【異世界自衛隊】~チートスレイヤーと戦う事になった異世界転移した自衛官の結末
知っているかい?異世界人を。
この世界の単位はセンチメートルにキログラム、デシリットル。
異世界人が持ち込んだ。
定規にペットボトル、一円玉が一グラム。
便利だから女神圏中央諸国はそれを使っているのさ。
もれなく、この星の全ての地域、魔族すら使うだろう。
そんな異世界から転移した者達に興味を持っている私はアスター家のエルダ。
アスター家は魔道の名門で名を轟かせている。
今日は冒険者ギルドで転移者と面会だ。
教師になってもらおう。
☆冒険者ギルド
応接室で面会した異世界人はマダラ模様の服に銃を持っていた。
ミリタリー系か・・・
同い年ぐらい。しかし、幼く見える。
ギルマスが紹介してくれた。
「エルダ様、こちらが、クエストでお求めの異世界出身の者でございます。銃使いのタカシ・イナギ殿です」
「え、銀髪のお姉さんが依頼主?こんな可愛い子が?!僕は17歳、お姉さんは?」
「・・・今年18歳」
「年上だね。教師のクエストだよね。僕、日本人だよ!異世界転移したんだ。稲城って言うんだ」
「貴方は軍学を教えて下さるの?」
「じゃあ、銃について、この武器は20式って言ってね。このカートリッジにパウダーミックスされた状態なんだ。マズルフラッシュも小さくサウンズベロシティも低くスプレッサがいらない・・・」
ああ、また、外れだ。こいつは違う。
偽者ほど難しい専門用語で自分を飾り立てるものだ。
私はアスター家のエルダ。似非魔道師は腐るほど見ている。
断ろう。
「ギルドマスター殿、見込み違いです。申訳ございませんが、お引き取りをお願いして・・・キャンセル料の三パーセントは供託した金から差し引いて彼に渡して下さい」
「そうですか。もう、この一帯にはおりません・・後は聖王国の勇者か聖女様になります」
「そう・・それはちょっと違う。残念ね」
「ちょっと、キャンセルってどういう事?!」
この冒険者業界、依頼主が絶対だ。仕事に取りかかる前にキャンセルと言えば、キャンセル料を払えば問題はない。さっさと去ろう。
いや、後ろ髪を引かれた。もしかして、こいつ他の異世界人を知っているのかもしれない。
彼に聞いてみよう。キャンセル料に含まれるかな。
「すまないが、イナギ殿、貴殿の知っている他の異世界人を教えてくれないか?」
「はあ?!正気で言ってます??この魔道ネキは本気で僕を怒らせたいの?」
ああ、こいつ殺したい。でも、我慢だ。
「申し訳ない・・・どうも、貴殿は優秀過ぎるからな。高度すぎて理解できない」
と言えば、奴は気を良くするかな。
「う~ん。一月前に北のエリアの村にクエストにいったけど、64式持っているニキがいたよ。64って、穴にこもって撃つことを想定していて64式はロックタイムが長いから、20式にしなよって教えておいたよ。迷彩服も着ていないおっさんだった」
「64・・・ほお、古いタイプの銃・・か」
村や街では、こいつらの着る迷彩服が目立つ。
現地の服を着ているのなら・・・少しは分かっている者か?
「分かった。有難う。キャンセル料はギルドから受け取ってくれ」
すると前を塞がれた。
「ねえ。魔道は銃に勝てないんだよ!」
「そうね・・」
「じゃあ、依頼を受けさせてよ!せめて、テストを受けさせて!分かりやすく解説するからさ!」
「そうか・・・ならテストだ。この銃とやらはどうやって整備をする?」
「はあ?どうって・・・まず、分解して、トリガーグループとバレルグループ・・にわけて油を塗るか。それか、召喚を解いて、また、新しくすればいい」
「不合格・・・」
こちらは既にドワーフにより分解から結合まで解明した。
「不合格って何故!」
「何故なら、君に私の欲しい知識はない」
「はあ、じゃあ、勝負しろよ!!」
無駄にプライドだけは高い。
その銃があれば、そこそこの依頼は受けられるだろうに。
☆☆☆冒険者ギルド訓練所
結局、決闘をすることになった。いや、実力をテストして欲しいとの事だ。
判定人のギルド職員は石の壁に隠れている。
跳弾が怖いからね。
こういう輩はチートな知識と武器持っているから自分は特別であるとのプライドだけは高い。
愚かな・・・
いつ頃か分からないが、異世界の進んだ武器を持ち込む転移者が現れた。
例えば、棍棒しか持っていない部族に投げやりで戦えばチートだろう。
しかし、棍棒の部族はやられ続けるだろうか?いや、銃はもっと差がある。
だけど、完全無敵なものではない。
「え、と、僕はお姉さんの手足を撃つから、一発でも当たったら僕の勝ちでいい?」
「もちろん・・・そしたら教師を依頼しよう・・」
「分かった。依頼主を殺したら元もこうもないしな」
見くびられたものだな。私は・・・異世界人を・・
【決闘始め!】
ギルド職員のかけ声で始まった。
私と奴の距離は10メートルもない。
奴は銃を構えた。
私は、魔法杖を持っている方の手の指にほんの少し力を入れる。
すると、私の前にゴーレムが現れる。無詠唱魔法だ。無拍子でゴーレムが現れ私の前で盾となる。
バン!バン!バン!
「うわ。何だよ。これ!ロボットか?うわ。銃弾が通らない!」
3メートルは超える横太のゴーレム三体だ。土で出来ている。
銃弾はある一定の厚さの土は通さないと分かっている。
次は・・・
『ゴーレム石化!』
と心の中で思い浮かべる。
バキ!バキ!バキ!
石が削れるが、それだけだ。弾が跳ねる。奴は運がいい。跳弾は彼に当たらない。
なら、次は雷撃で殺してもいいが・・・そこまでする必要はなかろう。
『ゴーレムよ。前の少年を無力化し捕縛せよ』
と心の中で命じれば。
殴って、銃を手から離させ。
ガン!
二体で奴の両腕を押さえ膝を地面につかせる。もう一体に銃を取らせ。これでおしまいだ。
私は奴の顔近くによせ。こう言う。
「私は既に12人の銃使いを・・殺している」
自慢にもならない。
「ヒィ・・・そんな。知らないよ。誰も教えてくれないじゃん!」
「当たり前だ・・」
半ば呆れて言う。
全く、業腹だ。
我がアスター家は結婚も才能ある魔道師同士でしか許されない。
私は4歳の頃か魔法杖を手に持ち。毎日、魔道の練習をし。15歳になって無詠唱が出来るようになったのだ。無拍子は最近だ。
それが、異界渡りのギフトで楽々と異世界の魔道具を召喚して、並の魔道士よりもこんな子供が強くなる。全く、この世は不条理だ。
「・・・リセット!リセット!」
奴はブツブツ言っている。正気を失っているな。
まあ、いい。奴は私を殺そうとはしなかった。
だから、
『ゴーレムよ。両手の人差し指をもげ!』
ボキ!
「ウギャアアアーーーー」
銃使いは右手の人差し指で引き金を引く。左手は念の為だ。
これで奴は前のような働きをする事はできないだろう
さて、北のエリアに行くか。
「ギルマス殿、後始末をお願い」
「・・・はい、チートスレイヤー殿」
「その呼び名はやっぱり恥ずかしいな」
彼女の二つ名は異世界人殺し、つまり、チートスレイヤーだった。
☆☆☆北のエリア
私は奴から聞いた王国北のエリアにメイドと共に向かった。
異世界人が出没する情報の裏を取った。
ギルドから馬車で14日と言う所だろう。
ここは王国でも寂れているが数カ村ある。
そう言えば、ここは魔獣が多くて開拓が進んでいない地域ではなかったか?
「エルダ様!ドラゴンですわ!」
「かなり大きい!」
馬車の上を飛ぶ。急いで近くの村に向かい村人に避難を勧告したが。
「ああ、大丈夫、降りてこないよ」
「ただ、通っているだけだ」
「多分、雌のドラゴンの元に通っているんだ」
よく見ると・・・衝撃の事実が分かった。
「・・・人のいる村を避けて飛んでいる・・」
ドラゴン種は本能的に強敵がいる所は避けて飛ぶと聞いたが。まさか異世界人か?
ドラゴンスレイヤーなら、すぐに情報が王都にあがる。
ここにはいないはずだが・・・異世界人はその実力があると言うのか?
村人たちは呆れて言う。
「お姉さん。魔道師か?ドラゴン退治はやめておくれよ。ここでは共生出来ているのだよ」
「そうだよ。魔獣を狩ってくれているからね」
「そうか・・」
不気味な村だ。
食堂に入った。また、違和感が生じた。会計の時だ。メイド二人分の食事代を払う時だ。
「娘さん。シェフに上手かったと伝えてくれ。銀貨だ」
「まあ、シェフだなんて、はい、大銅貨8枚と・・小銅貨2枚のお釣りです」
「な、貴殿、算木を使わないのに何故分かった?」
合っている。何故分かるのだ?いや、庶民でも分かるが計算の早さだ。貴族、商人と同じか?
「そりゃ、ササキさんが九九表を作ってくれたからね」
ササキ、聞いた事のない家門だ。異世界人か?
「どこだ?」
「市場の役人をやっているよ。おっさんだよ」
肝心の銃使いはすぐに見つかった。村の市場にいた。
黒髪に黒い瞳、布のヒモで銃を肩に吊している。
30代か?
今まで見た事のない銃だ。木と鉄で出来ている。
話しかけた。
「初めまして、私は魔道師アスター家の者です。その肩に吊しているのは、銃ではございませんか?」
「ああ、初めまして、俺はイサオ・ササキです。今は村々の市場の管理人をしております。いや~、異世界から来ました」
「そうですか。銃についてお聞きしたい」
「え~と、何というか、鉄の礫を高速で飛ばすものです。原理は、この・・見せますね。この薬莢というものに、火薬、この世界では爆裂魔法の元みたいなものが詰まっていて、爆発力で礫を飛ばす原理です」
これは、当たりか?
「では、その銃はどのようにして整備されるのか?」
「まあ、部品まで分解して、ススや薬莢の金属片を取り。油を軽く塗ります」
ふ~ん。
私は興味がわいた。魔道とは実戦だ。
「なら、私と戦って頂きたい。依頼料も払う。勝てたならばな」
「はあっ?断ります」
「この非力な魔道師が怖いのですか?」
「怖い。俺は魔道について知らない。召喚魔法だけだ。それすらもよく分かっていない。魔道師は予測を超える。俺の負けでいいよ」
挑発したのに飄々と答える。
これは当たりか?
なら・・・本物だ。殺すか?
いつも、不思議に思っていた。異世界の武器と来る人物のスペックが合っていない。
向こうの騎士団の者が来たらいかほどか?
実際に戦って評価試験をするのみ。
ボン!
この場でゴーレムを出した。三体だ。
すると、ササキ殿は。
「・・・分かった。ここは市場だぜ。人に迷惑がかかるだろう。戦うから、迷惑のかからない草原でやろう」
と頭を下げる。
「失礼した」
私はゴーレムを消して、膝を落として礼をする。
小気味好い。
「お嬢様!」
「メリル、宿で待っていなさい」
メイドを宿に残し二人きりで戦う。
途中、村人と行き交う。
「あれ、ササキ殿・・・嫁か?」
「いや・・違う。ちょっとね」
「・・・外で・・か?」
「違うわ!」
何を話しているのか分からないが、ササキ殿は村人に慕われているようだ・・・しかし、この異世界人は危険じゃないのか?イキッタリ。この世界の者を馬鹿にしたりはしていないのか・・・
☆☆☆草原
草原についた。決闘の方法を話し合うが・・・
「そちらのすきで良いよ」
「では、今ここで!」
私はゴーレムを出した。
彼の肩には64式という銃しか持っていない。
だが、彼は逃げ出した。
「卑怯者!逃げるのか!」
「だって、あんた殺しちゃうもの!」
戯れ言を、でも、どうすれば良い。ゴーレムを追わせてはならない。水魔法で水浸しにして雷撃を放つか?
何故、今、ここで迷う。
ドサ!
彼の姿が見えなくなった。地面に伏せたようだ。
草原なので姿が見えない。
甘い。魔素を流し。人を探知する。
いる位置は分かった。
50メートル先か?
すぐに、バサッ!と音がして、彼は上半身をあげて、何かを投げた。
四角くて、ヒモがついている。
煙が出ている。爆裂するのか?
コロコロと
ゴーレムの前に何個か落ちた。
私は水魔法を展開し、水浸しにするが・・・
ドカーーーーン!
あの四角い物は爆発し、ゴーレムは崩れた。水では消せない火・・・単純のようで難しい。
これもチートではないか?私は銃にばかり気に取られていた。
正解はゴーレムに拾わせ投げる事だった。
その衝撃が私を襲い・・・・・
☆数日後
私は村長の屋敷で目が覚めた。
「お嬢様!」
メリルの顔と声が飛び込んで来た。
「私は負けたのか?」
「グスン、グスン・・」
そうか、負けたのか?一応、体を確認するが、貞操は奪われていない。
村長に礼を言い。市場に向かった。
市場に行くとあの男はまだいる。普通に仕事をしていた。
「元気で良かった」
ここは素直に
「弟子にして下さい!」
と頼んだ。
「はあ?いらねえよ!俺は戦いが嫌いなの!」
断られた。
なので、村役人に頼み市場の管理人にしてもらった。
時々、話を聞く。
彼は異世界では騎士団の10人長だったようだ。投げたのは非電気雷管付TNT爆破薬。
携帯対戦車弾だと威力がありすぎと言う事で、草の中で準備したそうだ。
「・・・すると、私は手加減されたのか?」
「いや、そうでもない。まず脅威にたいして適量の原則だ。そして、必爆の原則で数を多くした・・・爆破大きすぎた」
「それでは、貴殿は私を殺そうと思えば簡単に殺せたではないか?」
「そしたら、魔道師軍団が攻めてくるだろ?どうせ」
「・・・それは否定出来ない」
「あのな。日本では自衛官だった。自衛官だから戦争が大好きじゃねえよ。『汝平和を欲さば、戦への備えをせよ』って格言があるし。戦わないで、戦っても殺さないで済めばそれで十分なの!」
「なるほど・・・」
「メモ取るほどではないだろう!」
「いや、この世界では貴族は名誉のために戦う・・・私は負けた魔道師だ。どうしても先生になってもらいたい。面目を保ちたい。さすれば、貴殿は狙われないだろう」
「しかしな。俺、29歳だぞ。俺のキャリアで言えば、陸曹教育を受けて・・・軍全体の動きは戦闘団・・千人くらいしかわからない」
「それで良い。是非!」
何でも召喚魔法は魔力を対価にして異世界から召喚するが、イメージしたものでなければ召喚出来ないそうだ。一緒に仕事をしながら武器や戦術を習う。
本もある。異世界語も習った方がいいか。
「自衛官と言っても教育を受けて、モスを付与されなければその武器を使えないよ。モスって、自衛隊の免状な」
「では、爆破や、迫撃砲、無反動は?」
「ああ、爆破はレンジャーで習った。迫撃砲や無反動は教範を召喚した。この緑の本だ」
だが、困った事がある。
この地区一帯では、男女が連れだって野原や森に行くことは、夫婦か、婚約者同士らしい。
決闘で草原に行くとき大勢の村人に見られて、私はもうすでにササキ殿の女と思われている。
仕方ない。
「責任を取って、婚約をしてもらおう」
「んんあ、何でだよ!」
☆一年後
メリルを使者に派遣し、私はアスター家の籍を抜けるようにお願いした。
平民と結婚するからだ。
そして、・・・・子供を出産する事になった。
「オギャー!オギャー!」
「ふう。すまない。イサオ、女の子だ・・」
「ウウ、女の子、男の子、どちらでも良いよ。母子共に健康が1番だ!」
「・・・フウ、異世界ではそうなのか?」
私は女の子だから残念、お前が男だったら、と父によく言われた・・・
「でも、女が子供を産む。これが1番のチート能力だと思うのだけどな」
旦那様はそう言ってくれている。
メリルは時々会いに来る。まだ、お母様、お兄様やお姉様たちは気にしていると報告を受けた。
まだ、貴族の籍はあるようだ。
和解して、イサオに家族を紹介しよう。子供も出来たし。後戻りは出来まい。
それに、この子の為なら、どんな苦難を乗り越えられる。二人でなら・・・
二人でならどんなチート能力でも発揮できそうだ。
最後までお読み頂き有難うございました。