表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界だらだら旅  作者: トマト
33/36

迷宮と序章

「大丈夫ですか?」


「はい…」


宿の娘が聞いてくるのを、元気なさげに答える。


一ヶ月も一緒にいたということで、看板娘とはそれなりに親しくはなった。


が、自身の悩みを打ち明けられる程ではない。


「水浴びしてきてもいいですか?」


「はい、今丁度空いてます」


俺は黙って、宿に備え付けられた水浴び場に向かう。


俺がここの風呂代わりに使っているものだ。中はちょうどトイレの個室くらいの大きさになっている。

俺は服を脱ぎ捨て、井戸から水を汲み上げて身体を洗う。


そしてふと、自分の透明になっている左腕が目に入る。


「はぁ…」


俺はどうするべきなのだろうか。


魔物として、野生で生きるべきなのだろうか。

人間として、旅を続けるべきなのだろうか。


「どうしよ、」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



とぼとぼと街へ戻る。


手には、まだ血の匂いが残っている。


あれからは、数週間の周期で盗賊狩りをしている。

幸い犯罪都市ということもあって、数は中々に多い。

その甲斐あってか、あれ以来意識を失うなんてことにはなっていない。


が、もし盗賊がいなくなったら、街中で制御が効かなくなったら。

なんて考えると気が気でない。


「どうしよ…」


つい口から溢す。


「とりあえず旅したら?魔物になるのは旅した後でもできるけど、旅は魔物になった後じゃできないよ〜」


「でも、メラたちが死ぬかもしれない旅なんて嫌だ」


「旅に危険は付き物だよ〜」


「でも…」







…んn?


「え?」


んんn???



「誰?」



俺が目を向けると、眼の前にはスーツを身に纏った、いかにもなジェントルマンがいた。

髪は黒く、年齢は十代くらいに見える。


「誰って…いやここでこれを教えると今後の行動がーーー。うん!!君はまだ知らなくていいよ!!」


「は?」


男が陽気な口調で言う。


俺は不審な目つきで男をにらみつける。

男はそれを感じ取ったのか、スラスラと話し始める。


「ああ、とりあえず僕は君の敵じゃないよ!!なんだか困ってるみたいだからアドバイスしに来たのさ!!」


「アドバイスありがとう。帰れ」


「酷いなぁ…」


男が芝居がかった動きで言う。


何者なんだこいつは。


そんな事を思っていると、おもむろに男がこちらに背を向ける。


「まぁ君の言う通り、(アドバイス)も済んだし帰るとするよ。()()()()()()くん」


「?!待…」


俺が叫ぼうとすると、男の姿がかき消える。


俺はつい呆然とし、その場に立ち尽くす。



そして、直ぐにあいつが何者なのかを考える。

魔物?いや俺が(元)勇者だと知っていたし、王国の…



そんな時、後ろからさっきの男の声が響く。


「あ、そうそう。あのメイドたちを守りたいんなら、君はとにかく強くなることだけを考えるといいよ」


「!?」


慌てて後ろを振り返る。


しかしそこには当たり前のように誰もいない。


「本当に、何者…」




俺は、なんだかものすごく大きな…触っては行けない様な事に関わってしまったような気がした。











「お〜い!!」


あの男とに出会ってからしばらく。

遠くから声が聞こえた。


またあの変な男かと身構える。


周りを見渡した後、目を凝らすと、ジモンさんとメラが俺の方に向かってきているのが見えた。


とりあえずあの変な男では無いようだ。

ところでなんで二人で一緒にいるのだろうか?

ここは街外だぞ?


というかジモンさん足早い。

もう目の前に来られた。


「いや、ごめんね。緊急で伝えたいことがあって、君がどこにいるか、この子に教えてもらったのさ」


ジモンさんが申し訳無さそうに言う。


メラとは、怪我を負わせて以来、あまり関わっていなかった。

俺がでかけている間は、冒険者として仕事をしていたみたいだし、ジモンさんとも顔なじみになっていたのかもしれない。


俺はふと、メラの方を見る。


もう後遺症もないそうだが、体中の切り傷が痛々しい。


俺は一瞬あの日のことを思い出し、直ぐに視線をジモンさんの方へ戻す。


「伝えたいことって?」


ジモンさんに聞く。


「ああ、実はここらに新しい迷宮(ダンジョン)ができたらしくてね。なんと国からの直接の依頼で、レミビタの冒険者全員に初探索を命じたみたいなんだ」


迷宮(ダンジョン)とは、言わずもがなのアレである。

洞窟、塔、遺跡など、様々な種類の物があり、それぞれ難易度にも違いが在る。


魔力のたまり場などに発生するらしく、この世界の住民からは、モンスターを内部に発生させる(迷惑極まりない)自然災害の一種として認知されている。


これは余談だが、迷宮(ダンジョン)を利用して発展した都市も在るらしい。


ちなみに初探索とは、新しくできた迷宮(ダンジョン)の初探索のことである。




「地下遺跡型の迷宮(ダンジョン)らしくてね。最初の階層の視察をしたところ、かなり危険度の高い、高位のダンジョンみたいだ」


ジモンさんが説明を始める。


「というわけで、現在レミビタに滞在しているすべての冒険者で探索を行なう事になったらしい」


ジモンさんがぱちんと手を鳴らす。


高位のダンジョン?

国直接の依頼というのも胡散臭いように感じるが、考えすぎだろうか。


「わざわざありがとうございます。ところでその初探索っていうのはいつ?」


「三ヶ月後だね」


早いな。

まぁ時間がかかりすぎて事故になるよりもいいのか。


「もちろん君も参加するんだけど、どうかな、俺と組まないか?」


「えっ?」


ジモンさんが突然提案する。

驚いて思わず声が出る。


「え、と。俺は良いんですけど、ジモンさん確かBランクでしたよね?俺なんかで良いんですか?」


俺が恐る恐る聞く。


「良いじゃないか。今までだって一緒に依頼をしたことだって在るだろ?」


ジモンさんが優しげに言う。


い…イケメンだぁ…


「じゃあ…お願いします…」


「うん。じゃあ三ヶ月後、頑張ろうね」


そう言ってジモンさんが歩き出す。


俺も、おいていかれないように駆け出した。



ジモンさんですが、あっちこっちを放浪している(超熟練の)冒険者です。

そんなわけで、悪い事してレミビタに逃げ込んだとかそういうわけではありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ