしておくから」


「おー、よろしくな」


「……もう一度聞くけど、本当にいいんだね?確実に遊んで捨てられるよ」


「あんな美女に遊ばれるなら本望だ」


「あのね、あの人は女じゃ」


突如禍々しい気配を察知して口を噤んだ。

アイザックが前に出た瞬間、ルーカスの背後に魔族が現れる。


「相変わらず憎たらしい顔をしているな、愚弟」


「っ、ライオネル?」


彼はアーデルハイドの三番目の兄で、昔から何かと張り合ってきた。

理由は僕の顔が気に食わないかららしい。


無表情で剣を振り下ろしてくるライオネル。

それに対してルーカスは最上級魔法に撃たれた直後のため、帯剣していなかった。

アイザックはギリギリ間に合いそうにない。


(詰んだ……)


そう思った瞬間、ライオネルが派手に吹っ飛ばされた。


「私のアーデルハイドに手を出したら許さない。そう言っておいたはずだが」


しんと静まり返った訓練場に低い男の声が響く。


二階の観客席を見上げると、いつの間にか教師や生徒の姿はなく、代わりに銀髪の魔族が赤い瞳を優しげに細めて、ルカたちを見下ろしていた。


「ルカ様のお知り合いですか?」


「……イザヤ兄上だよ」


「え、あの俺を敵対視しているというブラコンの方ですか?」


小さく頷くと、アイザックはそそくさとルーカスの後ろに隠れた。

おい、専属護衛がそれでいいのか。


「アイク、イザヤ兄上を返り討ちにするんじゃなかったの?」


「お話を聞く限りではただのヤバいストーカーだったので侮っていました。見たことないくらいカッコいいし、めっちゃ強いし、ルカ様のウソつき!」


「確かに兄上は魔界随一の美貌で有名だったし、兄弟の中でも二番目に強いけど」


「なんでそんな人がルカ様の厄介オタクになるんですか?自信過剰もいい加減にしてくださいよ」


「誤解を招くような発言しないでよ。僕は自己肯定感が低いキャラで通ってるんだから」


「仲がいいんだな。妬いてしまいそうだ」


気がつくと、イザヤがルーカスたちの目の前にいた。

先程とは打って代わり、恋人にでも話しかけるような甘い声だ。

これには流石のアイザックも口を閉じ、息を呑んだ。



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