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4.


フィオラは一瞬、ロナンの問いかけに戸惑った。あの場所に至るまでの出来事は、彼女にとって語るのも辛い記憶だった。


彼女自身もどう説明すればいいのかわからなかった。しかし、ロナンやその家族の目が自分を否定するものではないと気づき、口を開く。


「……追われていました。理由は……話せません。」


そう言うとフィオラの声は震え、彼女は自分の手をぎゅっと握りしめた。痣を理由に命を狙われていたことを思い返すだけで、胸が締め付けられる。



部屋に一瞬、静寂が訪れる。ロナンはそれ以上追及することなく、静かに頷いた。


「君にとって辛い話を無理に聞くつもりはない。ただ、ここでは安全だ。誰も君を傷つけたりしない。」


その言葉は穏やかで、フィオラの心に少しずつ染み込んでいくようだった。


「ロナンの言う通りよ。」ロナンの母であるマーガレットが口を開いた。


「ここはリュクシアの公爵家、アッシュフォードの屋敷です。この国の貴族社会では、家名に恥じる行動は許されない。それがどんな事情を持つ者であっても同じこと。」


彼女の言葉には、誇りと温かさが混ざり合っていた。


「あなたがここにいる限り、誰もあなたに手出しはしないわ。」


フィオラはその言葉に深く頭を下げた。


「ありがとうございます……」


一方、ニコラスはフィオラをじっと観察しているようだったが、特に言葉を挟むことはなかった。


ロナンが続けた。「フィオラ、君の体が回復するまで、ここでゆっくり休むといい。君の居場所はしばらく私たちが用意する。」


フィオラはしばらく迷うようにしてから、小さく頷いた。


「……ご迷惑をおかけします。」


その言葉にロナンは微笑んで答えた。


「迷惑だなんて思っていないよ。君はあの日、あの場所で助けを必要としていた。そして私は助けたくて助けた。それだけだ。」


フィオラの心の奥に、ほんの少しだけ温かさが灯った。


フィオラには、最初に会ったメイドが侍女として付けられた。名前はアリスというらしい。


アッシュフォード公爵家での生活が始まって3か月が過ぎた頃、アリスには10歳になる息子がいることを知った。アリスは時折息子を屋敷に連れてきて、フィオラと遊ばせてくれる。


4歳年上のカイという少年は、フィオラにとって兄のような存在になり、二人はすぐに仲良くなった。


ロナンの母であるマーガレットや、仕事で王都に滞在していてたまに帰ってくる父のトリスタンも、フィオラを本当の家族のように愛してくれる。


ニコラスもまた、フィオラを見かけるたびにおんぶや肩車をして遊んでくれた。



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