表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

透視の能力《ちから》

ええー!?

助けてって言われても…

そりゃあ、僕の力を使えばあんな一般人パンピーあっちゅう間だが…


店内で揉め事を起こすのはよろしくない。

店が荒れると店主オーナーの源次郎さんに叱られちゃうし、警察沙汰は何かと面倒だ。


ついでにいうと、ぼくの正体が人間にバレるのも宜しくない。

この世には、ぼくみたいな吸血鬼バンパイアが隠れ住む一方で、吸血鬼狩人バンパイアハンターなどという輩も存在するのだ。


つい先日も、『アメリカ在住のキース君が、身バレして拘束されました』

って、注意喚起のメールが入ってた。

彼は今教会で、毎日ニンニクを大量に食べさせられる拷問を受けているらしい…


ぼくは、そんなヘタを打ちたくはない。



だが、そうこうしているうちに男は、僕らのいるレジの側へ大股で歩いてきた。


「お、お願いっ」

ギュッと僕の背中を掴み、ますます震えている彼女。



はうん!


その恐怖によってトロリと濃くなった血液が、彼女の心臓ポンプから、末端まで回っている…

その芳香が、ぼくにはたまらない。



あの白いうなじにプッツリ牙を立て、じっくりと味わう喉ごしは、どのような至福をもたらしてくれるものだろう。


あっさり欲に負けたぼくは、彼女にコックリ頷いた。


(わかった、任せて。そのかわり…)

(え?)


君からは、あとでたっぷり報酬をイタダくからね。


最後のほうは、彼女に聞こえないほどの小さな声で言った。


ぼくは、彼女を庇うように前に立ち、格好よく腕を伸ばすと、眼前に立つ男をキッと睨みつけた。


「ぅ~…お、おお、お前ぇ~、イクちゃんの何なんだよぉ~…」


男は、僕を睨み上げた。


トラブルを察したのか、客たちは入り口の自動ドアの前で、回れ右をして去っていく。それは却って好都合なんだが…


どうにもマズイ。

男は、背は低いがずんぐりと太って、かなりいい体格をしている。

長身だが、細面な僕は格闘系は大の苦手だ。はっきり言ってめちゃめちゃ弱い。


ジリ…


僕が彼女を庇いながら後ずさると、男はさらに激昂した。


「言えよっコラッ。さてはオマエだれ、さては、

イクちゃんがインスタに上げてた、ストーカー野郎だな?!」


いや、それオマエ。


ツッコミたいのを堪え、カッと眼を見開いた。


ぼくの眼は、超音波センサーのような機能もあるのだ。眼力の精度を上げることで、自在に対象物を透視することができるのだ。


さあ見えてきた。

衣服が透けて、貴様の真の姿が…

うげ、余計なモンまで見えちゃった!


男の全身を、上から下にかけてじっくり、瞳だけを動かしてゆく。

と、彼のポケットに隠した右手に、ナイフが握られているのを見つけた。


コイツ、彼女をコレで…!


更に、透視の精度を上げていくと、


見える、見える、


男の思念までが見えてくる…




なるほどね。

男の予定は概ね次の通りだ。


この後も、奴はずっと彼女を付け回す。

3階建てのワンルームマンションは、おそらく彼女の家。


電灯は疎ら…ここからはかなり離れた田舎のようだ。


彼は、彼女の家への道筋をすでに特定している。


人通りの少ない暗がり。

彼は、ここで彼女に追い付き、ナイフを突きつけて自らの想いを告げる……


ぼくは、さらに透過精度を上げた。

すると、強い色の思念おもいまでが視えてくる。


デビュー前、公園でひとり歌っていた時からファンだった。

ずっとずっと見てきたのに。

少し人気が出てきたら、不特定多数の男に愛想笑をふりまいて。

そのうえ、

僕をストーカー呼ばわりするとはどういうことだ?


僕は君のファン第一号ではないか。


君を一番愛しているのは僕だというのに。

愛しているからこそ耐えられない。


君がそんな、思い上がった人でなしに成り下がるのならば、いっそ君を…!


そうだ、これは愛なんだ_____



そこまで視、僕は透視するのを止めた。

頭にカッと血が昇る。


このヤロウ、なんて勿体ないことを考えているんだ。

そんなことしたら、極上の血が全部流れちゃうでしょーがっ!


はっとして、彼は再び僕を見た。

と思ったら、奇妙に顔を歪めて叫びだす。


「ボクラの間を…じ、邪魔する者は、は、排除するぅっ~」


叫びとともに、男は僕らに猛突進をかけてきた。


「ば、バカ。よせって」


困ったぞ。

興奮しきっている男には、僕の催眠は全く効かない。


でも、“あれ” だけはやりたくないしな…


闇雲にナイフを振り回す男から、彼女を庇いつつ考えていると…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ