下僕《しもべ》働き
「オーナー、
商品チェック完了しました。
次は何を致しましょうか?」
テキパキといいつけをこなしてゆく私に、ご主人様のご主人様、源二郎殿は相好を崩した。
「ああ、そう?
じゃ、こっちもお願い。
いやー、チョコちゃん(ショコラの偽名)はしっかりしてて、助かるよー」
そりゃあそうよ。
なにせ私は、あの、だらしないご主人様のお世話を400年も続けいるのだから。
私はこの、コンビニとやらに来るのは初めてだが、ご主人様の力で源二郎殿の記憶を少しいじってある。
彼の頭では、私は少し前からご主人様と交代で詰めている女子大生アルバイトということになっているのだ。
「へへっ、それに、可愛いしね」
「?」
不思議にも源二郎殿は、私のシッポの辺りをさすりながらニタニタしている。嬉しそうな顔をしているから、おそらく友好を示すジェスチャーなのだろうが…
少し気色悪い。
私がさりげなく後ろに下がると、彼はちょっぴり残念そうな顔をした。
「じゃ、ワシは家に戻るから。
後10時に配送来たら陳列お願いね。何かあったらケータイかけて」
“全く、ヤローのバイト君とは大違いだ”
意味不明な言語を放ちながら、源二郎殿はスタッフルームへと消えていった。
「はーい、ありがとうございましたー!」
若い男女のカップルを見送り、そこでようやく、客足が途絶えた。
ふう。
深夜になってようやく一息ついた私は、チラリとウィンドウのガラス越しに外を見た。
今日は人間どもの祭。
外では、ご主人様も出かけていったハロウィンとやらの仮装行列が闊歩している。
そうか、だからあんなにお客さんが多かったんだ。
うーんとひとつ伸びをして、私はようやく、放置していた品物の陳列作業にとりかかった。
おにぎり、パン、サンドイッチ…
人間の朝食用の品々を、順番に丁寧に並べてゆく。
ご主人様は、毎日こんなことしてるんだ。
全く、物好きなんだよね。
吸血鬼の力があれば、何もこんなに真面目に働かなくても、チョイと人間の記憶を弄ってやればいい。
そうすれば、家だって食べ物だってお金だって、何だって手に入るのに。
でも、私には解ってる。
それをしたら人間達が困るから、ご主人は絶対にそのズルをしないってことを。
ご主人様は、強く冷酷な吸血鬼族の中では変わり者中の変わり者。
何しろ、とてもお優しいのだ。
そう、普通の吸血鬼ならば、エサとしか思っていない人間どもにも、私のようなちっぽけな眷属の末端にも。
あの日。
私たちが出会った時もそうだった_____




